皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループインド拠点の松波 優大です!

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さて、今回は「インドの税務」についてお話していこうと思います。

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日印包括的経済連携協定(India-Japan Comprehensive Economic Partnership Agreement:IJCEPA)は2011年8月1日に発効した二国間協定であり、物品・サービス・投資・知的財産・人の移動等を包括的に規律しています。物品貿易においては、日本からインドへの輸出品目の約94%について段階的な関税削減・撤廃が実施されています。そのため、自動車部品・機械・電子部品・化学品等、日系製造業が輸入する主要品目で特恵関税(一般税率より低い税率)が適用可能です。

ただし特恵関税の適用を受けるためには、「産品が日本原産である」ことを原産地規則(Rules of Origin)に従って立証する必要があります。この立証義務は2020年以降、日本側の輸出者だけでなくインド側の輸入者にも直接課されるようになっており(CAROTAR 2020)、日系インド子会社が主体的に対応しなければならない実務上の重要テーマとなっています。

なお、2026年3月には日印CEPA第7回合同委員会(Joint Committee Meeting)が東京で開催されており、原産地規則を含む協定の改善・見直しに向けた議論が継続中です。

IJCEPAのChapter 3(Rules of Origin)およびAnnex 2・3に定める品目別規則(Product Specific Rules:PSR)が、各産品の原産地判定基準を規定しています。原産地基準は以下の4類型から構成されており、品目ごとにいずれか(または複数の組み合わせ)が要求されます。

原産地基準 説明 適用例 実務上の留意点
完全取得品(WO) 日本国内で完全に生産・採取された産品(農産物・鉱物・天然資源等) 日本産農産物、日本で採掘された鉱物資源 実務上ほぼ対象外(工業製品には適用されない)
関税番号変更(CTC) 非原産材料が使用されていても、製造工程で関税番号が変更されること。品目別規則(PSR)で要求される変更の章・項・号単位が異なる 日本で鋼板(HSコード72章)から自動車部品(87章)を製造 PSRで「CTSHレベル(6桁)変更」か「CTHレベル(4桁)変更」かを確認要
付加価値基準(VA) 産品のFOB価格に占める原産地の付加価値が一定比率以上であること。IJCEPAでは原則として付加価値40%以上(QVC基準) FOB価格100のうち日本国内の材料費・加工費が40以上 関連者間取引では移転価格水準がVA計算に影響する点に注意
特定製造工程(SP) 一定の製造工程が行われたことで原産性を認める基準。化学品・繊維製品等で採用 化学的反応工程、紡績工程等 品目によりCTCとSPの選択が可能な場合がある

付加価値(QVC)基準の計算方法
IJCEPAにおける付加価値基準(Qualifying Value Content:QVC)の一般基準はFOB価格の35%以上(Article 29(1)(a))です。ただしAnnex 2の品目別規則(PSR)において個別品目に異なる閾値(40%・45%等)が設定されている場合はその数値が優先されます。実際に輸入する品目のPSRを確認することが必須です。計算式は以下のとおりです。

QVC(%)=(FOB価格 ー 非原産材料の価格)÷ FOB価格 × 100ここで「非原産材料の価格」とは、原産地基準を満たさない第三国産材料のCIF価格またはインボイス価格です。関連者間取引ではこの非原産材料の価格が移転価格によって設定されるため、移転価格水準の変動がQVC計算に直接影響します。

特に年度末の移転価格調整(year-end adjustment)が行われた場合、遡及的にQVCが閾値を下回るリスクがあります。

証明書の発行機関と種類
IJCEPAのもとで日本からインドへ輸出する場合、輸出者(日本本社)は日本商工会議所(JCCI)または経済産業省(METI)が発行するProof of Origin(旧称:Certificate of Origin)を取得する必要があります。2025年3月18日のCAROTAR改正により名称が「Certificate of Origin」から「Proof of Origin」に統一されましたが、IJCEPAにおいては引き続き商工会議所発行の証明書が主たる形式です。なお、2023年4月よりPDF形式での発行に移行しています(METI発表)。

証明書に記載すべき主要事項
Proof of Originには以下の情報が正確に記載されている必要があります。

Proof of Origin(IJCEPAフォーム)の主要記載事項

— 輸出者の名称・住所・国名

— 輸入者の名称・住所(インド)

