【ベトナムの移転価格税制の心得④】〜移転価格税制で用意すべきこと〜

税務

ベトナム拠点の花嶋です。
今月はベトナムの移転価格税制シリーズでお送りします。

 

経営をするには短期と長期の思考が必要です。短期的には、税務調査のリスクも低く移転価格税制というものを軽視してしまうかもしれません。しかしながら、長期的に見れば税務調査リスクも高まりますので、これを一度は頭に入れて自社にどのような影響があるのかどうか確認しておく必要があるかと思います。

 

今回のテーマはベトナムの移転価格税制で用意すべきことについてです。
では、さっそく見ていきます。

 

移転価格文書作成義務に当てはまる企業は下記をご参照ください。

Decree 20/2017/ND-CP(Decree 20)で定められている関連者間取引を行う納税者・企業は、移転価格文書の提出をします。一般的に、税務当局の通知を受け取る前に移転価格文書を準備しておくことが必要です。

 

提出する一般的な書類は以下のようなものです。

□開示申告書類※

・Form01

・Form02

・Form03

・Form04

 

□移転価格文書

・マスターファイル:多国籍企業グループの全体像に関する資料

・ローカルファイル:ローカル納税者の関連者間取引に関する詳細な情報に関する資料

・国別報告書 (CbCR):多国籍企業の経済活動の所在、所得、納税額等に関する資料

 

□作成言語

ベトナム語

目次

Form 01

□概要

これは、ベトナム法人の関連者取引について概要情報を申告する書類となります。

□作成・提出期限

決算日より90日以内に作成し、法人所得税(CIT)の申告書に添付して提出をします。

□免除規定

ベトナム国内の関連者間取引のみを行う納税者は、課税年度において両関連者が同一の法人税・法人税率を適用しており、さらに法人税優遇を受けていない場合に以下の免除がされます。

・Form1のセクションII(I 関連者間取引の移転価格の決定に関する情報)の記入の免除

・セクションIV(関連者間取引の移転価格調整後の業績)の記入が免除

□留意点

免除を受ける際、前提として納税者はDecree20の免除規定を満たしている必要があります。免除規定を満たしていない場合、上記Form01に対する免除は適用されず、免除規定なしの条件下で移転価格文書を作成・保管し、関連するFormを提出する必要があります。

 

Form 02・03

□概要

移転価格文書の作成義務がある納税者は、同様にForm02、Form03を提出する必要があります。

□作成・提出期限

決算日より90日以内に作成し、法人所得税(CIT)の申告書に添付して提出をします。
税務調査の場合、税務局から提出要請通知を受けてから15営業日以内に提出します。

□免除規定

移転価格文書の作成義務がない場合

□留意点

これらのフォームの提出とは別に、年次の法人税確定申告書にて移転価格の調整を行う必要がある場合もあります。

 

Form 04

□概要

Form04とは、国別報告書(CbC-Report)に関するチェックリストのことをいいます。

□作成・提出期限

決算日より90日以内に作成し、法人所得税(CIT)の申告書に添付して提出をします。

□免除規定

納税者が最終親会社ではなく、課税期間におけるグローバルの連結売上高が18兆ドン(約900億円)未満のベトナム企業であること。つまり、その逆であれば適用されます。

□留意点

日系企業は、Form04の代わりに親会社の国別報告書を準備するだけでよい場合もあります。

 

国別報告書(CbC-Report:Country-by-Country Report)

□国別報告書

国別報告書(CbC-Report)とは、多国籍企業グループの各社に関する国別の所得、納税額、経済活動のグローバルな配分に関する情報を設立国ごとに記載した報告書です。
同レポートを作成し、税務当局に報告するのは多国籍企業グループの親会社です。親会社は同グループのすべての国外関連者について、以下の内容・金額を設立国ごとに決められた報告様式にしたがって報告します。

 

国別報告書の内容としては、国際的なグループが事業活動を行っている管轄ごとの、グループの主要な財務・税務指標(売上、利益、未払税額、従業員数、資本金及び有形資産の額等)が含まれています。

 

□納税者がベトナム国外に最終親会社を有している場合

海外の最終的な親会社がその居住国において国別報告書を提出・保管する義務がある場合ベトナムの納税者は国別報告書を提出する必要があります。
もしくは、ベトナム税務当局に国別報告書を提出しない場合、納税者は書面で説明資料を提出しなければいけません。

 

□最終親会社がベトナムの場合

ベトナムに最終的な親会社が存在する場合でかつ、連結売上高が 18兆 VND(約789百万USD) 以上となる場合には、当該報告書を提出する必要があります。ベトナム国外に最終親会社が所在する場合、自動的情報交換手続によってCbCRがベトナム税務当局に提供される場合は、現地子会社からベトナム当局にCbCRを提出する必要はありません。 

 

以下に該当する場合、事業年度末から12ヶ月以内にCbCRをベトナム現地子会社がベトナム 税務当局に提出する必要があります。

・ベトナム国外の最終親会社所在地国の税務当局とベトナムが、情報交換規定を含む租税条約を締結しているが、CbCRの自動交換に係る権限ある当局による多国間協定に署名していない場合 

・相手国の権限ある当局がベトナムとのMCAAに署名しているが、自動的交換手続を一時停止している、あるいはCbCRがなんらかの理由でベトナムに自動的に提供されていない場合

・ベトナム国外に最終親会社を有する同一グループの子会社がベトナムに複数存在する場合

・ベトナム国外の最終親会社がその所在地国においてCbCRを提出する義務がない場合

以上

 

最後になりますが、移転価格税制に関する新しい政令(Decree 132/2020/ND-CP)が出され2020年12月20日から施行されています。これについてもご確認ください。
今回までベトナムの移転価格税制について見てきました。これを通じて、皆様のベトナム法人ではベトナムの移転価格税制への対応を含め、ベトナムの税務コンプライアンスを遵守して会社経営ができているか、税務会計の見直しをするきっかけになっていれば幸いです。

 

次回は、今回の税務の見直しをきっかけに資金繰り等にご関心のある方に向けて財務会計について見ていければと思います。
弊社では、ベトナムの移転価格文書作成や税務調査準備、税務の見直しのサポート等が可能です。上記に関するご相談、受け付けております。また、次回以降掲載予定の財務会計についてもサポ―トしておりますので、お気軽にお問い合わせください。


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東京コンサルティングファーム
ベトナム ハノイ
花嶋 拓哉


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