こんにちは、インド大好き、TCFインド・バンガロール駐在員の岩城です。
日頃、お客様から寄せられる質問等につきまして、Q&A方式で回答させていただいております。今週は商業秘密の漏洩防止等についてお伝えします。
Q1.退職した社員が、同業他社に転職した様です。その際、会社の商業秘密を持ち
出し、情報が転職先の同業他社に伝わった可能性があります。今後どの様に商業秘密情報の漏洩を防止すればいいのでしょうか。
A1.インドの法律上では、商業秘密保護に対する規定は特段ございません。従って、労働者との労働契約書において、会社としての商業秘密保護の規定を定めておくことが非常に重要となります。
関連する労働契約書上の内容については、以下の様な条項がございます。
①競業避止条項 (主に競合他社への転職を禁止する内容 等)
②勧誘禁止条項 (主に従業員の引き抜きや取引先の勧誘等を禁止する内容 等)
③秘密保持条項 (主に企業秘密を持ち出す事を禁止する内容 等)
ただし、インド契約法27条において「法律に適した通常の事業及び取引行為等を制限する合意については無効とする」という趣旨の内容がございますので、こちらに抵触しない様、内容に留意する必要がございます。
労働契約期間中の行為においては、上記に抵触しないと判断される可能性が高いといえます。一方労働契約期間後(従業員の退職・転職後)の行為においては、以下の内容を明示し、上記に抵触しない事を合理的に証明出来ない場合においては、無効と判断される可能性が高いといえます。
①制限の対象となる期間や、地域についての明示
②企業秘密情報の性質等を鑑みた、制限内容の合理性
③元従業員の取引の自由の保護の必要性
④元使用者の正当な商業利益の保護の必要性
⑤その他、公益的な諸事情を鑑みた制限の合理性 等
更に、多くのインド日系企業において、インド人従業員の知識や技術の向上を目的とした、日本 (その他インド国外) での研修制度が採用されております。インド人マネージャーの育成や、モチベーション向上の為のインセンティブ旅行として実施しているケースもございますが、研修終了後に修得した知識・技術を携え、すぐに退職・転職してしまう事もインドでは決して珍しくありません。
この様な場合、研修にかかった費用は勿論の事、人的損失及び経営計画への悪影響も考えられます。従って、海外研修を導入・実施される際は、研修後の一定期間の転職を禁じ、規定に違反した場合、一定額の返金を求める等の条項を別途設ける必要があります。
ただしここでも当該返金額(損害賠償額)に対する、合理性等が認められない場合には、インド契約法27条に抵触し無効と判断される可能性がございますので、その内容には十分な留意が必要です。
GGI 東京コンサルティンググループではTokyo Consulting Firm Human Resources Pvt. Ltd.
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東京コンサルティングファーム
インド・バンガロール支店
マネージャー
岩城 有香
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