カンボジア移転価格税制 その6

税務

皆様こんにちは、カンボジア駐在員の西山です。

今回は「カンボジア移転価格税制 その6」についてお話しします。

これまで5回に渡りお送りしてきたカンボジア移転価格税制についても、これで最終回となります。今週は、カンボジアにおける移転価格文書の要件を、ASEAN諸国と比較してお話しします。

 

日本を含むグローバルでの移転価格税制の動向として、移転価格文書化の3層構造アプローチが挙げられ、以下の3種類の文書が必要となります。

 

国別報告書(CbCR)

マスターファイル

ローカルファイル

 

国別報告書とマスターファイルは通常親会社が用意するものとなります。カンボジアにおいては、現在のところローカルファイルのみの作成が求められていますが、今後国別報告書とマスターファイルの提出を求められる可能性もあります。

 

カンボジアにおけるローカルファイルの作成に当たり、現在のところまだ細かい規定などもありませんが、ASEAN諸国の要件と比較することによりある程度は予測することができます。

 

・文書化の金額等要件

カンボジアにおいては明示がありません(取引額や会社規模等による免除規定なし)。一方、シンガポール等免除規定のある国もあります(全関連者からの棚卸資産の購入販売が15百万SGD以上の場合等に文書化義務)。

 

・言語

カンボジアにおいては明示がありませんが、ベトナム等現地語が求められる国もあるため、今後クメール語での作成が必要となる可能性もあります。

 

・準備期限

カンボジアにおいては明示がありませんが、フィリピン等税務申告書の提出期限までに文書化義務のある国もあります。

 

・適用初年度

カンボジアにおいては明示がありませんが、マレーシアでは2012年の移転価格税制導入時に2009年から遡及適用されている例もあります。カンボジアでの省令発効日が2017年10月10日で、過去に遡って適用される可能性も十分にあり得ます。

 

このように、不明瞭な部分の多いカンボジア移転価格税制ですが、現状でも文書を準備することにより、リスクの低減が可能となります。

 

移転価格調査の際、移転価格文書がなければ、税務当局のシークレットコンパラブルの使用による推定課税のリスクが非常に高くなります。税務当局しか知りえない他社の情報を元に課税が行われるため、反論も極めて難しくなります。

 

一方、移転価格文書を用意することで、独立企業間価格等を説明することができ、推定課税を受けるリスクを軽減できます。

 

 

これまで話してきた通り、カンボジアにおける移転価格税制の動向にはまだまだ不明瞭な部分も多くありますが、動き出していることは事実です。特に海外関連会社と取引のある企業にとっては、無視できないリスクとなります。まずは関連会社とどれだけ取引があるかをみてリスクの確認を行い、その上で移転価格文書を準備し、リスク対策を行うことが重要となります。

 

移転価格税制についてのご質問、ご要望等ありましたら、お気軽にお問い合わせください。

今週は以上になります。

 

西山 翔太郎

 

 

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