皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループベトナム拠点の小瀬悠也です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「ベトナム駐在員事務所の資金管理:閉鎖時に顕在化するコンプライアンス・リスク」についてお話していこうと思います。
目次
ベトナム駐在員事務所の資金管理:閉鎖時に顕在化するコンプライアンス・リスク
こんにちは、ベトナム、ハノイ支部の小瀬です。
ベトナムにおける市場調査や情報収集の拠点として、駐在員事務所は多くの企業にとって有効な選択肢です。しかし、その法的な活動範囲には厳格な制限があり、これを遵守しない場合、運営中は表面化しなくとも、最終的な事務所閉鎖の段階で深刻な問題を引き起こす可能性があります。 本稿では、ベトナム駐在員事務所の法的な活動範囲を再確認するとともに、実務上見過ごされがちなコンプライアンス上のリスク、特に事務所閉鎖手続きにおいて顕在化する重大な問題点について、専門的な見地から解説します。
1.駐在員事務所の法的な活動範囲
ベトナムの商法上、駐在員事務所は利益の創出を目的とした事業拠点ではなく、あくまで親会社のための「連絡・市場調査・事業機会の促進等を目的とした拠点(コストセンター)」として定義されています。
- 許可される活動(非収益活動)
- 親会社の事業拠点としての連絡業務
- 市場調査、および事業機会のモニタリング・促進
- 親会社の製品・サービスのプロモーション
- 禁止される活動(収益活動)
- 製品の直接販売、サービスの直接提供
- ベトナム国内における契約の締結、署名(親会社名義の契約サポートは除く)
- 請求書の発行、および顧客からの代金受領
この法的原則により、駐在員事務所の銀行口座における資金の流れは、親会社からの運営資金の「入金」と、現地での認可された活動に伴う経費の「出金」のみで構成されることが前提となります。
2. 運営段階における潜在的リスクの看過
実務上、駐在員事務所が法で認められていない商業活動を行い、現地で対価を受領してしまう事例が見受けられます。こうした違反行為が運営中に発覚しにくい背景には、税務当局の通常監査が主に駐在員の「個人所得税(PIT)」の申告・納付の適正性に焦点を当てる傾向があるためです。何かしらの理由により税務調査でもはいらなければ、口座の入金元まで詳細に調査されることは稀であり、これがコンプライアンス違反の状態を継続させてしまう一因となり得ます。
3. コンプライアンス違反が顕在化する事務所閉鎖手続き
潜在的なリスクが現実の損失へと変わるのは、事務所の役割を終え、閉鎖・清算手続きを行う最終段階です。特に、銀行口座を解約し、残余資金を日本の親会社へ送金する際に、重大な問題が発生します。
銀行が担う資金源泉の確認義務
ベトナムでは、国外への資金送金は国家銀行(中央銀行)の法令により厳格に管理されています。商業銀行は、この法令を遵守するため、送金資金の源泉が合法的なものであるかを確認する法的義務を負っています。駐在員事務所が閉鎖に伴う資金還流を試みる際、銀行は口座の全取引履歴を精査し、その資金が「親会社から正規に送金された運営資金」であるかを検証します。
違反が発覚した場合の帰結
この検証過程で、親会社以外からの入金(禁止されている収益活動による入金)が確認された場合、銀行はその資金を「違法な収益」と判断します。その結果、以下の措置が講じられます。
- 国外送金の拒否(資金の「塩漬け」) 銀行は、違法な収益と見なされた資金の親会社への送金を、法に基づき拒否します。これにより、当該資金はベトナム国外へ移転することができなくなり、事実上「塩漬け」の状態となります。
- 当局への報告義務 銀行は、外貨管理法規に基づき、当該取引を国家銀行や税務当局へ報告する可能性があります。
- 税務調査の誘発と追徴課税 報告を受けた税務当局が、事務所の過去の活動に対する再調査を行う可能性があります。その結果、違法な収益に対して法人所得税が課され、延滞税や罰金が科されるリスクも想定されます。
結論と推奨事項
駐在員事務所の不適切な収益活動における最大のリスクは、運営中の罰金よりも、最終的に事業の成果である収益資金を一切本国に還流できなくなるという点にあります。親会社の代わりに代金を一時的に代理受領するといった行為も、同様のリスクを伴うと認識すべきです。
以上の通り、駐在員事務所の運営にあたっては、その活動を法で認められた範囲に厳格に限定し、コンプライアンスを徹底することが、企業の資産保全と持続的なベトナム事業の基盤となることを、改めて申し上げる次第です。何か質問等ございましたら、ご質問いただけますと幸いです。
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