こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。
半年ぶりに常夏のフィリピンから真冬の日本に帰って参りました。気温のギャップが激しく、寝るときまでダウンジャケットを離せない環境ですが、家族とのひと時や食事のおいしさ、安心できる環境はかけがえのないものだと改めて思います。日本とフィリピン、それぞれ強みは違いますが、それぞれの国が強みを活かして発展していけるよう、微力ながら今後も顧客貢献して参りたいと思います。
今週は先々週のブログの続きで、租税条約適用申請(TTRA:Tax Treaty Relief Application)について、お話をさせて頂きます。
日比租税条約において、通常の税率よりも低い軽減税率が定められていることは先々週のブログでお話しさせて頂きましたが、この軽減税率の適用を受けるにはTTRAを申請しなければなりません。このTTRA申請はBIRのITAD(International Tax Affairs Division:国際税務部)へ行いますが、注意しなくてはならないのは申請の時期です。
TTRA申請手続に関するガイドライン(RMO 72-2010 Sec.14)によると、TTRA申請は課税取引(ロイヤリティ、配当の支払い等)前に行わなければならないのが原則です。具体的には、株主に対する配当については、配当を行う前に毎回TTRA申請を行わなければなりません。また、その他の取引については契約書で定められた契約期間毎に、事前にTTRA申請を行わなければならないと解釈されています。さらに、契約内容に変更があった際にも、再度TTRA申請が必要になるので注意が必要です。
TTRA申請に必要な一般的書類は以下のようになっています。
1. 居住証明(Proof of Residency)
→日本法人の居住性について、管轄税務署で発行後に日本側で公証、外務省と在日フィリピン大使館での認証が必要。
2. 会社の定款(Articles of Incorporation)
→日本法人の定款コピー、その英語訳について日本側で公証、外務省と在日フィリピン大使館での認証が必要。
3. 特別委任状(Special Power of Attorney)
→日本側で公証、外務省と在日フィリピン大使館での認証が必要。
4. フィリピンでの事業証明(Certificate of Business Presence in the Philippines)
→フィリピンで取得。
5. 係争中の訴訟案件がないことの証明(Certificate of No Pending Case)
→フィリピンで取得。
上記の必要提出書類に加え、事業所得、配当、ロイヤリティ等の種目毎に細かく提出書類が定められています。
参考URL 「TTRA申請ガイドライン」RMO No. 72-2010:
ftp://ftp.bir.gov.ph/webadmin1/pdf/52924RMO%2072-2010.pdf
参考URL「JETRO」:http://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/invest_04/
一通りの必要書類を準備し、BIRのITADに提出してBIRからスタンプ付きの受領証明書をもらったところで、租税条約の軽減税率が適用されるようになります。しかしながら、TTRA申請に関する公式の承認書発行はまだ先の話です。
BIRから小出しで追加書類の提出を求められ、それらすべての書類の提出が済んでから60営業日後に承認書を発行するというのが法律上の規定となっています(RMO 72-2010 Sec.15 i)。しかし、実務上は60営業日後に承認書が発行されるということは少なく、通常は書類が揃ってから6カ月程度かかっているというのが現状になっています。
最後に、昨年8月に下されたドイツ銀行のTTRA申請に関する最高裁判決(Deutsche Bank AG Manila Branch v. Commissioner of Internal Revenue, GR 188550, August 19, 2013)に関連し、TTRA申請が遅れてしまった場合の取扱いですが、ドイツ銀行のケースがまだ完全に決着していないので、こちらは経過観察が必要な状況です。現在のところは取引前に適切にTTRA申請を行うことが必要になっています。
TTRA申請について、何かありましたら弊社までご連絡頂ければ幸いです。
今週も、どうぞ宜しくお願い致します。
以上
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