カンボジア企業経営への心得

経営

皆様こんにちは、カンボジア駐在員の澤柳です。             

さて、今回は「カンボジアの昨今の税制の変化」をご紹介していきたいと思います。

 

2015 年 12 月 25 日に the Ministry of Economy and Finance (MEF)から正式に発表があり、個人事業を含む会社の税制に大きな変更が実施されることが決まりました。(出所:Prakas 1819 & 1820)。

 

これまで個人事業者として登録されていた事業者の多くは、「Estimate Regime」という税制に該当しており、法人と同じような月次・年次税務申告を行う義務がありませんでした。Estimate Regimeの特徴は、その名の通り税務局が見込みで売上や利益を計算し課税するというお粗末なものであり、個人事業者が売上・利益を自己申告する義務が一切なかったのです。また、この税制の事業者には財務諸表の作成義務がなかったり、税務調査の対象ともなっていなかったため、法人と比べて比較的簡易な対応が認められていました。

 

しかし、今回の新たな税制の変更によりこのEstimate Regime税制は廃止され、年間売上高が KHR250 million (~USD62.5K)以上であればいかなる事業者も「Real Regime」という税制を適用されることになったのです。

 

このReal Regime税制とは、これまで法人の税制として運用されており、財務諸表を作成・提出し、月次や年次で税務申告を行う義務が事業者に発生します。つまり、この新たな税制の変更によって法人と全く同じ制度、同じ課税率、同じ体系が個人事業にも適用されることになったのです。

 

2016 年 1 月よりこの税制が適用されることになったのですが、実際にはこの税制の急激な変更に対応できていない事業者が数多くいます。これまで財務諸表すら見たことも作ったことのない事業者がよくわからないまま対応を迫られ、結果として会計事務所に丸投げになってしまうことも少なくありません。

 

確かにこれまでの個人事業者の税制はお粗末で、他ASEAN諸国のようにしかるべき税金を納めるような仕組みではありませんでした。いずれは変わる運命でもありました。しかし今、この新たな税制により、多くの個人事業者、特に「外国人」の個人事業者がタックスハラスメントに悩まされており、弊社でも多くのお問い合わせを頂いています。

 

税制が大きく急激に変わったことで、税務局側もこれを機として個人事業者に対してアグレッシブな税務調査を行っており、多額の追徴金、ペナルティ、さらには賄賂と言った金銭的要求をされる事業者さえいます。(税務局関係者によれば、事業規模や組織が法人よりも小さい個人事業者は、税務局にとってはで叩きやすく埃が出やすいのだそうだ。)

 

この税制が「正しい」か否かは別の議論ですが、これまでカンボジアで個人事業として事業を行ってきた人々は、事業を守るための更なる努力を求められており、カンボジアに残り事業を続けるか否かの選択を迫られています。

 

 

澤柳 匠

 

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