こんにちは、インド・ムンバイ事務所駐在員の鈴木です。
今回はインドに来られる出張者の方に関するインド所得税の課税関係についてご説明します。
インドの納税義務者の判定で「通常の居住者、非通常の居住者、非居住者」の区分がまず基本となりますので、この判定区分に応じて、課税関係を見ていきたいと思います。
① 非居住者の場合
→インドで発生した所得分のみ課税。
ほとんどの出張者の方はこちらの非居住者に該当するかと思いますので、インド法人が出張者の給与を負担していない限り、特に個人所得税の事については気にする必要はないでしょう。
(非居住者は下記に該当しない方を指します。)
・課税年度において182日以上滞在している
・60日以上滞在してかつ過去4年間の滞在期間が365日を超える
② 非通常の居住者にあたる場合
→インドで発生したの所得分のみ課税され、
親会社が負担している、インドで活動した分の給与も課税対象となる。
インドへの出張回数の多い方は、こちらに該当する可能性があります。
(非通常の居住者は下記に該当する方を指します。)
・課税年度において182日以上滞在しているが、
過去10年間のうち9年間はインドで非居住者であった。
・課税年度において182日以上滞在していないが、
上記①非居住者の条件から外れる方。
また出張者のインド滞在が課税年度(又は前年度を通じて)年間183日以内の場合、
別途、日印租税条約の規定も知っておく必要があります。
(日印租税条約の短期滞在者免税の規定)
日本からの駐在員ではなく出張者が課税年度12カ月間内にインドにいる日数が
183日以内の場合、「短期滞在者免税」というものがあり、
滞在日数の条件に加え、
・給与賞与等が日本からのみ支払われている
・インド法人から給与賞与等が負担されていない(出張手当も含む)
ことを条件に、インドでは免税となります。
※ただしPE認定を受けた場合は、課税される。
※ただし少しでもインド法人が負担する給与賞与等があれば、上記は適用されない。
滞在が183日を超えた出張者の方が非通常の居住者に該当する場合、
親会社が負担している給与負担分を子会社が親会社に支払いを行い、源泉徴収を行う必要があります。
これを行っていない場合、移転価格税制上、親会社が子会社の費用負担を行っていることとなり問題になる可能性があります。
また当該出張者が日本法人の活動を行っているのか、インド法人の活動を行っているのか不明確になるため、PE認定についてもリスクが伴います。
出張者の業務内容がしっかり区分されていれば、
ある程度PE(Permanent Establishent)リスクは軽減されると考えられます。
業務内容をしっかり区分するということについては、
事前に出張負担金に関する契約書を結び、
出張者の業務範囲を明確にすること、実態がそれに即していることがリスク回避につながると考えられます。
③通常の居住者にあたる場合
→全世界所得で所得税計算をする必要がある。
ただ、出張者のという立場で居住者に該当する事はほぼないと思いますので、
今回は説明を省きます。
(通常の居住者は下記に該当する方を指します。)
・課税年度において183日以上滞在し、上記②に該当しない方。
また、課税関係とは別に出張者がPF(Provident Fund)の適用も受けるのかという点も気になるところですが、その出張者が子会社と雇用関係がない限り、PFの適用にはならないと考えられます。ただ、PE認定を受けた場合は、同時にPFも適用されることとなりますので、PE認定には注意する必要があります。
PE認定については、また別途ブログにてご紹介出来ればと思います。