インドにおける税務訴訟~課税事案の事例と事前対策~

税務

皆様、こんにちは
Tokyo Consulting Firm Private Limited(India)です。

本日は、インドにおける税務訴訟シリーズ、最終回という事で、課税事案の事例と事前対策についてお話していきます。

 

まず、インドにおける課税事案にはどういった特徴があるのかについて振り返っていきましょう。
最も一般的な法人所得税に関する課税事案は大きく分けて下記の3つになります。

  1. 移転価格税制
  2. ロイヤリティー
  3. PE認定課税

上記以外の事項に関しても税務調査が入る可能性はありますが、比較的大きな問題には発展せず、税務調査→必要書類を提出と言ってフローで解決する場合が多いといえます。

しかしながら、上記の事項については日本企業の認識(グローバルスタンダード寄り)とインド税務当局の基準に違いがある部分があり、結果として税務訴訟に発展しているケースが多いといえます。

 

今回のブログではそれぞれの概念に関する詳細の説明は省略します。
また、ロイヤリティーについては基本的には大規模な企業が対象となるため、今回は一般的かつ実務で避けて通れない移転価格税制とPE認定課税の課税事案における特徴とその対応策についてお話しします。

 

まずは、移転価格税制についてです。
インドの移転価格の特徴としては、移転価格に関するコンプライアンスが多い点と税務当局が企業のグループ間取引に対して積極的にチャレンジをしてくる点です。

税務当局からメールで送付されるノーティスもその大部分が所得税と移転価格に関するものになります。
特に日系企業はインドにおいては外国企業になるため、この移転価格調査のターゲットにされている傾向にあります。

統計的には、移転価格関連のノーティスを受け取る確率は低いのですが、私たちが無意識に認識している企業は基本的に日系企業=外国企業(国際取引あり)になるので、主観的に移転価格関連のノーティスを受け取ることが多いと感じるのは、この要因があります。

 

まず、コンプライアンス面として、必要になる可能性がある手続きには以下のような項目があります。

  1. Form 3CEB (会計士証明、移転価格監査)
  2. TP Study/TP Documentation (移転価格文書、ローカルファイル)
  3. Form 3CEAA Part A, B (マスターファイル)
  4. Form 3CEAB (マスターファイル)
  5. Form 3CEAC (国別報告書)
  6. Form 3CEAD (国別報告書)
  7. Form 3CEAE (国別報告書)

 

上記の移転価格コンプライアンスは国際取引が1ルピー以上でもある場合に必要となる場合や、国際グループの総売上や国際取引の金額においてある一定の金額を超えた場合に必要となるものなど、様々な条件があります。

 

また、今年より外国法人の確定申告については一定条件を満たす場合は免除されておりますが、移転価格のコンプライアンスについてはまだ免除となるようなアナウンスはされておりません。

つまり、外国法人においても上記コンプライアンスの該当可能性を確認する必要があります。

 

外国法人においても、上記コンプライアンスを遵守されていないことによって当局より高額の課税命令がされるというCase Lawもインドでは転がっていたりするので、インド進出企業の本社管理部門の方には、インドはグローバルスタンダードとは異なる性質を持っているという事を認識して頂ければと思います。

今回のブログでは、上記コンプライアンスの該当基準やペナルティー等の説明は省略しますが、次回のブログで移転価格について解説していきたいと思います。

 

続いて、移転価格の次に気を付けて頂きたいのがPE認定課税です。移転価格と比較すると出くわす場面は少ないのですが、出くわしてしまうと、本社に影響が及ぼされるため、高リスクのポイントと言えます。

 

PE認定課税とは、親会社のインドでの売上に対して、インド税務当局が課税するもので、税務当局としては、会社組織はないが、実態としてインド国内でビジネスを行っているので、その売上に対する税金は日本ではなく、インドで納税してくださいという税務当局側の主張です。(分かりやすく説明したつもりですが、逆に分かりにくくなってしまってたら申し訳ございません。)

 

また、PE認定にはいくつか種類(場所PE、建設/据付PE、代理人PE、サービスPE等)がありますが、留意しなければいけない点はそれぞれのインドの特徴です。

 

上記のPEの説明については、別途ブログで解説しておりますので詳細はそちらを参照ください。

 

これらのPEの概念は基本的には租税条約上に記載されており、かつ租税条約も基本的にはOECDモデルがベースとなっているため、他国でも同様な概念があるためです。

 

だからこそ、他国とインドの違いについてピンポイントで知識を蓄えておくことがリスクヘッジに繋がります。特にビジネスモデルの策定の際にPEリスクを検証することは、本社管理部門に求められる危機管理になります。

 

事前対策としては、そもそもビジネスモデルのスキームとそれに伴う契約書の税務上の観点からのレビュー、駐在員の現地での活動内容と本社との関係、現地会計事務所との適切なコミュニケーションなどが挙げられます。

 

最近では、2020年4月1日からMLIが適用されたことによって、代理人PEリスクの再検証の必要性が高まっております。

 

このように、インド税務には様々な落とし穴が存在します。最も、何故落とし穴となっているのかは、そもそもインド税務当局の主張がグローバルスタンダードと比較して異なっている点にありますが、具体的にどういった場面ではこういった対応を取っているといったことについて、新たなビジネスモデルを検討する際は税務リスクについても検討する重要性が高いといえます。

 

今回で税務調査・訴訟に関するシリーズは一旦終了とします。次回は移転価格について解説していきます。

 

※本ブログに記載の情報は、ブログ作成時点(2020年10月18日)で得られる情報を基に、細心の注意を払って作成しておりますが、今後の当局の発表によって、規制内容が変更になる可能性があるため、最新情報については都度ご確認を行う事を推奨いたします。

 

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東京コンサルティングファーム インド・デリー拠点
田本 貴稔

 

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報を基に、細心の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び弊社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Private Limited, Tokyo Consulting Firm Human Resources Private Limited)は、一切の責任を負うことはありませんので、ご了承ください。

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