ベトナムに「土地所有権」はない?

皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループベトナム拠点の下田琴美です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「ベトナムに「土地所有権」はない? 」についてお話していこうと思います。

 

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ベトナムに「土地所有権」はない? 

土地使用権(LUR)を日本の借地権と比較して解説 

 本稿では、ベトナムへの進出を検討されている企業向けに、ベトナムにおける「借地権」の基本的な考え方を解説します。 

 ベトナムでは個人も企業も土地を「所有」することはできません。では、工場や事務所はどのように設置するのでしょうか。そのカギとなるのが「土地使用権(Land Use Right / LUR)」です。 

 本稿では、日本の土地・借地権制度と比較しながら、ベトナムのLURの仕組みを解説します。 

1. 日本の土地制度:おさらい 

 日本では、土地は個人や企業が「所有権」を持つことができます。土地の上に建物を建て、その土地ごと売買・相続することが可能であり、他人の土地を借りて建物を建てる「借地権」という制度も整備されています。 

借地権には「普通借地権」(更新可能)と「定期借地権」(期間満了で終了)があり、権利関係は明確に保護されています。日本の制度に慣れた担当者がベトナムの制度を見た場合、相当のギャップを感じることになるでしょう。 

2. ベトナムの土地制度:全土地は国家のもの

 ベトナムは社会主義国家であるため、憲法および2024年土地法(Land Law 2024)により「すべての土地は国家(全人民)が所有する」と定められています。 

つまり、個人・企業・外資系企業を問わず、土地を「買って所有する」ことはできません。その代わりに、国家から土地の「使用権」を一定期間付与されるというのが、ベトナムの土地制度の基本構造です。 

この使用権が「土地使用権」であり、証明書として発行されるのが「土地使用権証書」です。 

3. 日本 vs ベトナム:比較表 

 両国の土地制度を主要項目で比較すると、以下のとおりです。 

 

項目  日本  ベトナム 
土地の所有  個人・企業が所有権を持てる  全土地は国家所有。個人・企業は「使用権」のみ 
権利の種類  所有権 / 借地権  土地使用権のみ 
期間  所有権は無期限。定期借地権は50年等  目的により50〜70年 
更新  定期借地権は原則更新なし  更新申請可能 
外国企業の制限  原則なし  LURの取得可。ただし条件あり 
担保設定  土地・建物ともに可能  LURを担保に設定可 
証書  登記簿謄本  土地使用権証書 

4. 日本企業が特に注意すべきポイント 

① 「更新できる」は保証ではない 

 製造業で工業団地に進出する場合、多くの案件では土地使用期間は50年前後となる。ただし、これは案件や工業団地の残存運営期間によって異なる場合があります。また、期間満了後は更新申請が可能ですが、日本の普通借地権のように当然に更新されるわけではありません。 

更新は、法令適合性、土地利用計画との整合性 、当局の審査 などを踏まえて判断されます。そのため、長期事業計画を立てる際には、この点を十分考慮する必要があります。 

② M&Aや会社売却時に権利移転が発生する 

 会社を売却・合併する際、LURも権利移転の対象となります。案件によっては、権利移転手続 、当局への届出 、承認取得 が必要となる場合があります。日本のM&Aとは異なる煩雑さを伴う点に留意が必要です。 

③ 担保設定は可能だが条件あり 

 LURをベトナムの金融機関への融資担保に設定することは可能です。ただし、外資系企業の場合は取得形態、支払方法、金融機関などによって制約が生じることがあります。資金調達計画の段階で事前に確認しておくことをお勧めします。 

④ 2026年以降は土地価格制度にも注目 

 2026年以降、Land Law 2024に基づく新たな土地価格算定制度の本格運用が進んでいます。 

これにより、工業団地賃料、土地評価額、補償額 、担保評価などが市場実勢をより反映する方向に変化しており、企業コストへ影響を与える可能性があります。 

5. まとめ 

 ベトナムの土地制度は、日本とは根本的に異なります。「所有できない」という制約はあるものの、LURの仕組みを正しく理解すれば、工場・オフィスの設置から長期事業計画まで、十分に対応が可能です。 重要なのは、「なんとなく土地を借りている」ではなく、LURの期間・更新条件・権利移転の可否、担保設定の範囲を契約段階でしっかり確認しておくことが重要です。 

 

次回は工業団地の借地権について解説します。 

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