皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の加部 新です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「なぜインド子会社の労務管理は属人化しやすいのか ― 日系企業が陥りやすい組織運営上の課題とは ―」についてお話していこうと思います。
「担当者しか分からない」が当たり前になっていないか
インド子会社の運営において、多くの日系企業が直面する課題の一つが労務管理の属人化です。
赴任したばかりの駐在員の方から、「この制度はHRマネージャーしか分からない」
「採用条件の決め方が担当者ごとに違う」
「退職者対応の手順が文書化されていない」
といった相談を受けることがあります。
会社として運営しているはずなのに、実際には特定の担当者の経験や知識に依存している状態は決して珍しくありません。そして、このような状態は会社規模が大きくなるほどリスクとなります。
インド労働法は複雑である
属人化が起こる最大の理由の一つは、インドの労働法制度そのものの複雑さにあります。
インドでは中央政府が定める法律だけでなく、州ごとに異なる規制が存在しています。また、オフィスなのか工場なのか、ワークマンなのかノンワークマンなのかによって適用されるルールも異なります。
そのため、制度を体系的に理解している人材が限られやすく、結果として「詳しい担当者に任せる」という運用になりがちです。
しかし、その担当者が退職した場合、会社側が制度を十分に理解しておらず、業務が停滞するケースも少なくありません。
進出初期は「まず事業を回す」が優先される
インド進出直後の企業では、営業活動や顧客開拓、工場立ち上げなどが優先される傾向があります。
そのため、採用基準評価制度昇給ルール懲戒手続き退職対応 などの労務管理については、最低限の運用だけでスタートするケースも珍しくありません。
当初は従業員数も少ないため大きな問題にならないものの、会社が成長するにつれて担当者ごとの運用差が生まれ、結果として属人化が進んでいきます。
就業規則や社内ルールが整備されていない
属人化を加速させる要因として、就業規則や社内ルールの未整備も挙げられます。
例えば、「退職時の手続きはどうするのか」
「懲戒処分は誰が判断するのか」
「有給休暇の承認基準は何か」
といった事項が明文化されていない場合、担当者の判断に依存することになります。
インドでは就業規則の整備が義務付けられていないケースもありますが、トラブル防止や運用統一という観点からは極めて重要な役割を果たします。
日本本社が現地運用を把握していない
もう一つよく見られるのが、日本本社と現地法人の情報格差です。
本社側は、「現地でうまくやっているだろう」
と考えている一方で、現地では特定のHR担当者や管理職が独自ルールで運用しているケースがあります。
特に設立から数年経過した会社では、本社が想定している運用と実際の運用が異なっていることも少なくありません。
その結果、労務トラブルや退職者対応が発生した際に初めて問題が表面化することがあります。
属人化は労務だけの問題ではない
労務管理の属人化は、人事部門だけの問題ではありません。
採用活動、給与計算、残業管理、社会保険、退職手続きなどは会計や法務とも密接に関係しています。
例えば、EPFやESIの対応漏れが発生すればコンプライアンスリスクにつながりますし、残業管理が不十分であれば給与計算や労務紛争にも影響します。
つまり、労務管理の属人化は、会社全体の内部統制やガバナンスの問題と言うこともできます。
Labour Code改正で求められる管理体制
近年のLabour Code改正では、複数の労働法が統合され、企業に求められる管理水準も高まる方向にあります。
現時点では移行期間が続いているものの、今後本格的な運用が開始された場合、企業側にはより体系的な労務管理が求められる可能性があります。
そのため、「担当者が知っているから大丈夫」という状態から脱却し、会社として知識や運用を共有できる体制を整備していくことが重要になります。
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加部 新