会計基準について

会計

こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。

今週はフィリピンの会計基準についてお話させて頂きます。

■会計基準の変遷
フィリピンでは元々、独自の会計基準を持っておらず、米国会計基準を採用してきました。1983年にフィリピン会計基準委員会により公布されたフィリピン財務会計基準(State of Financial Accounting Standards)がフィリピンにおける最初の会計基準になっています。

その後、IFRS適用の流れが世界中に広まり、フィリピンでも2005年に国際会計基準に基づいたフィリピン会計基準(PAS:Philippines Accounting Standard)が制定されました。その後もコンバージェンスが進められ、2012年1月1日以降は、一部の移行措置を除いて、国際会計基準と同様の会計基準となりました。

現在、フィリピンで事業を行うすべての法人はフィリピン会計基準に従わなければならないとされています。ただし、中小企業に該当する企業に関しては、中小企業向けフィリピン会計基準の適用が認められています。

■会計関連機関
フィリピンにおける会計基準の運営について、中心となっているのは会計基準委員会(ASC:Accounting Standards Council)です。また、財務報告基準委員会(FRSC:The Financial Reporting Standards Council)においては会計基準の整備がなされています。さらに、フィリピン会計審議会及び証券取引委員会(SEC:Securities and Exchange Commission)が規制当局となっています。

■会計基準の対象企業
従来、SECはすべての企業において国際会計基準を基礎としたフィリピン会計基準を適用すると定め、一定の規模以下の企業(総資産2億5,000万ペソ以下、又は総負債1億5,000万ペソ以下の企業)にはPAS101号により基準の一部の適用を行わなくてもよいとしてきました。

しかし、中小企業からの申請により、2009年には中小企業に対して適用内容の緩和された別基準が公表され、中小規模の会社に適した体系や内容の基準を適用することが認められるようになりました。これは国際会計基準の中小企業向け基準(International Financial Reporting Standards for Small and Medium Entities)をそのままフィリピンの中小企業向け会計基準として導入したものであり、2009年10年1月以降に始まる会計年度から適用を認めることになりました。

フィリピンにおいて、この中小企業向け会計基準の適用対象となる企業は、総資産が300万~3億5,000万ペソもしくは総負債が300万~2億5,000万ペソの企業となっており、これまでのPAS101号適用対象企業と若干異なる点に注意が必要です。

なお、日本からの進出企業のような外資企業に対しても、フィリピン国内企業と同様の体系により会計基準が適用されることになります。

【適用される会計基準のまとめ】

会社規模 適用される会計基準
総資産及び総負債が300万ペソ未満 旧フィリピン会計基準(2004年)、又は中小企業向けIFRSに準拠した中小企業向けフィリピン会計基準の選択適用
総資産300万~3億5,000万ペソもしくは総負債300万~2億5,000万ペソ 中小企業向けIFRSに準拠した中小企業向けフィリピン会計基準
総資産3億5,000万ペソ超もしくは総負債2億5,000万ペソ超、又は上場会社 IFRSに準拠したフィリピン会計基準

出所:SRC RULE68, AS AMENDED-PARTI-2

■フィリピン会計基準の体系
国際会計基準に基づいて作成されたフィリピン会計基準では、基準番号まで国際会計基準と対応するものになっています。

【フィリピン財務報告基準】

番号 基準名
PFRS 1 フィリピン財務報告基準の初年度適用
PFRS 2 株式報酬
PFRS 3 企業結合
PFRS 4 保険契約
PFRS 5 売却目的保有資産及び廃止事業
PFRS 6 鉱物資源の評価のための調査及び研究
PFRS 7 金融商品:開示
PFRS 8 事業セグメント
PFRS 9 金融商品
PFRS 10 連結財務諸表
PFRS 11 ジョイントアレンジメント
PFRS 12 他の関連会社に対する持分の開示
PFRS 13 公正価値測定

出所:Asian Development Bank ホームページ(Diagnostic Study of Accounting and Auditing Practices in the philippines)

【フィリピン会計基準】

番号 基準名
PAS 1 財務諸表の表示
PAS 2 棚卸資産
PAS 7 キャッシュフロー計算書
PAS 8 会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬
PAS 10 後発事象
PAS 11 工事契約
PAS 12 法人所得税
PAS 14 セグメント報告[PFRS 8で改訂]
PAS 16 有形固定資産
PAS 17 リース
PAS 18 収益
PAS 19 福利厚生
PAS 20 政府補助金と政府援助の開示に関する会計基準
PAS 21 外貨換算
PAS 23 借入に伴う利息
PAS 24 関連当事者の開示
PAS 26 退職給付会計
PAS 27 連結及び個別財務諸表
PAS 28 関連会社に対する投資
PAS 29 超インフレ経済下における財務報告
PAS 30 金融機関の財務諸表における開示
PAS 31 ジョイントベンチャーに対する持分
PAS 32 金融商品
PAS 33 一株当たり利益
PAS 34 中間財務報告
PAS 36 減損会計
PAS 37 引当金、偶発債務及び偶発資産
PAS 38 無形固定資産

PAS 39 金融商品の認識及び測定
PAS 40 投資プロパティ
PAS 41 農業会計

出所:Asian Development Bank ホームページ(Diagnostic Study of Accounting and Auditing Practices in the philippines)

■フィリピン会計基準と国際財務報告基準との相違
フィリピンの会計基準は、国際財務報告基準を採用しているため、基本的な理解をすることは難しくありません。

施行当時は、特定の基準における経過措置(例えば、PAS第19号及びPFRS第7号)もしくは適用日(例えば、IFRS第15号はフィリピンでは2012年より発効)について注意が必要な項目がありましたが、2012年にはそれらの差異も解消されます。

ただし、IFRSの改正があった場合には、PFRSにその改正が採用されるまでの経過措置等がとられる可能性は今後とも否定できませんのでフィリピン公認会計士協会(PICPA:Philippines Institute of Certified Public Accountant)のホームページで、財務報告基準審議会(Financial Reporting Standard Council)からの「News」の項目を確認することが有効となります。

今週も、どうぞ宜しくお願い致します。

以上

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