タイのGDPと経済成長率について

今回はタイのGDPと経済成長率についてお話します。

タイは、幾度とない困難な状況に直面しつつも、20世紀後半から 21世紀にかけて長期にわたり経済成長を遂げてきた国です。
1997 年にタイを震源としたアジア通貨危機のために、1998年のGDP成 長率はマイナス10%にまで落ち込みましたが、翌1999年には4.4% に持ち直しています。
2006年以降の政情不安定な時期においても、 年率数パーセントの成長率を維持してきました。

また、2009年には 世界金融危機の影響を受けて2.3%のマイナス成長となりましたが、 翌年には7.8%とV字回復を果たしています。

そして、2011年は、上期には東日本大震災の影響による日本からの部品供給が滞り、製造業の稼働率が低下するといった事態が起き、
下期には、チャオプラヤ川の大洪水が起き、アユタヤからバンコクま での広大な地域が甚大な被害を受けました。
この大洪水で、電気・電子機器や自動車産業など多くの日系企業が集積するアユタヤ周辺のサ ハ・ラタナナコン工業団地やロジャナエ工業団地から、
バンコクに近 いバンカディ工業地帯まで、7つの工業地帯が浸水し、日系企業449社を含む804社が浸水しました。
世界銀行の試算によると、洪水による被害額・損失額合計は1兆 4,250億バーツにも上り、
東日本大震災、阪神・淡路大震災、アメ リカのハリケーン・カトリーナなどに次ぐ規模とされています。
特に製造業や農業は大きな打撃を受けました。これらの影響で2011年の 成長率は0.1%、すなわちほぼゼロ成長でした。

 

しかし、洪水がおさまった後、懸命の排水と復旧作業により生産は着実に回復を始めました。
元々洪水氾濫地帯に、工業団地が立地していたというリスクを分散すべく、この地域での稼働率を見直す企業もあり、
負の側面が払拭されたわけではありませんが、一応の収拾が ついたものと言えるでしょう。

 

タイ経済は、全体的には復調ぶりを見せており、たとえば、主要産業である自動車産業は、2012年3月に生産台数の過去最高を記録し、その後も好調を維持しています。
欧州財政危機や、中国経済の減速など、複数のマイナス要因がからんだ状況ながらも、タイ経済は堅調との見方が大勢です。
2014年は政治的混乱によって景気の低 迷や投資認可手続の遅れが生じ、実質GDP成長率は0.81%となり、2013年の2.71%を下回りました。

しかし、タイ国家経済社会開発 庁(NESDB)によると2015年は世界経済の回復に伴い、輸出の増加などでGDP成長率は2.82%まで上昇しました。
2016年のタイ経済は実質GDP成長率が3.24%と緩やかな回復に とどまりました。
世界経済の減速などを背景に財の輸出が伸び悩み、 また輸出の停滞や設備の過剰感から民間投資が減少、民間最終消費支 出も力強さに欠けるものとなりました。

一方、政府の景気刺激策による公共投資および政府最終消費支出はGDPのプラスに寄与しました。

 

なお、国家経済社会開発委員会(NESDB)は2016年の成長率を 3.4%、2017年4.0%、2018年4.1%と発表しています。

以上のように、経済成長率は鈍化傾向にあります。特に経済発展に伴う賃金の上昇と安価 な労働力が豊富に存在する近隣途上国の追い上げによって、
これまでタイの発展を支えた労働集約的産業の優位性が失われつつあり、今後の成長には産業構造の高度化が必要と考えられます。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

なお、本記事は2019年8月時点の内容となっております。最新情報やより詳細な情報は弊社サービスのWiki Investmentをご利用頂きたいと思います。

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2019-10-23

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