就業時間に関する判例

労務

<概要>

P社の労働組合が、P社が労働協定を守っていないものとして裁判所にその実態を報告し、訴えた。

 

<労働組合側の訴え>

P社は、以下の3点において労働協定及び労働法を違反している。

  1. 労働組合側との事前の同意なく、工場の従業員の就業時間を以下のように変更した。

変更前:月曜日~土曜日     午前8時30分~午後4時30分

変更後:月曜日~木曜日、土曜日 午前8時30分~午後4時30分

  1. 労働協定では、1週間のうち丸1日の休日が会社によって与えられるとあるが、7日間以上連続で働き、休日が与えられなかった者がいた。
  2. 時間外労働の計算方法が、監査を機に変わった。

2014年8月までは、通常の出勤日の時間外労働手当は、1時間につき時給の2倍で計算されていた。しかし、監査の後は、1時間につき1.5倍で計算されるようになった。

 

<会社側の訴え>

組合側が訴えている3点について、それぞれ下記の言い分がある。

  1. 2014年8月27日に、以下の通り同年9月1日から就業時間を変更すると通達をしている。

(1)   休日は金曜日および日曜日とする

(2)   一週間は水曜日から次の火曜日とする

  1. 実際には従業員には金曜日と日曜日が休日として与えられていたが、従業員が就業時間の変更に気づかずそのまま出勤してしまっただけである。
  2. 労働協定には、手当は以下のように計算されるとある。

通常の出勤日に時間外労働した場合

就業時間外に働いた時間 × 1.5

休日の時間外労働の場合

最初の8時間  : 就業時間外に働いた時間 × 2

8時間以上の場合 : 就業時間外に働いた時間 × 3

2014年に行われた監査で、時間外労働の計算方法に間違いがあったことが見つかった。これまで、通常の出勤日に時間外労働した場合でも、時給の2倍で計算していた。そのため、監査後は労働協定にあるとおりに計算することにした。

 

 

<裁判所の判決>

労働組合側の申し立てを却下する。

 

<裁判所の見解>

労働組合側から訴えがあった3点について、いずれも会社側が労働法・労働協定に違反していないことが証明された。

  1. 就業時間の変更については、事前に書面での通達がなされており、労働組合側からその返信が来ていることから、事前に通達されたことが書面にて証明された。このことから、労働組合側の「事前の通達が無かった」という訴えは嘘であるとわかる。
  2. 就業時間が変更されたことは1にもあるとおり通達がなされており、今回は従業員が誤解して出勤しただけで、会社側が労働協定に違反したわけではない。
  3. 会社側はこれまで誤った計算方法をしており、労働協定に定められている額以上に支払っていたことが明らかになった。監査を機に計算方法を正すのは、労働協定違反ではない。

 

<判決のポイント>

 今回は、書面での証拠から、結果的に会社側に労働協定違反がないこと、そしてどの条項も労働法に違反していないことが認められました。しかし、労働協定変更についての従業員への通達や、労働協定の書き方と言った点で、労働者側とのミスコミュニケーションが今回の訴えへとつながりました。特に、日本企業本社の規定をマレーシアで運用する場合には、マレーシアの労働法に則しているかという点はもちろん、誤解を生む表現になっていないかという点を十分に確認する必要があるとともに、しっかりと説明を労働者側と行い、ミスコミュニケーションをなくしていく必要がございます。

 

 

関連記事

内部調査会(Domestic Inquiry)の効力の有無に関する判例

人事評価に関する判例

ページ上部へ戻る