皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の松波 優大です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「インド子会社からの配当送金 — 税務と送金実務」についてお話していこうと思います。
1.配当課税の現行体系
インド子会社から日本親会社へ配当を送金する場合、インド側で源泉税(TDS)が差し引かれてから送金される仕組みです。国内法上のTDS税率は非居住者向けに20%(+サーチャージ・cess)ですが、日印租税条約(DTAA)Article 10を適用すれば10%のフラットレートに下げられます。持株比率に関係なく一律10%という点も日印DTAAの特徴で、この差(10%)は配当額が大きくなるほど効いてきます。
DTAA 10%の適用に必要な書類は以下の2点です。
- TRC(Tax Residency Certificate):日本国税庁が発行する居住者証明。毎年更新が必要。
- Form 10F:TRCを補完するインド所定の申告書。Income-tax Rules 2025の改正により、TRCに情報が記載されている場合でも提出が義務化された。
書類が間に合わないと20%が控除されてしまいます。特に年度をまたぐ場合はTRCの更新忘れが多く、毎年4月の段階で確認しておくことをお勧めします。
なお、インドでのPAN取得要否および確定申告義務については、所得税法の解釈上、複数の見解があります。個別の状況に応じてインドの税務顧問に確認してください。
- 配当送金の実務手続き(FEMA)
配当の海外送金は経常取引(Current Account Transaction)であり、FEMAのもとでRBIの事前承認は不要です。ECBや増資のような事後報告義務も送金自体にはありません。インド子会社がAD Bank(指定銀行)経由で送金を依頼し、TDSを控除した残額を日本親会社に送金します。
実務上の流れは以下のとおりです。
- 取締役会で配当宣言決議(金額・基準日を決議)
- TDS計算・控除(DTAA 10%適用の場合はTRC・Form 10Fを事前取得)
- TDS納付(配当宣言月の翌月7日以内に政府に納付)
- Form 15CA(送金者によるオンライン申告)およびForm 15CB(CA資格者による証明書)の提出
- AD Bank経由で日本親会社に配当を送金
Form 15CAとForm 15CBはAD Bankへの依頼前に必要です。これを省略すると送金手続きが停止されます。15CBはCA・コスト会計士が内容を確認した上で発行し、DTAA適用の場合はその根拠も記載します。
III. Finance Act 2025・2026の重要改正① 株式買戻し(Buyback)の課税転換(TY 2026-27〜)
Finance Act 2025(2024年10月1日施行)により、株式買戻し(Buyback)で株主が受け取る対価はTY 2026-27以降、配当所得として課税されることになりました。従来は会社側に20%の買戻し税が課されていましたが、それが廃止され株主側の配当課税に転換しています。日本親会社がインド子会社の買戻しに応じる場合、配当と同様にDTAA Article 10の10%が適用できるかが実務上の検討課題となります。
② 配当収入への支払利子控除の廃止(TY 2026-27〜)
これまで配当収入に対してその取得のために要した借入利子を最大20%まで控除できていましたが、TY 2026-27(2026年4月以降)からこの控除が廃止されます。配当計画を立案する際はこの変更によるコスト増加も計算に入れてください。
配当送金の主要フローと必要書類チェックリスト
| フェーズ | アクション | 必要書類・対応 |
| 準備 | TRC更新 | 日本国税庁(毎年4月推奨) |
| 決議 | 取締役会 | 配当宣言決議 |
| 税務 | TDS控除 | DTAA 10%適用要件の確認 |
| 申告 | 送金前申告 | Form 15CA / 15CB |
| 送金 | 銀行送金 | AD Bank経由の実行 |
まとめ
インド子会社からの配当送金は、TRC・Form 10F・Form 15CA・Form 15CBという書類管理が肝です。これを怠ると本来10%で済む税負担が20%になり、後から還付手続きという余計な工数が発生します。
一番シンプルな対策は「TRCを毎年4月初めに更新し、配当宣言前に日本本社から取得しておく」ことです。宣言後に書類を集めようとしても、TDS控除のタイミングに間に合わないことがあります。
2026年4月以降はBuybackも配当課税に転換されています。インド子会社からの資金回収手段を検討する際は、配当・Buyback・清算のそれぞれの税コストを比べてから判断してください。
東京コンサルティングファーム インド拠点
松波 優大