繰越欠損金の控除額における問題点②

税務

こんにちは、カンボジア駐在員の市坪です。
今回は前回に引き続き、繰越欠損金における2つのポイントを見ていきたいと思います。

①所有者の変更
利潤税プラカス9.5によると、企業の所有者の変更では、前所有者の時に負った繰越欠損金を引継ぐことができません。
プラカスでは以下のように記載されています。
「所有者を変更した場合、前の所有者が維持していた欠損金は、新たな所有者の利益に対して控除することができない。一般的に所有者の変更は、企業が売却された場合、所有者が死亡した場合、死亡者の相続人によって引き継がれた場合に行われる。」

以上のようにプラカスでは定めていますが、実務において問題が残ります。

1. もし公的に株式が取引される場合、カンボジアの企業は欠損金を繰越すことがほとんど不可能になる。
2. もしカンボジアに支店をもつ日本のグループが第三者に買収された場合、このカンボジア支店の所有者が間接的に変更されることとなるが、その場合の規定はない。

②企業の変更
繰越欠損金は企業がある事業を止めて別の新たな事業を始める時(所有者は変更せずそのまま)にもリスクを負います。

例えば、縫製事業を行なうある企業に欠損金が発生したとします。その何年後かにその企業が縫製事業をやめ、不動産事業を新たに始めたとします。その企業は今や土地の売買で多額な利益を得ています。通常、土地の取引などから生じたキャピタルゲインに係る法人所得を計算する過程で、縫製事業での繰越欠損金を考慮します。

しかし税務局の見解は、事業を変えた場合には、以前の事業で発生した欠損金を新たな事業の利益に対して控除することができないとしています。

また、利潤税のプラカス9.5には以下のように書かれています。
「事業内容に変更があった場合、その企業の古い事業は中断され、新しい企業を創設したと同様に考えられ、以前の事業の時に生じた欠損金は新たな事業の益金に対して繰越し控除を行うことができない」

実際にプラカスは、事業内容の変更があった際に欠損金が繰り越せないということしか明記していないため、企業が両方の事業を同時に行っている場合にはどうなるか定かではありません。

また、もう一つの疑問は、いつ“新たな事業”を開始したとみなすのかということです。もし古い事業と新たな事業が似ていたらどうなるのでしょうか。ある印刷会社が本の出版ではなく、オフセット印刷と資材印刷のデザインに事業変更したといったような場合、もしくは木のテーブル製造から鋼鉄テーブルの製造に変更したといったような場合が例として想定されます。

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