2016年度ICMS税制変更について⑤(ICMS概要解説)

 

今回は、前回までの2016年度ICMS税制変更に関連して、ICMSの概要について解説致します。

 

本テーマブログ第1回目での解説の通り、ICMS(IMPOSTO SOBRE CIRCULAÇÃO DE MERCADORIAS E PRESTAÇÃO DE SERVIÇOS)とは、商品流通税であり、州税として州政府が管轄している付加価値税・間接税です。ICMSは商品の流通に対して、製造業者、卸売業者、小売業者などに広く課税を行う付加価値税の一種です。また、通信や運輸などの一部のサービス取引についても課税の対象としています。

 

ICMS の課税対象取引

Ÿ   商品の搬出(電力の提供等を含む)

Ÿ   輸入品の国内搬入(固定資産等を含む)

Ÿ   飲食店等での食事の提供

Ÿ   海外でのサービスの提供

Ÿ   通信サービス

Ÿ   石油、潤滑油、液体燃料やガス、電力の消費(製造に供されるもの等を除く)

Ÿ   サービスを提供する事業で ISS( サービス税)の対象となっていない場合

Ÿ   消費等の目的による他州からの商品の搬入

Ÿ   州・市の間の運輸サービス

Ÿ   商品の所有者の移転(商品の移転の事実は問わない)

課税対象となる取引を行う者が納税義務者となります。たとえば、製造業、小売業、卸業など物品を扱う業種の他、通信サービスの提供者や州間や市間を結ぶ運輸サービスを行う事業者、輸入を行う会社などが納税義務者となります。納税義務者は各州に対して納税者登録を行う義務があります。

ICMS は州税であるため、連邦税のように一括で国に納めるというような方式がとれず、事業施設の所在する州にそれぞれ納める方式をとっています。以前までは、各事業施設が直接州に納付していましたが、州内であれば1つの施設にまとめて納付することが認められています。ブラジル政府管理のSPEDシステム(EFD-ICMS)によって2011年1月より登録が義務化されており、GIA(Guia Nacional de Informação e Apuração do ICMS)を使用して毎月申告を行う義務があります。

ICMSの課税標準額は、商品価格に加えて、ICMS自体やCOFINS、PIS等の間接税についても含まれます。ただし、この課税標準額には、原則として、IPIは含まれません。しかし、ICMS規則によると、商品の購入者が最終取引者であり、当該取引がIPIの課税対象となる場合にはIPIが課税標準 額に含まれるとされています。たとえば、個人やICMSの納税義務者ではない法人が、製造業者から物品を購入する場合や、当該物品の購入者がICMSの納税義務者であっても、自己消費目的であり、次段階へ転嫁されない場合には、このケースに該当します。

商流上の問題でICMSのクレジットが貯まってしまい、消化できない企業が多くあります。ICMSクレジットはサプライヤーへの仕入れ時の移転や、還付によって消化することが規定上、システム上で認められていますが、実際の使用申請については州政府の認可が必要であり、現在、その申請が殆ど下りない状況が続いています。ICMSは州税ですので、当該申請の受理は、州政府の財政状態に大きく左右されます。本来であれば制度上認められる権利ですが、海外ビジネスにおいて、政府からの税金還付は困難を極める分野です。まずは商流の変更等によって、商流上でICMSクレジットが貯まらない方法を検討するとともに、ICMSのクレジット移転や還付請求の申請を個別に進められることをお勧め致します。

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