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1なぜIMS対応が今重要なのか
インドの税制では、仕入税額控除(Input Tax Credit:ITC)が企業のキャッシュフローを左右する重要な要素となります。
適切なITCを取得するためには、仕入先が発行した請求書(インボイス)やデビットノート・クレジットノートが正確に申告されていること、自社の会計帳簿と税務申告データが一致していることが不可欠です。
GSTポータル上に実装されたInvoice Management System(IMS)は、この照合作業を効率化するための仕組みです。IMSでは、仕入先がGSTR-1/1AやIFFに保存・提出したインボイスを受領側が確認し、受け入れ(Accept)・拒否(Reject)・保留(Pending)のアクションを取ることができます。
IMSは2024年10月1日から利用可能となり、受領側がインボイスの処理を行えるのは同年10月14日からです。
この制度導入から時間が経ち、2026年4月にはExcelベースのオフラインツールも提供されました。オフラインツールは、IMSデータをダウンロードして個別または一括で処理した後に再アップロードできる仕組みであり、納税者のコンプライアンスを支援するものです。
日系企業の多くはGST申告を会計事務所に委託していますが、ITCの取得は会計事務所が申告するだけで自動的に確保されるものではありません。インボイスの受領確認、購買部門の承認、商品の実際の受領、輸入貨物の通関情報など、社内の複数部門が関わるため、IMSを利用した照合作業は経理担当者だけに任せられるものではありません。今こそ月次決算・購買管理の運用体制にIMSを組み込む必要があります。
2制度・背景の概要
IMSは、GST制度のもとで受領者が請求書情報を確認し、必要な対応を行うための仕組みです。仕入先がGSTR-1、GSTR-1A、IFFに保存または提出したインボイスが、受領側のIMSダッシュボードに表示されます。受領側は以下のアクションを選択できます。
Accept:内容に問題がなければ受領を確認します。
Reject:誤った請求書や二重計上など、不適切な請求書を拒否します。
Pending:商品やサービスを受け取っていないなど、判断を保留する場合に使用します。
IMSでは「未処理(No Action)」であっても自動的に受領したものとして扱われるため、放置すると意図せずITCが計上される場合があります。
IMSのアクション結果はGSTR-2B(受領側のITC明細)およびGSTR-3B(実際の申告)に反映されます。GSTR-2Bは自動生成されるステートメントであり、仕入先の申告内容や税法上の否認項目(POS規則適用、CGST Act 16(4)条、Rule 37Aなど)によってはIMSに表示されず、直接「ITC Not Available」へ振り分けられます。
2026年4月の「IMS Offline Tool」導入により、納税者はポータル上ではなく、Excelベースのオフライン環境でインボイス情報をダウンロード・加工・一括更新できるようになりました。このツールは大量のインボイスを扱う企業にとって有用であり、通信環境に左右されずに照合作業を行える点が特徴です。
さらに、2025年10月のアドバイザリでは輸入貨物のBill of Entry情報がIMSと連携することが明らかにされており、製造業や商社など輸入取引を行う企業にとっては追加の確認が必要となります。
3実務上のポイント
3.1 GSTR-2Bだけでは不十分
多くの企業ではGSTR-2Bの数値だけを確認してITCを計上しています。しかし、GSTR-2Bは仕入先の申告に基づいて自動生成されるため、帳簿と一致していてもインボイスの内容が誤っている可能性があります。
IMSを活用して請求書単位で内容を確認し、差異がある場合は原因を切り分けることが必要です。たとえば、金額が一致してもPO番号が違う場合や、納品が未完了である場合はPendingとし、仕入先や購買部門に確認することが考えられます。
3.2 Accept/Reject/Pendingの基準を明確に
IMSでは取引ごとにアクションを選択しますが、その判断基準が曖昧だと運用がぶれます。次のような基準を作成し、経理部門だけでなく購買・倉庫・営業部門と共有することが望ましいです。
金額、納品日、PO番号が合致している場合:Accept
