皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の松波 優大です!

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さて、今回は「インドにおけるM&A・事業再編

合弁会社(JV)解消・撤退の実務 — Exit方法とFEMA・税務の留意点」

についてお話していこうと思います。

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インドのJVから撤退する方法は複数あります。どの方法を選ぶかによって、FEMA上の手続き・課税・パートナーとの交渉難易度が大きく変わります。入口(JV設立時)のSHAにExit条件を明記しておくことが、最もスムーズな出口につながります。

Exit方法 概要 FEMA上の留意点 課税
持分売却(インドパートナーへのBuyout) 日本親会社の持分をインドパートナーに売却。JVを解消し、インドパートナーが100%株主になる 非居住者→居住者への譲渡:売却価格は公正価値以下(Ceiling)。FC-TRS報告(60日以内) 売却益はキャピタルゲイン課税。非上場株式のLTCG税率:12.5%(日印DTAA Article 13の検討も必要)
第三者への持分売却 日本親会社の持分を第三者(インド企業・外国企業等)に売却。SHAのROFRがある場合はパートナーへの先買権通知が先行 非居住者→居住者への譲渡はCeiling規制。非居住者→非居住者への譲渡は公正価値ベース。FC-TRS報告(60日以内) 売却益はキャピタルゲイン課税。CCI届出が必要な場合あり(資産₹2,000億超または売上₹6,000億超)
完全子会社化(インド持分のBuyout) 日本親会社がインドパートナーの持分を買い取り、100%完全子会社にする 居住者→非居住者への譲渡:買取価格は公正価値以上(Floor)。FC-TRS報告(60日以内) インドパートナーの売却益はキャピタルゲイン課税(インド側の税務問題)
会社清算(Winding Up) JV会社を解散。任意清算(Voluntary Winding Up)・NCLT命令清算・Strike Off(§248)の3種 清算手続完了後の残余財産の日本への送金にはAD Bank経由の手続きが必要 残余財産の分配は配当とみなされるケースと資本返還とみなされるケースで課税が異なる

JV持分の売却はFEMA NDI Rules Rule 21のPricing Guidelineに服します。方向性によって「床(Floor)」と「天井(Ceiling)」が異なる点が実務上の核心です。

  • 日本親会社 → インドパートナー(またはインド居住者)への売却:公正価値以下(Ceiling)で売らなければならない。つまり公正価値より高く売ることはできない
  • インドパートナー → 日本親会社への売却(Buyout):公正価値以上(Floor)で買い取らなければならない。公正価値より安く売らせることはできない
  • いずれの場合も公正価値はCA・SEBI登録マーチャントバンカー・コスト会計士の評価書(有効期間90日)が必要

よく問題になるのがPut Option(インド側がJapan側に売る権利)に固定価格を設定するケースです。SHAで「○年後に○円で買い取る」と約束しても、FEMA上は Exit時点の公正価値を超える価格での買取りは認められません。SHAにPut Optionを設計する際は、価格を「Exit時点の独立評価人による公正価値」とする方式にしておくことが不可欠です。

また、株式譲渡後60日以内にRBIのSMFポータルへのFC-TRS報告が必要です。これを怠るとFEMA違反となりコンパウンディング手続が必要になります。

III. 実務上の論点 — Exit交渉と落とし穴① SHAのExit条項が機能しないケースSHAに定めたExit条項(ROFR・Put/Call Option等)が実際の撤退場面で機能しないことがあります。特に多いのが以下のケースです。

  • Put/Call Optionの行使価格がFEMA Pricing Guidelineを超えており執行できない
  • ROFRの行使期間内にインドパートナーが資金を調達できず、実質的に機能しない
  • SHAの条項がAoAに反映されておらず、会社として拘束力を持たないと主張される

清算は最終手段です。インドでの清算手続きは時間がかかることで知られており、NCLT(国家会社法審判所)を経由する手続きは数年に及ぶケースもあります。実務上は以下の方法が現実的です。

  • Strike Off(§248):事業活動がなく債務もない休眠会社の場合、RoCへの申請で比較的迅速に抹消可能。ただし一定の要件充足が必要
  • 任意清算(Voluntary Winding Up):株主の決議で開始し、清算人(Liquidator)を選任して債務弁済・残余財産分配を実施
  • NCLT命令による清算:パートナー間の深刻なデッドロックや不正行為がある場合にNCLTに申立てる方法。時間・費用ともにかかる

日本親会社がJV持分を売却した場合のキャピタルゲインはインドで課税されます。非上場株式の長期譲渡益(LTCG)の税率はFinance Act 2024の改正により20%から12.5%に引き下げられました(2024年7月23日以降の譲渡から適用)。日印DTAA Article 13は「インド会社の株式から生じる譲渡益はインドで課税できる」と規定しており、DTAAによる税率軽減の余地は限定的です。

JVからの撤退は、事業判断としての難しさに加えて、FEMA・税務・会社法の複数の規制が絡む複雑な手続きです。撤退を円滑に進めるための最善の準備は、JV設立時のSHAにExit条件を具体的かつFEMA準拠の形で設計しておくことです。

日系企業が特に見落としがちなのが「SHAのExit条項をAoAに反映させていない」ことと「Put Optionに固定価格を設定してしまっている」ことです。後から修正しようとするとパートナーとの再交渉が必要になり、コスト・時間の両面で大きな負担が生じます。入口の設計が出口の質を決めます。

東京コンサルティングファーム インド拠点
松波 優大