長期間の出向は危ない?PE認定について~Samsung事例~

皆様 こんにちは

インドムンバイ駐在員の谷川です。ついにイケアがインドハイデラバードに第1号店をオープンしますね! 2025年までにインド国内25店舗まで拡大を予定しており、2019年にはムンバイで第2号店がオープンされるとのこと。北欧デザインとインドのテキスタイル文化がどう融合されていくのか、楽しみです!

 

さて、本日はインドでのPEに関するケースをご紹介したいと思います。

皆様もよくご存じの韓国大企業Samsung、インドではSamsung India Electronics Private Limited(以下、「SIEL社」)として子会社があります。親会社であるSamsung Electronics Co. Ltd.(以下、「SEC社」)はその従業員をSIEL社との相互の合意の下、出向社員としてSIEL社の管轄下で勤務していました。従業員は母国・韓国での家庭扶養等の個人的な出費に充当させるために給与の一部をSEC社から直接韓国で受領し、当該費用はSIEL社からSEC社に払い戻しされていました。

このような出向社員に関して、Assessment officer(税務当局の調査機関)はSEC社に対するノーティスを発行し、過去6年間(Assessment Year 2004-05年~2009-10年分)の税務調査を行いました。SEC社は全ての年度においてインドで所得税申告を行っていましたが、SIEL社からの活動による所得に関して申告していたものの、出向社員のロイヤルティや技術支援で得た所得に関しては申告を行っていませんでした。

Assessment OfficerはAssessment Order(最終調査結果)を発行し、SECの出向社員がインドにおいてPE(Permanent Establishment:恒久的施設)に該当するとしました。

それに対してSEC社はDispute Resolution Panel(※ 国際税務による紛争をヒアリングする委員会のようなところ)に対して異議申し立てを行いました。Assessment Officerは同委員会に以下のような指摘事項を明確にしています。

a)    SIEL社全体をSECのPEとして扱うべきという点

b)    SECからの出向社員を通して、東南インドのオペレーション管理を行っているとしてSEC社の代理PE(Agent PE)が存在しているという点

c)    出向社員がSEC社の代わりにSIEL社にサービスを提供しているとしてサービスPE(Service PE)が存在しているという点 (※サービスPE:親会社の従業員が、海外の子会社に赴き技術支援等を行っている場合には、その従業員自身がPEに該当されるというもので、近年形成された新たなPEの概念です。)

さて、Dispute Resolution Panelは両社のヒアリング、調査を経た上で、以下のような結論を出しました。

①     SIEL社はインドの法規制を遵守した上で設立された会社であって、PEには該当しない

②    東南インドのオペレーション管理に対して代理PEは存在しない

③    DTAA(インド・韓国租税条約)に規定がないため、サービスPEは存在しない

これでPE認定されないかと思ったつかの間、Dispute Resolution PanelはSIEL社をSEC社のFixed place PE(親会社が事業を行う場所)として見なす、との結論を出しました。出向社員が定期的にSEC社との連絡を取っている事、SIEL社の商品販売価格や市場戦略などの大事な決定事項がSECの権限に委ねられていたこと、また、出向社員のサービスが結果的にはSIEL社を越えてSEC社にも利益をもたらすものであること等がFixed place PEとして判断する理由となったようです。さらに、他の多くのSEC社の社員が出張という形で頻繁にインドに来ていた事もPEを助長する要因となりました。

この判決によって、SEC社は税務当局のAppeal(Assessmentで不服だった場合に申請する高等機関)に不服申請を行いました。

さて、次回ではこのAppeal機関での判決がどのようになったのか、ご紹介していきます!

 

今週は以上となります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

Tokyo Consulting Firm Private Limited

ムンバイ駐在員

谷川 千裕(たにがわ ちひろ)

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