シンガポールにおける親子ローン、グループ間ローンに対する課税

税務

TCGのノウハウツールWiki Investmentの中から、シンガポールにおける税務のポイントを公開します。

 

低税率のために、財務上の本拠地としてシンガポールに統括拠点を設け、そこからグループ内の会社に融資を行うことは、グループ外の金融機関から融資を受けるような場合と比較して、効率のよい資金運用となります。

 

しかし、シンガポールからでもすべての国と自由にお金の出し入れができるわけではなく、またローンを行うにも税務上の留意点があります。

 

今回は、シンガポールと他国との間でグループ間ローンを組むことを念頭に、税務上の扱いについてお伝えします。



グループ間ローンの原則

 

シンガポールに財務上の統括会社を設ける場合、他国にあるグループ内会社とローンを組むことが考えられます。

 

多くの日系企業は、日本からシンガポールに融資を行う形で資金を投入し、そこからまた他国のグループ会社対して資金調達する形でローンを組みます。

 

いずれも、ローン契約書を締結して期間を定め、適当な利率で設定して組むことが求められます。

 

融資先の会社の資金繰りを考え、利息も考慮した形で返済のタイミング、金額などを決めていくことになりますが、利息の支払いに際しては各国で源泉徴収税が発生することが一般的であるため、この点にも留意が必要です。

 

ただし、こうした税務上の取扱は、専ら各国で独立した法人としての取扱を受けるため、グループ企業であることや、出資比率などによる影響は考慮する必要はありません。

 

また、グループ間ではあっても、ローンは契約書通りに返金される必要があります。

期限内に返金ができない場合には、新たなローン契約を締結して、返済できなかった金額を新たに借り受けたことにする必要があります。



シンガポールへの資金調達

 

日本など親会社からシンガポールに資金調達する場合、シンガポールから日本へ利息の支払いが発生します。

 

この利息は、日本法人がシンガポール国内で上げた収益と考えられるため、シンガポール法人が日本法人の代わりに納税を行う、源泉徴収税(Withholding Tax)が発生します。

 

シンガポールのローン利息に対する源泉徴収税率は15%ですが、日星租税条約が適用される場合、10%の軽減税率が適用されます。

 

租税条約適用のためには、日本の国税庁が押印した該当期間の居住者証明(Certificate of Residence:COR)をシンガポール税務当局IRASに提出する必要があります。



シンガポールからの資金調達

 

シンガポールから他国への資金調達をグループ間ローンで行う場合、その利息には当該他国で源泉徴収税が課せられます。

 

シンガポールは多くの国との間で租税条約を締結しているため、ローン利息に対する源泉徴収税には概ね10%の軽減税率が適用されます。

 

一方、シンガポール法人は、このローン利息を受け取った場合、シンガポール国内でも法人所得税として課税されることになります。

 

しかし、外国税額控除(Foreign Tax Credit)として、すでに当該他国で支払われた10%の源泉徴収税額を控除することができるため、このローン利息に対して課されるのは17%の法人所得税のうち7%分だけということになります。



資金還流を行うまでは非課税

 

ローン利息に関して、シンガポールの税法上、特別に非課税となるのが、資金還流を行わない場合です。

 

実際には、源泉徴収税自体も送金を行う場合にのみ課税される場合が多いのですが、同様に、シンガポール法人がローンを行っている融資先の法人から利息分の還流を受けなかった場合、この金額は受取利息として損益計算書に算入することになる一方で、税務上は非課税の対応となります。

 

最終的にローンの返済が行われ、利息も還流されることになった際、初めて全額が益金として認識され、課税されることになります。

 

タイミングがずれるだけで、基本的には課税所得となることに注意が必要です。

 

以上、シンガポールとグループ会社間でよく行われるローンについて、税務上の取扱についてお伝えしました。

 

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