進出後のシミュレーション

労務

こんにちは、フィリピン駐在員の井本です。

様々な企業様を回らせていただいて、それぞれ個別具体的な問題を伺います。その中でも統計がないかと探したところ、JETROさんで次のような基礎情報がありました。

経営上の問題点(進出日系企業アンケート)

1位 現地通貨の対ドル為替レートの変動 55.4%
2位 原材料・部品の現地調達の難しさ 54.7%
3位 現地人材の能力・意識 50.9%
4位 従業員の賃金上昇 48.4%
5位 調達コストの上昇 46.7%

出所:在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2011年度)

1、2、5位については、外部要因もあり自社内だけではなかなかどうにかなる問題とは言いがたい部分もあります。よって、内部要因を解決するとなると、3、4位の従業員に関わる部分になるのではないかと思います。実務寄りの話になりますが、具体的な例をいくつかご紹介したいと思います。

まず、人々の意識という部分について、私も失敗談がありますが、フィリピンは俗にDouble Tongueといわれることがあります。(全員が全員ではありません。あくまで一般論)「やります、できます」と述べておきながら、納期になっても何も報告がない、という経験をする日本人は多いようです。非常に笑顔で、快く話を聞いてくれるため、信頼してしまいがちです。ただし、やはりここは、フィリピンであるということをくれぐれも忘れないことです。例え、提携先や取引先がしっかり納期を守っていたとしても、そこで完結せず政府なども関係してくるときはなおさらです。したがって、できることは限られてはいますが、常に最悪の状況を想定しながらことを運ぶという点に尽きると思います。
次に賃金上昇についてですが、以前ご紹介したように、基本的にフィリピンでは最低賃金で雇用が可能です。しかし、OFW(出稼ぎ労働者)が国策の1つであり、多くの優秀な方は国外へ出てしまうという現実もあります。そこへの対応は次の2つを伺いました。1つは、福利厚生などを手厚くするということです。この点、給与に反映させてはどうか、と検討もできるのですが、家族間での絆を重要視する文化では、給与が増えても結局、それらを家族や親戚と共有してしまい、本人の可処分所得は変わらないという状況も生まれてきて、うまく本人のインセンティブをコントロールできません。したがって、長期的に利益を生める福利厚生(年金制度など)で会社につなぎとめるという考え方です。
もう1つは、シンガポール、香港など同社の他国支店で働く機会を提供するというものです。英語も使え、せっかく自社で育てたのに、数年で辞めてしまう。辞めるだけならまだしも、ライバル会社へ移ってしまう、というのは大きなロスだと思われます。フィリピン以外にも進出されている企業様への対応策になりますが、このように他国へ配置させることで企業と雇用者のWin-Winが成立します。これもまた1つの方法かと思われます。

これらが必ずしも正解ではないかもしれませんが、日本ではこうだから、日本の慣習ではこれが正解だという決め付けはよくないのかもしれないということを述べたかったのでこのたびのトピックを出しました。どの企業様も悪戦苦闘されています。この悪戦苦闘の先に明るい未来があるのだと信じていますし、力添えできればと思っています。今後とも宜しくお願いします。

以上

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