こんにちは。東京コンサルティングファーム ブラジル駐在員の金内です。
今週はブラジル労務について記載いたします。
ブラジルの投資を考える上で、ブラジルコストと呼ばれる重要な懸念事項があります。ブラジルコストとは、「複雑な税制」、「過剰な労働者保護措置」、「治安の悪さ」といった懸念事項の総称であり、上記代表的な項目の他にも、「高い金利」、「未発達なインフラ」や「教育問題」などが挙げられます。今回記載するのは、税制と労働者保護措置による労務コストについてです。
現在ブラジルは、従業員の基本給に対して、企業の税負担は約75%程度、交通費や昼食におけるコストを参入すると、企業負担総額は約2倍程度になると言われています。経費総額のうち、人件費総額が15%程度を占める企業もあるほどです。INSS(社会保証院へ負担金)だけでも、一般企業の場合は企業負担率20%、金融機関等の業種企業の場合は22.5%が課税されます。また、上記%に加えて、通常は民間年金会社や労働災害リスクに対しての負担金が発生するため、実行負担率は26.8~28.8%となります。
上記に加えて、ブラジルでは十分な教育を受けていない労働者や、低所得層に分類される労働者が社会的に虐げられないように、労働者保護の法律を多く設けています。企業による労働者の昼食保証も、その1つです。サンパウロ、特に都心部では、昼食を外食することは、物価が高いという事もあり、一般労働者にとって大きな出費となります。簡易な食事で済ませても、月収の4分の1程度を出費する方も少なくありません。そのため、企業内に食堂を設けるか、外食分を支給するという方法によって、企業が負担を行っています。中間所得層の急増が注目される昨今ですが、全人口比率でみれば割合はまだまだ少なく、あくまでも世帯所得での数値のため、個人レベルでは十分に生活するのに難を有する現状が垣間見ることができます。
上記の様にコストとして簡易に計算できる項目の他に、リスクとして検討すべきものも多数あげられます。例えば、ブラジルでは雇用条件の変更が困難、特にダウングレードは不可能とされている点や、解雇後も労働契約の解除から2年間は企業への訴訟が可能なため、契約条件の変更などに伴う雇用中の訴訟リスクや、解雇に伴う雇用後の訴訟リスクを常に念頭に置いておく必要があります。ブラジルは提訴が比較的安価に行えるため、労働者保護寄りの法律や規定をもとに、年間で膨大な数の訴訟が行われます。この現状を踏まえ、訴訟問題を回避するための処置を事前にとっておく必要がありますが、当然当該処置にもコストがかかります。弁護士への顧問料や、規定や労働契約書の適時アップデートにおける費用が考えられます。
これらの点を踏まえ、従業員を1名雇用した場合の労務コストを積算し、雇用形態や雇用条件を再度検討し、どのように人事戦略を取っていくかが企業の重要な課題となります。
以上