— 産品の説明(インボイスの記載と実質的に同一であること)

— HSコード(6桁)

— 適用する原産地基準(A:完全取得品、またはB:実質的変更基準)

— FOB価格(付加価値基準適用時は必須)

— インボイス番号・日付

— インボイスが輸出者以外の第三者から発行されている場合(Back-to-Back Invoice)はその旨の記載

なお、Proof of Originの有効期間は発行日から12ヶ月です。年次更新が必要であり、有効期限切れの証明書を使用した輸入申告はFTA特恵税率が否認されます。

2020年9月21日に施行されたCAROTAR(Customs (Administration of Rules of Origin under Trade Agreements) Rules, 2020)は、FTA特恵関税を申告するインド側輸入者に対して、原産地基準の充足に関する情報を自ら保有・提出する義務を課しています。

関税当局から求められた場合、輸入者(インド子会社)は「Form I」に定める詳細情報(原産地基準の充足方法・非原産材料の内訳・QVC計算根拠等)を提出しなければなりません。Form IはBill of Entry提出時に添付する必要はありませんが、照会を受けた際に即座に提出できるよう準備しておく必要があります。

これは従来の「証明書があればよい」という理解からの大きな転換です。日本本社がProof of Originを取得していても、インド子会社がその根拠情報を保有していなければCAROTARの要件を満たせません。日本本社からの情報提供体制(製造工程・原材料構成・QVC計算書等)を平時から整備しておくことが不可欠です。なお、これらの情報はBill of Entry単位で最低5年間の保管義務があります。

CAROTAR 2020のもとでインド輸入者が保有すべき主な情報(Form I)

— 産品の生産に使用された原材料の名称・HSコード・価格・原産国

— QVC(付加価値)計算の根拠となる数値(FOB価格・非原産材料コスト等)

— 製造工程の概要(CTC基準適用時は変更の根拠となる工程)

— Proof of Originの写し(証明書番号・発行機関・有効期限)

— 輸出者・製造者の連絡先情報

2025年改正のポイント(Notification 14/2025・Circular 14/2025):Notification No. 14/2025-Customs(2025年3月18日)により「Certificate of Origin」が「Proof of Origin」に統一され、CBIC Circular No. 14/2025(2025年4月21日)により実務手続が明確化されました。

Proof of Originは指定機関発行の証明書と適格な輸出者による自己申告の両方を包含しますが、IJCEPAにおいてはJCCIが引き続き指定発行機関であり、現行では自己申告は認められていません。また、原産地の検証請求はすべてFTA Cell、Directorate of International Customs(DIC)に一元化されました。

日印CEPAは、日系企業がインドに製品・部品を輸入する際のコスト競争力を高める有力な手段です。特に関税率の高い品目(自動車部品・機械・化学品等)では、特恵関税の活用による経済効果は大きくなります。しかし「証明書さえあれば使える」という時代はすでに終わっており、CAROTAR 2020以降はインド側輸入者が主体的に原産地の根拠情報を保有・管理する義務を負っています。

関連者間取引においては、移転価格と付加価値(QVC)計算の整合性が特に重要なリスク領域です。移転価格のyear-end adjustmentによってQVCが遡及的に変動し、特恵関税の否認・追徴関税につながるリスクがあります。税務チームと関税チームが連携して、年度を通じたQVC水準のモニタリングを行うことが必要です。

また、日本本社がProof of Originを取得する際には、インボイスとの商品説明の一致・PSRの充足確認・QVC計算書の整備を徹底してください。インド側は当局からいつ照会を受けても対応できるよう、Form Iに必要な情報を日本本社から取得し保管しておく体制を構築することが、FTA活用を持続可能なものにするための最低限の条件です。

Q. インドへの輸出で特恵関税を使う場合、証明書は誰が発行しますか?
A. 日印CEPAにおいては、原則として日本商工会議所(JCCI)が発給するProof of Origin(旧:原産地証明書)を取得する必要があります。

Q. CAROTAR 2020の要件を満たさないとどうなりますか?
A. 特恵税率の適用が否認され、一般税率との差額およびペナルティ(追徴関税)が輸入者側に課されるリスクがあります。

東京コンサルティングファーム インド拠点
松波 優大