請求書自体に心当たりがない場合:Reject
商品・サービスが未受領、または納品遅延の場合:Pending
決定基準は会社ごとに異なるため、現場担当者が迷わないよう文書化し、権限者による承認プロセスを整備することが重要です。
3.3仕入先管理はITC管理に直結
仕入先が正しくGST申告を行っていない場合、IMS上に請求書が表示されなかったり、金額が誤っていたりする可能性があります。購買部門は価格や納期だけでなく、GST申告の正確性をベンダー評価の指標に加える必要があります。
主要仕入先に対しては、申告遅延や修正依頼への対応状況を定期的にチェックし、必要に応じて改善を求めることが重要です。
3.4輸入取引とBill of Entryの確認が必要
輸入取引では、Bill of Entry(BOE)に記載されたGSTIN、IGST税額、貨物受領者がIMS・GSTR-2B・会計帳簿で一致しているかの確認が必要です。
輸入通関を業者任せにするのではなく、通関書類とIMSデータを照合するフローを構築することが重要です。
3.5月次プロセスへの組み込みが必要
IMSは月末にまとめて確認するだけでは不十分です。以下のような月次サイクルを確立することが望ましいです。
- 請求書と
納品の 受領確認 - 会計システムへの入力
- IMSで
請求書を 確認し、 Accept/Reject/Pendingを実行 - GSTR-2Bと
帳簿の照合 - 差異リストの
作成と 仕入先への 修正依頼 - GSTR-3Bでの
ITC計上額確定 - 未解決事項を
翌月に 繰り越し、 フォローアップ
IMSのアクションはGSTR-3B提出までに確定させる必要があるため、締め日前に余裕を持って作業を行うことが重要です。
4企業が取るべき対応
早急に確認すべき事項
・IMSダッシュボードを誰が確認しているかを決め、権限を付与します。
・GSTR-2Bと帳簿の照合を毎月実施し、差異リストを作成しているか確認します。
・Accept/Reject/Pendingの判断基準を文書化し、関連部門に周知します。
・仕入先に対する修正依頼のフローがあるか、責任者が誰かを明確にします。
・Bill of Entryと会計帳簿の照合を輸入担当者・経理担当者で分担します。
・GSTR-3B提出前に最終的なITC金額を誰が承認するか決めておきます。
中長期的に整備すべき事項
・IMS確認担当者、購買部門、物流部門、経理部門の連携フローを明確化し、月次チェックリストを整備します。
・主要仕入先のGSTコンプライアンス状況を評価する仕組みをベンダーマスターに組み込みます。
・ERPとGSTポータルのデータ照合ルールを定め、定期的に実施します。
・輸入取引に関するBOE照合プロセスや資料保存期間を整理します。
・外部会計事務所との役割分担を確認し、会社側の責任範囲を認識します。
IMSは会計事務所が操作するだけのツールではなく、会社自らが仕入先管理や受領確認を行うための仕組みです。これを活用することで、ITCの不整合を早期に発見し、税務リスクを低減できます。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.IMSでアクションを忘れた場合はどうなりますか?
A.放置した場合、自動的に『Deemed Accepted(みなし受領)』として扱われ、ITCが計上されます。意図しない税務リスクを避けるため、定期的な確認が必要です。
Q2.Excelベースのオフラインツールはなぜ必要ですか?
A.大量のインボイスを扱う企業や、通信環境が安定しない場所での照合作業を効率化するために提供されています。ポータルにアクセスせず一括更新が可能です。
5まとめ
Invoice Management Systemは、仕入税額控除の適正な取得を支援する仕組みであり、企業はこの機能を使って仕入先の申告内容と自社帳簿の差異を早期に把握できます。
IMSは単なるポータル操作ではなく、仕入先管理・購買承認・物流受領・会計処理といった部門横断的な業務プロセスに組み込んでこそ効果を発揮します。
日系企業は、GSTR-2Bだけを見て安心しないこと、仕入先の申告品質を管理すること、輸入のBOE照合を怠らないこと、月次でIMSにアクセスし差異を解消していくことが重要です。IMSの活用を通じて、ITCを失わずに健全なキャッシュフローを維持するための仕組みづくりが求められます。
東京
亀 圭良