会計制度について

会計

こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。

今週はフィリピンの会計制度について述べてみようと思います。

■フィリピン会計制度の概要
フィリピンの企業会計制度は、会社法、証券法、フィリピン会計基準により規定されています。両法は、証券取引委員会(SEC)により管理、実施されています。
会社法では、最低限の財務状況報告義務を、同法に基づいて登記された会社に対して課しています。すべての会社は会計帳簿を作成し、独立監査人の監査証明を付した財務諸表を株主総会及びSECに報告する義務を負います。

一方、証券法は、証券取引所に上場している会社のように大衆向けに証券を発行する会社を対象とした法律であり、多数存在する利害関係者を保護するため、より詳細な企業情報の開示を要請するものです。
会計基準については、他の法律同様に米国の影響を強く受けてきました。しかし、近年のIFRS適用の拡大はフィリピンも例外ではなく、徐々にコンバージェンス(自国の会計基準をIFRSに近づけること)が進められ、2012年度よりIFRSの全面適用が開始されることになりました。

【フィリピン会計制度のまとめ】

項目 内容 留意点
関連法 会社法、証券法、PFRS(フィリピン会計基準)
担当行政機関 証券取引委員会、歳入庁など
会計通貨 ペソ
記帳言語 英語 フィリピン公用語である英語による会計帳簿の作成が求められる
帳簿保存期間 7年
会計期間 原則、暦年による12カ月 暦年以外の、任意の12カ月で構成される会計年度の採用も認められる
フィリピン会計基準の遵守 原則、PFRSをすべての事業体に適用 中小企業には中小企業向け会計基準の適用が認められる

■会計関連の法規
会計に関連する法規として、フィリピンには会社設立や会社運営ルールを規定した会社法(The Corporation Code)、証券市場の規律である改正証券法(The Revised Securities Act)、租税規定である内国歳入法(The National Internal Revenue Code)、主に公認会計士制度を規定した改正会計法(The Revised Accountancy Law)の4つがあります。

■会計期間
会計期間は、1月1日から12月31日までの暦年の会計年度を採用するケースが一般的ですが、その他の12カ月で構成される会計年度を採用することも可能であり、企業の付属定款に定めることにより任意で設定できます。また、国税庁(BIR)の事前承認があれば課税年度を変更することもできるため、日本の親会社と決算日を一致させることができます。

[会計期間の変更]
IFRSでは、原則として連結子会社の会計期間を親会社と一致させることが要求されます。日本の会計基準では、会計期間のズレが容認されていたため、IFRS適用にあたり、子会社の会計期間を変更する必要が出てくる会社もあります。

会計期間は付属定款への記載事項であるため、付属定款の変更に関して証券取引委員会(SEC)、及び内国歳入庁(BIR)への変更手続が必要となります。

[SECへの申請手続]
定款を変更する場合、株主総会において3分の2以上の賛成による特別決議が必要となります。また、付属定款の変更は証券取引委員会の認可があって、初めて有効となります。加えて、会計期間を変更する場合には、定時株主総会の日付の変更が必要になる点に、留意しなければなりません。

[BIRへの申請手続]
SECへの申請を行った後に、BIRへ変更申請を行います。必要書類を作成し、新しい会計期間開始の60日前までに、所轄の地方事務所(RDO:Revenue District Office)に提出しなければなりません。

地方税務署の法務部門での審査が終了すれば、許可証が発行されることになります。この許可証の発行は、申請から30日以内に行われるものとされています。

■会計帳簿
会社法の規定により、フィリピンで事業を行うすべての企業は、会計帳簿を作成し、保存する義務があります。
また、作成された会計帳簿は会計年度末から3年間、会計処理の根拠となる請求書や納品書、領収書といった証票書類と併せて保存する必要があります。会計帳簿とは、仕訳帳、総勘定元帳等で構成され、帳簿は英語で記帳しなければなりません(会社法74条、内国歳入法6条)。

これらの規定違反があった場合、会社法の下では、裁判所の決定に基づき1,000~10,000ペソの罰金、又は30日以上5年未満の懲役、若しくはその両方の罰則を受ける可能性があります。また会社として違反がなされた場合には、証券取引委員会により解散手続がとられることもあります(144条)。

さて、師走に入り、会計帳簿の更新の季節になりました。会計帳簿の更新は12/31までにBIRに対して行うことになっておりますので、師走の忙しさなどから帳簿の更新をし忘れないよう、どちら様もお気を付け下さいませ。

今週も、どうぞ宜しくお願い致します。

以上

関連記事

ページ上部へ戻る