皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の松波 優大です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「インド子会社の増資手続き : 普通株式による既存株主割当Rights Issueの実務 」についてお話していこうと思います。

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インド子会社への追加出資を検討する際、最初に検討されるのが普通株式(Equity Shares)による新株発行です。返済義務がない点で対外商業借入ECB(いわゆる親子ローン)より財務的負担が小さく、子会社の純資産を直接積み上げることができます。

日本親会社が唯一の既存株主である100%子会社の場合、Companies Act Section62(1)(a)に基づくRights Issue(既存株主割当)として処理できます。Rights Issueは株主総会の特別決議が不要で取締役会決議のみで進められるため、Section62(1)(c)のPreferential Allotment(優先的割当)より手続きがシンプルです。

今回は既存の授権資本枠(Authorized Share Capital)内での払込資本金の増資を前提としています。授権資本枠が不足している場合は、増資の実施前に定款変更(MOA変更)による授権資本枠の引き上げが別途必要です。その際は株主総会の特別決議およびForm SH-7のRoC届出(特別決議から30日以内)が求められます。

1 Companies Act 2013 Section62(1)(a) 取締役会決議(Board Resolution)

新株発行の条件(株数・発行価額・払込期限)を取締役会で決議します。Rights Issueは既存株主への按分割当であるため、株主総会の特別決議は不要です。取締役会決議のみで手続きを開始できます。

特別決議 不要
2 NDI Rules 2019 Rule 21 評価書の取得(Valuation Report)

FEMAのNDI Rules Rule 21に基づき、公認会計士(CA)・SEBI登録マーチャントバンカー・コスト会計士のいずれかが証明した評価書が必要です。発行価格は公正価値(Fair Value)以上でなければなりません。評価書の有効期間は作成日から90日間です。この90日以内に割当・FC-GPR提出まで完了させる必要があります。

有効期間 90日
3 Companies Act 2013 Section62(1)(a)(i) 募集通知(Letter of Offer)の発行

既存株主(日本親会社)に対してLetter of Offerを発送します。Letter of Offerは発行開始日の少なくとも3日前までに発送しなければなりません。承諾期間は原則7〜30日ですが、私有会社(Private Limited Company)で株主の90%以上が書面または電子方式で同意した場合は、この3日前の発送要件および7日の最低承諾期間をいずれも短縮できます。100%子会社では日本親会社のみが株主であるため、書面同意により両方の期間を実務的に短縮できます。

承諾期間 最短7日 (短縮可)
4 FEMA / AD Bank 応募・送金(Application & Remittance)

日本親会社がLetter of Offerに対して応募し、払込金をインド子会社の銀行口座にAD Bank経由で送金します。送金時にFIRC(Foreign Inward Remittance Certificate)またはDebit Adviceを取得・保管してください。FIRCはFC-GPR提出に必須です。

FIRC取得
5 Companies Act 2013 株式割当(Share Allotment)

取締役会が割当決議を行い、株主名簿(Register of Members)を更新します。割当日がFEMAおよびCompanies Actの期限の起算日となります。割当後は株券(物理的またはdemat形式)を発行します。

割当日が 起算日
6 FEMA / NDI Rules Form FC-GPR FC-GPR提出(割当後30日以内)

インド子会社がAD Bank経由でRBIのSMFポータルにForm FC-GPRを提出します。提出期限は株式割当日から30日以内です。この期限を超過するとFEMA違反となりコンパウンディング手続が必要になります。AD Bankの審査に数日かかることがあるため、割当直後に着手することを推奨します。

割当後 30日以内
7 Companies Act 2013 Form PAS-3 RoC届出(割当後30日以内)

Companies Act Section39(4)に基づき、株式割当後30日以内にForm PAS-3(Return of Allotment)をRoC(Registrar of Companies)に提出します。Rights IssueはSection42の私募規定の対象外であるため、提出期限は30日です。

割当後 30日以内

① Rights Issue vs Preferential Allotment日本親会社が唯一の株主である100%子会社の増資は、新株を既存株主(日本親会社)のみに割り当てるためRights Issue(Section62(1)(a))として処理できます。これにより特別決議・IBBIによる鑑定評価書が不要となり、手続きを大幅に簡素化できます。一方、第三者(新規投資家等)も引受人に加える場合は第三者割当増資Preferential Allotment(Section62(1)(c))が必要となり、特別決議・IBBI登録鑑定人の評価書・Section42の私募条件への準拠が求められます。

Companies Act上のRights Issueには発行価格の評価書は義務付けられていませんが、FEMAのNDI Rules Rule 21に基づく公正価値以上での発行は引き続き必要です。公認会計士(CA)・SEBI登録マーチャントバンカー・コスト会計士のいずれかによる評価書(有効期間90日)を取得してください。

③ Letter of Offerと承諾期間の短縮Rights Issueでは既存株主にLetter of Offerを発行し、発行開始日の3日前までに発送、承諾期間(原則7〜30日)を設けます。100%子会社では日本親会社が唯一の株主であるため、書面同意により3日前発送要件と7日の最低承諾期間をいずれも短縮できます。実務上は取締役会決議と同日に書面同意を取得し、応募・送金・割当を速やかに実行することでスケジュールをコンパクトにできます。

株式を割り当てた後、30日以内にAD Bank経由でRBIのSMFポータルにFC-GPRを提出します。よく見るのは「割当はしたが書類の準備に時間がかかって30日を超えてしまった」というケースです。AD Bankの審査に数日かかることもあるため、割当直後に提出作業を始めることが無難です。

100%日系子会社の増資はRights Issueとして処理できるため、特別決議や追加の鑑定評価書が不要でシンプルに進められます。ただし評価書の90日・FC-GPRの30日という期限は日本国内の増資にはない制約です。返済不要で財務基盤を固められる増資は長期的な事業投資や赤字補填に向いています。短期の運転資金需要には現地銀行融資の方が現実的です。資金の性格に合わせて使い分けてください。

Q.100%日本親会社からの増資でも評価書(Valuation Report)は必要ですか?

A.はい。インド会社法上は必須ではありませんが、FEMA(外為法)のNDI Rulesに基づき、公正価値以上での発行を証明するため、公認会計士等による評価書(有効期間90日)が必要です。

Q.FC-GPRの提出期限(30日)を過ぎた場合はどうなりますか?

A.株式割当から30日を過ぎるとFEMA違反となり、インド準備銀行(RBI)に対するコンパウンディング(遅延損害金支払・和解)手続きが必要となります。AD Bankの審査にも時間がかかるため、割当直後の速やかな対応が求められます。

インド法人での増資手続きや、FEMA(外為法)に基づくコンプライアンス対応、RBIへの各種申告でお困りの際は、東京コンサルティングファーム インド拠点までお気軽にご相談ください。

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松波 優大