ベトナム拠点の花嶋です。
ベトナムのコロナ渦中の撤退をテーマにお送りします。
昨年(2020年)の今頃は、約500人未満程度の感染者数であったところ、今年の同時期の状況は約9万人となっており、2021年もなお新型コロナウイルスの影響が各国で続く中で、ベトナムでは2021年の半ばに入ってから、新型コロナウイルスの影響がさらに広がってきました。
特にハノイやホーチミン等の都市部では街が一時的に社会的隔離措置(ロックダウン)がとられ、その他工場等では住み込みの条件下で運営が許可されていたりと、昨年のコロナウイルス感染状況よりも悪化している状況です。
そんな中で、事業によっては経営が悪化、このまま会社維持をするべきか否かを検討される企業も増えている現状があります。
このままベトナムから撤退するべきなのか否かを検討されている企業様にお役に立てれば幸いです。
今回は、ベトナムの合弁企業等の場合に検討される「出資持分の譲渡による撤退」について見ていきます。
■メリット、デメリット
メリット:会社自体が存続することから当局の協力を得られやすく手続が比較的早く完了すること
デメリット:譲渡先が潜在リスクを恐れること
■スケジュール
▼全体で4か月程度かかります。
※政府当局の動きによってスケジュールに前後変動します。
▼手続き概要
資本譲渡の申請書作成:1週間~程度
資本譲渡の申請:1か月~1か月半
IRCの変更申請:2か月
ERCの変更申請:1か月~1か月半
IRCやサブライセンスは外資企業であれば取得が必要ですが、ベトナム国内資本の会社であればERCのみで済みます。
前提として、IRCというのは50%の外資出資があれば外資とみなされ、取得が必須となります。それ以下の外資出資の場合、原則的に取得は不要と考えられますが、ビジネス内容や設立する省によっては取得要件が変わる可能性がある点に留意が必要です。
■資本譲渡に関するベトナムの法律
出資持分を譲渡することは法令上禁止はなく、特別な制限もないため、出資持分の譲渡による撤退は可能です。
有限会社の場合 会社法52条、株式会社の場合 会社法127条
第52条 持分の譲渡
1.この法律第51条4項,第53条6項及び7項に規定する場合を除き,二人以上社員有限責任会社の社員は,以下の規定に従って,自己の持分の一部又は全部を他人に譲渡する権利を有する。
a) 残りの各社員に対し,会社における持分に応じた割合で,同一の売却条件により持分の売却を申し出る。
b) 売却を申し出た日から30日以内に,会社の残りの各社員が購入しない又は全部購入しないときに,社員でない者に対し,この項 a 号に規定する各社員に対する売却の申出と同一の条件で譲渡する。
2.譲渡した社員は,この法律第48条2項 b号,c号及び đ号に規定する買主に関する情報が完全に社員登録簿に記載されるまで,依然として会社に対し持分に対応する各権利及び義務を有する。
3.各社員の持分の譲渡又は変更の結果,会社に社員が一人しかいなくなる場合,会社は一人社員有限責任会社の形態に従って管理し,譲渡の日から15日以内に企業登記の内容変更登記をしなければならない。
■譲渡価格の決定方法
譲渡者が取得した譲渡契約書上の受領金総額で、譲渡取引に関わる関係者がその金額を決めることができます。
とはいえ、ベトナムでは厳密な評価が難しい背景から、直近の監査済みの財務諸表の簿価を適用することが一般的に行われています。
ただし、譲渡価格が譲渡契約書上に明記されない場合、ベトナムの税務局が譲渡価格を決めることがあります。譲渡税の支払い額を抑えるため、安価な譲渡額で譲渡をすることを検討した場合、税務局からの指摘リスクがあるため、譲渡額を客観的指標で示せることがよいでしょう。
つまり、一番ベストな方法は、当社のようなコンサルティング会社の第三者による企業評価やデューデリジェンスを行い、客観的な評価を受けた上で、資本譲渡価格を決めることかと思います。
■資本譲渡の申請について
譲受人は、ベトナムの計画投資局(事業登録機関)に、資本譲渡に関する登録書を提出します。
以下の内容を記載し、譲渡者、譲受人の署名が必要となります。
1)譲受人(買い手)及び譲渡者(売り手)の名前、設立日、法的代表者のパスポート番号、住所
2)会社名、住所やライセンス、資本金、出資比率等の資本譲渡前の出資先のベトナム法人の情報
3)会社名、住所やライセンス、資本金、出資比率等の資本譲渡後の出資先のベトナム法人の情報
4)資本譲渡の理由
5)新投資家のコミットメント
6)買い手の登記簿謄本等、その他添付書類
次回は、資本譲渡税や、ERC取得、IRC取得に関して記載していきます。
ここまで資本譲渡の概要について見てきましたが、法人閉鎖に関するコンサルティングサービス以外にも、弊社では、ベトナムに関連する企業様に対して、財務&人事コンサルティング、会計、税務、労務、法務等に関する顧問サービスのご提供が可能です。お気軽にお問い合わせください。
Tokyo Consulting Co.,Ltd. Vietnam.
花嶋
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ベトナム ハノイ
花嶋 拓哉
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