ホーチミン事務所の嶋航です。
前回に引き続き、個人所得税について、見ていきます。
ベトナムにおいて、下記の3つの条件の内、いずれかを満たした場合、居住者となります。
・滞在日数が183日以上
・定常的な住居を有する
・90日以上居所を有する
※満たさない場合は非居住者です。
「居住者」となった場合、ベトナム国内だけでなく、日本を含む全世界の所得が個人所得税の課税対象になります。日本から支給される給与、給与以外で発生する不動産賃貸料などの所得も課税対象となります。
居住者 | 非居住者 | |
課税所得の範囲 | 全世界で発生した所得 | ベトナム国内で発生した所得 |
給与所得の税率 | (給与所得-※各種控除) | 給与所得の20% |
に累進課税を適用する |
※基礎控除として、年間4800万ドン、扶養控除として、一人当たり、1920万ドンの控除が可能
一方、日本における所得税法上の居住者定義は、国内に住所を有する、または現在まで引き継いで1年以上居所を有する個人を居住者として定義しています。このことから、ベトナムと日本の両国で二重に課税される可能性が出てきます。
住所又は居所を | 永住の | 永住の | |||
有する期間 | 意思あり | 意思なし | |||
住所あり | 5年超 | 居住者 | 永住者 | ||
5年以下 | 非永住者 | ||||
住所 | 居所 | 5年超 | |||
なし | あり | 1年以上5年以下 | 非永住者 | ||
1年未満 | 非居住者 | ||||
居所 | - | ||||
なし |
ベトナムと日本の両国で課税がされた場合、ベトナムの確定申告において外国税額控除の規定により、二重に課税されている分の税額を調整することができます。このような二重課税の問題を避けるため、日越租税条約第4条第2項では、どちらの国の居住者に該当するかを下記の順序で決めることができます。
① 恒久的住居が所在する締約国2の居住者とみなす。恒久的住居が双方の締約国内に存在する場合には、人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある国)の居住者とみなす。
② 重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又は使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。
③ 常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はいずれの締約国内にも有しない場合には、国籍を有する締約国の居住者とみなす。
④ 双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により本件を解決する。
さらに日本で居住者と認められるためには、日本の税務当局から発行される居住証明書をベトナム税務当局に提出し、ベトナム居住者でないことを説明する必要があります。
このようにベトナムに駐在される方、出張者の方には、ベトナム国内の法律のみならず日越租税条約の内容も把握しておくことが大切です。