■原価計算を導入しないことによる問題 ■カンボジア企業経営への心得

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■原価計算を導入しないことによる問題

 

皆様こんにちは。東京コンサルティングファームカンボジアの公認会計士の熊谷です。今回は原価計算についての事例をご紹介したいと思います。

 

 

株式会社青木工業は3種類の木工品を受注生産で製造している。木工品はすべて同じ材料を使っており、弟子の5人が製造している。製品の種類も少ないことに加え、個人経営の少人数経営であり、費用と手間も考えて、原価計算システムを導入しないこととした。価格に関しては市場の状況や当事業所のブランド力を考え、A商品を3,300円、B商品7,450円、C商品を3,000円と設定した。10月はA製品を500個、B製品を800個、C製品を300個受注し、製造・売上を行った。10月の全体の利益は400万円と会計から計算できたのでまずまずと判断し、このままの状態を維持しようと考えた。この考え方が適切か否か。

 

全体で見ると会計上の利益が上がっており、問題ないように見えるが、原価計算を行ってないので、各製品別の収益性が見えない。実際、他の情報を調べ上げると下記のような情報を取得することができた。

 

販売台数    販売価格

A製品 500  3,300円

B製品  800  7,450円

C製品  300  3,000円

 

各製品に要する材料・労働時間

A製品 材料2キロ  0.2時間の労働   

B製品 材料1キロ  0.5時間の労働

C製品 材料4キロ  1時間の労働

 

費用単価

材料1キロ当たり  500円

労働1時間当たり 1,500円

 

 

製造間接費

その他経費 月1,810,000円【固定費】

 

 

各製品の原価(変動費)を計算すると

A製品 1,300円

B製品 1,250円

C製品 3,500円

となることがわかる。販売価格と比較するとC製品は3,000円であるため、C製品は赤字となっていることがわかる。今の価格では、C製品の製造・売上は利益の金額を圧縮するだけの状況であり、C製品を製造しないことを検討することや価格の再設定を検討する必要があることがわかる。製造間接費に関しては今回はすべて固定費のため、製品の製造継続・廃止の意思決定には関与しない。なお、製造間接費も実際の原価の流れに即して製品に配賦するなら、最終的に適切な製品原価が算定できる。配賦基準は慎重に選択する必要がある。

 

 

 

以上の例です。理解していただけたでしょうか。製品別の原価計算を行っていないならば、特定の製品の製造が業績を悪化させているといった状況がまるで見えないのです。ですから、製造業は原価計算を導入し、業績を注視し、それに即して意思決定を行っていくことにより、業績を改善していく努力をすることが重要といえます。

次回は原価計算を導入していながらも、計算方法が正確ではないために起きる事柄について事例を踏まえてお伝えしたいと思います。

 

以上です。

 

■カンボジア企業経営への心得

皆様こんにちは、カンボジア駐在員の澤柳です。

今回も前回に続き会計リスクについてお話しいたします。

 

会計リスクに対応するためには、仕組みの構築、そしてその仕組みの実行力をあげることが必要です。

それでは、仕組みの構築はどのように行えばよいのでしょうか。弊社で行っている事例として、仕組みの構築のプロセスは大まかに以下の通りとなります。

 

  1. 行動規範、経理規定、手順書、書類様式の整備。
  2. 従業員への定期的な教育、研修による意識レベルでの浸透。
  3. 経理プロセスの認識、経理担当者の役割と責任の明確化。
  4. プロセスに紐付いたリスクの評価。(取引の性質や勘定科目の性質に応じたリスク)。
  5. リスクに対応したコントロールの評価。
  6. 経理プロセスの再評価、改善。

 

まずはじめに、仕組みは全体の仕組みと細かな仕組みに分かれます。

全体の仕組みは、経営理念からブレークダウンされた行動規範、経理規定、手順書、そしてフォームや様式です。これらの大枠となる仕組みは、最低限企業として準備しておき、定期的な教育・研修を通じて経理スタッフおよび関連部署の意識レベルまで浸透させておく必要があります。

 

細かな仕組みは、日時的業務レベルの仕組みです。経理規定や手順書の作成過程で確認される経理プロセスの網羅的把握をまずはじめに行う必要があります。

そして、経理プロセスと担当者の割り振り、担当者の役割と責任の明確化を行うことで、各プロセスを実行できるレベルまでもっていきます。

最後に、最も重要な仕組みとして各プロセスに紐付いたリスク(例:取引ごとに異なるリスク、勘定科目ごとに異なるリスク)を認識し、そのリスクのコントロールを決定します。

これで細かな仕組みが完成ですが、あくまでも仕組みであり、定期的なメンテナンスや情報のアップデートが必要になります。これらを実施し、プロセス、リスク、コントロールの再評価を行い、適切な仕組みを維持することが必要です。

 

少し抽象的で分かり難いものもありますので、以下に仕入れに関する仕組みの構築事例を見てみましょう。

 

仕入れを行うときのプロセスとしては、①材料発注のPO送付、②倉庫に到着した材料とPOとの確認、そして③到着した材料と請求書内容との照合を行うことが一般的です。そこで把握されたプロセスに担当者を割り振り、役割と責任を明確にします。

最後に、各リスクを把握しコントロールを行います。例えば、POと入庫された在庫が異なるリスクがあり、このリスクをコントロールするために入庫された材料を2チームでカウント、そのカウント結果とPOの付け合わせを倉庫担当者および経理担当者の2部門で行う、など手続きが実施できます。

 

 

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