フィリピン 配当にかかる税率って違うの?!

フィリピン税務コンプライアンスチェック 配当にかかる税金って違う?「フィリピン配当課税における概要」

 

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.69<配当にかかる税率って違うの?! >

今回は、【フィリピン配当課税における概要】をご紹介します。

 

フィリピン日系子会社の税務コンプライアンスチェックにあたって、配当に伴う税務処理が適切に行われてるかどうかを確認する必要があります。

配当をする理由は、企業利益や手持ち資金によって企業ごとに配当のポリシーはあるにせよ、税務上検討すべき事項があります。

 

■10%IAET(不当留保金課税)への対処
IAETは、フィリピン法人の利益剰余金額が払込資本金額を超えている場合、通常の法人所得税30%課税後に、更に10%が追加課税されるものになります。
これは、事業上の必要性を超えて利益を配当せずに留保し、株主に関する所得税を回避していると見なされるためです。
対処方法としては、増資/現金配当/株式配当などの利益処分をするか、又は今後の事業拡張計画など取締役会で承認された正当な留保理由を監査済み財務諸表に明記しとく必要があります。
当該IAETは、税務上損金不算入かつ還付等もありません。
PEZA企業は、登録事業に対する利益についてIAET対象外とされています。

■配当のパターン
それぞれ以下の配当方法によって、SECへの申請方法や手続きが異なりますので、ご注意下さい。

・Cash dividends(現金配当)
・Property dividends(現物配当)
・Stock dividend(株式配当)
・Liquidating dividends(清算配当)

*SECへの申請にあたり、取締役会決議書・直近の監査済み財務諸表・Secretary Certificateなどの資料の必要となります。

■配当に係る税率
配当に対する税金は、源泉分離課税をベースとし、源泉徴収した月の翌月10日までに申告納付する必要があります。
また、配当を受ける側が企業又は個人なのか、居住者又は非居住者によって税率は変わってきます。

<個人への配当>
フィリピン人又は居住外国人:10%
投資や事業活動を行う非居住外国人:20%
投資や事業活動を行わない非居住外国人:25%

<法人への配当>
内国法人:0%
居住外国法人:0%
非居住外国法人:30%

 

■日比租税条約で軽減税率の適用
最も一般的なケースは、フィリピン子会社から日本親会社への配当です。
日本の親会社は非居住外国人とみなされ、配当時に30%の最終源泉税が課税されることになります。

しかし、フィリピンで源泉徴収として課税され、日本でも所得が課税される「二重課税」を防ぐ目的で、日比間において租税条約が締結されています。
この最終源泉徴収税における租税条約を適用した場合の税率は、30%→15% or 10%への軽減税率が適用となります。
*日本では、上記軽減税率に対して、みなし外国税額控除の適用が可能です。

当該日比租税条約により、軽減税率の適用を受けるには適用申請(TTRA: Tax Treaty Relief Application)を事前に行う必要があります。

 

■租税条約申請手続きの簡素化
配当、利子、ロイヤルティの3項目については、2017 年 3 月 28 日に BIR が発表した通達(RMO 8-2017)により、申請が簡略化しました。
通達によると 、配当、利子、ロイヤルティに係る源泉税についてTTRAを利用する場合、従来使われていたBIR Form 0901に代わり、CORTT(Certificate of Residence for Tax Treaty Relief)フォームを記入して、原本を BIR の ITAD(International Tax Affairs Division: 国際税務部)および RDO39(非居住者の管轄税務署)に提出する手続きになります。

なお、CORTT フォーム PART I の D. Certification of Competent Authority or Authorized Tax Office of Country of Residence については、日本の国税庁が発行する居住者証明書が使用できます。
CORTT フォームの PART I を非居住者が記入した後、フィリピン国内の最終源泉義務者が受取り PART II を記入して当局に提出をします。CORTT フォームの提出期限は、最終源泉税の支払い後 30 日以内と定められています。

 

以上、配当時における課税関係を考慮の上、租税条約適用申請を適切に実施されていない場合、
税務調査時に源泉税の申告ミスとしてペナルティーや追徴課税をされる可能がありますので、税務コンプライアンスチェックは日系企業にとって重要性を増していくことでしょう。

という事で、4月22日、弊社東京オフィスにて「フィリピン税務調査セミナー」の開催します。
お時間ある方は是非ご参加ください。

 

最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。

今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

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