現地法人以外の進出の形態

法務

みなさんこんにちは、本日は現地法人以外の進出の形態についてお話したいと思います。

現地法人以外の進出方法

現地法人を設立せずに拠点を設置する場合、支店、駐在員事務所を設置することができます。

■ 支店

支店とは、本店から遠隔にある地域において、外国投資法の規則に 従い、本店と同様の営業展開をするために設置された事務所です。後 述する駐 在員事務所とは異なり、売上をあげる活動が可能な進出形態 です。
フィリピンに支店を設立する場合は、本店は日本において適法に 事業活動をしていることを証明するために本店の財務状態を開示し、
 証券取引委員会(SEC)に登録の上、事業ライセンス(License To Transact Business in the Philippines)を取得します。
支店は、現地法人といくつかの点で異なります。現地法人は、親会 社から独立した法人であるのに対して、支店はあくまで本店と同一法 人であることから、支店が負う債務弁済責任は、最終的にすべて本店 が負うことになります。つまり、本店の資産はすべて、フィリピン支 店の債権者の権利行使の対象になるというリスクがあることに留意し なければなりません。
[支店の責任及び活動範囲]
支店は、本店と同様の営業活動を行うため、フィリピン事業から所 得を稼得することが認められています。支店は外資規制において外資 100%出資の会社と同様に扱われるため、外国投資法に従い、ネガティブリストに記載されている事業活動には、従事することができません。
[支店の最低資本金額]
外国企業のフィリピン支店が国内市場向けの事業を行うためには、 以下の運転資金を海外から送金する必要があります。
 ・ 先端技術を使用せず、50人以上の直接雇用をしない場合
  ➡20万USドル相当以上の運転資金
・ 先端技術を使用している、もしくは50人以上の直接雇用をする場合
  ➡10万USドル相当以上の運転資金
・ 輸出型企業の場合は5,000ペソ※以上の運転資金
※ 5,000ペソでは運転資金が少なすぎるという指摘をSECが行うことがあるため、実務上は10万ペソ以上が現実的な数字になります
[支店の代表者]
支店設立に際し、居住代理人(Resident Agent)をフィリピン支 店に選任する必要があり、会社法のコンプライアンスを守る責任や、 支店に送達される召喚状を受領する責任を担うことになります。居住代理人は外国人でも問題ありませんが、フィリピン居住者である事が 必要です。居住者の要件は、SECの実務上は1年以上有効に滞在できるビザを持っている者ということになっています。
[支店の活動と日本本店の財務諸表]
支店の場合、支店の財務諸表を作成し、支店に帰属する所得につい てはフィリピン側で納税する必要があります。  しかしながら、支店の場合、本店と同一の法人格を有するため、支店の財務諸表は、日本側で本店が作成する財務諸表と合算されます。  従って、支店での経費が本店の損金としてみなされる点が、現地法人と異なります。即ち、支店が赤字の場合には、本店の所得と支店の赤字を通算する事により、本店の納税額を軽減できることになります。ただし、フィリピン支店の業務が軌道に乗り、利益が生じるようになると、そのメリットは減少します。

■ 駐在員事務所

[駐在員事務所の活動範囲]
駐在員事務所とは、主として情報収集や宣伝等の活動を行うことを目的として登録される事務所をいいます。駐在員事務所は本店とフィリピンの顧客との連絡事務所として活動します。駐在員事務所の機能は限られており、一般的には以下の機能が認められます。
 ・ 親会社の製品及びサービスの情報宣伝と販売促進
・ フィリピン市場調査の実施
・ フィリピンにおける情報収集
・ 輸出製品の品質管理やアフターサービス
駐在員事務所はフィリピンで行う事業活動において所得を得ること は禁じられています。注文の勧誘や売買契約の締結も許されていない ため、親会社は直接フィリピンの買い手に販売することとなります。
ただし、事務所の賃貸借や従業員の雇用といった、駐在員事務所の管理に関する事項については、契約を締結することができます。
また、駐在員事務所の利用方法で多いのが、製造業等の外国企業が現地の委託企業の品質管理を行う場合です。ビジネス慣習の違いや技術的な問題によって委託企業に対して品質管理を行う必要がある場 合、駐在員事務所を設置して現地から直接納期の管理、技術的な助言、検品を行うケースがあります。このような駐在員事務所の利用方法も外国企業の中で一般的となっています。
[駐在員事務所の資金]
駐在員事務所はその運営において所得が発生しないため、本店からの送金によって活動経費が賄われます。駐在員事務所の必要経費を賄うための送金は随時行うことができますが、設立の要件として、設立 時点で本店から3万USドル相当以上を送金しなければならず、この送金は 証券取引委員会(SEC)への登録申請前に行う必要があります。
[税務申告]
駐在員事務所は、所得を得ることは禁止されていますが、銀行預金の利息などが収益として計上されることもあります。仮に収益がまったく発生しない場合でも、 法人所得税の申告義務があるため注意が必 要です。
また、駐在員事務所は売上をあげる活動が禁止されているため、駐在員事務所がそのような活動等を行っていると疑われる、もしくはそう判断された場合には、 恒久的施設(PE:Permanent Establishment)とみなされ、みなし所得に対して課税される恐れがあります。

その他の進出形態

[個人事業]
個人事業(Sole Proprietorship)とは、個人が所有する企業で、 法人格のない事業体を指します。個人と企業が同一視されるため、 個人事業が負う債務の支払責任は、事業主個人にまで及びます。つま り、事業主のすべての事業用及び個人用資産が、差押えなどの法的行為の対象となり、出資者のリスクが出資額に限定されない点が 株式会社と大きく異なります。
ネガティブリストの規制業種を、フィリピン人以外が個人事業として行うことは認められていません。原則として貿易産業省(DTI: Department of Trade and Industry)に事業許可を申請し、許可を得なければできません。個人事業主としてDTIに登録してビジネスを 行う場合には、外資100%の企業同様、基本的には20万USドル以上の出資が求められる点に注意が必要です。個人事業の場合には、決算の簡易申告ができるという利点があります。地方に所在地を置く場合は、貿易産業省の支部事務所で申請手続を行います。個人事業であ っても月次や四半期、年次の税務コンプライアンスを遵守する必要があります。
[ パートナーシップ]
パートナーシップ(Partnership)とは、「利益を確保する目的で2人以上の者が結合し、共同事業体を形成するための契約である」と定義されており、サービス業など(弁護士事務所、会計事務所など)で 利用される形態です。
出資者がパートナーシップの負担する支払義務について無限に責任を負う無限パートナーシップと、出資者の責任が、その出資額を限度とする有限 パートナーシップに分けられます(民法1767~1867 条)。
3,000ペソ以上を資本金とするパートナーシップは、SECへの登録が義務付けられており、SECが規定する各種義務を遵守しなければなりません。

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