皆さん、こんにちは。
チェンナイ駐在員の中村です。
2016年、インド中央物品関税局は、企業の親子間取引に関する輸入者の手続きを改善する狙いで、オンライン
化や除外項目の拡大、デポジット額の負担減を行いましたが、依然として煩雑な通関手続きは日系企業がインド
で貿易を行う際の足かせとなっています。今週と次週の2週に渡り、日系企業を苦しめるSVB制度について執筆
したいと思います。
SVB(Special Valuation Branch)とは、インド法人が海外関連会社と取引を行う際に、適正価格で物品が輸入されているかを査定するための制度です。企業側からすると取引価格を下げれば関税負担額が抑えられますが、関税当局側からすれば関税収入が減ることになりますので、こちらを阻止するための制度になります。
具体的には、輸入通関とSVBの対象となる取引については事前に関税当局から「適正価格」であるとのお墨付きを得る必要があり、これが所謂SVB登録と呼ばれるものになります。以前はSVB登録の有効期限は3年とされていましたが、現在では一旦取得すると永久に有効となります。
SVB登録には、買取授権証書や、売買契約書、適正価格の理由、質問状の回答、IEC番号、PAN番号など多くの書類が必要になりますが、一般的な提出書類は下記になります。(※下記以外にも関連書類の提出を求められる事があります。)
【主な申請書類】
①買取授権書
②輸入価格が当局に承認される理由書
③会社の基本定款、附属定款
④輸出入取引に関する契約書
⑤インド準備銀行からの証明書
⑥工業事務局からの証明書
⑦直近3年間の財務諸表
⑧輸入報告書
⑨輸入企業のPANナンバー
⑩輸出入コード
これらの書類申請が完了し、SVB登録が完了するまで3~24か月程度の時間を要するので、前倒しで申請準備を行うことを推奨します。
仮にSVB登録前に輸入する必要がある場合やSVB登録が完了していない企業は、PD Bondと呼ばれる制度(担保金)を用いることになります。PD BONDはProvisional Duty Bondの略で、当局へ支払うことになる保証金(担保金)の仕組み自体のことを指します。
当該制度を用いることによって企業は、一定額の担保金をSVBに支払うことによって、SVBから承認を得る前に関係会社から輸入した物品をインド国内に販売することが可能となります。
SVB登録もPD Bond制度もなしで、親子間や関連会社間での貿易はインドで行うことはできません。また、利用する税関ごとにPD Bondの手続きが必要になりますので、輸入前の準備が必須となります。
SVB登録時に納めたPD BONDの還付手続きは、SVBの承認を得てから約4ヶ月間になるので注意が必要です。この還付手続きにも当局からのSVB承認レター、最終的な輸入申告(輸入許可)書であるBill of Entry、インボイス等の貿易書類、計算書等の書類を提出する必要があり、還付手続きに1年程度時間を要する場合があります。
本日は以上です。
Tokyo Consulting Firm Private Limited
チェンナイマネージャー
中村 匠吾(なかむら しょうご)
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