こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。
【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.112<フィリピン移転価格税制に関連する新ルール発表!-Part.7>
今、最もホットなフィリピン移転価格税制をテーマに記載していきます。
今回は、「Form1709の未対応に伴うペナルティーとリスク」についてです。
新フォーム1709、移転価格文書を含む添付書類を提出しなかった場合はどうなるでしょうか。
ペナルティーについては、下記のように定められています。
<合理的な理由があり、故意の怠慢によるものではない場合>
税法250条に従い、1,000ペソ以上25,000ペソ以下のペナルティが科せられる。
<違反が繰り返された場合>
税法274条に従い、最大金額(25,000ペソ)のペナルティが科せられる。
<当局からの召喚状を受領したにもかかわらず、なお違反した場合>
税法266条に従い、パートナー・社長・ゼネラルマネジャー・支店長・財務役・違反の責任を負う従業員等は、5,000ペソ以上10,000ペソ以下の罰金、および1年以上2年以下の懲役が科せられる。
上記を見る限りペナルティー額は小さいと安易に考えがちですが、当該コンプライアンスの最大のリスクは、キャッシュアウトの肥大化です。
その理由は、「税務調査の優先リスト化」と「租税条約適用申請の拒否」の2点になります。
関連者間取引情報を開示しないという事は、益金の過少や損金の過大を疑われ、税務調査の優先リストの対象になることが想定されます。
特に、フィリピンでは税務調査の権限が、申告期限又は申告日の遅い日から3年間となっていますが、
不正が発覚又は不正が疑われる場合は、過去10年間まで遡って調査することが可能となっています。
判例では、売上の過少計上・費用の過大計上が30%以上の場合、不正とみなされることがあり、今回の未コンプライアンスはその不正扱いとされる要因になる可能性があります。
また、日本親会社などの外国法人への事業所得・配当・利子・ロイヤリティなどに対する最終源泉税の軽減税率を適用すべく日比租税条約(TTRA/CORTT)申請している企業は多いかと思います。
今後は、租税条約適用申請時に、Form1709や移転価格文書の提出を求めると同時に、軽減税率が拒否されるケースが増えてくることが考えられます。
このようにフィリピン進出日系企業は、今回のコンプライアンスを軽視せず、フィリピン移転価格税制から求められる独立企業間価格であるかという視点から検討することで、
結果として、グループ全体での業績や資金繰りへの影響やリスクを抑えることに繋がっていきます。
以下、移転価格に関する規則の概要です。
2013年の「移転価格ガイドライン」、2019年8月の「移転価格調査ガイドライン」に続き、2020年7月8日付の歳入規則(RR No. 19-2020)で、「関連当事者間の取引情報の詳細を記載する」新BIRフォーム1709の導入が発表されました。
当該規則は2020年7月25日より有効になっております。
今後は、納税者(全ての日系フィリピン子会社)は同フォームに必要情報を記載し、
移転価格文書を含む必要書類を年次法人税申告書に添付し、BIR(税務署)への提出が義務付けられます。
従来は、移転価格文書の提出は求められておらず、非常に大きなルール変更といえます。
本規則は、税務申告を実際に行った日に関わらず、 2020年3月31日決算企業から対象となります。
3月末決算企業は、BIRフォーム1709・移転価格文書その他添付書類の提出期限は、2020年9月30日です!
現時点で移転価格の対応が進んでない又は検討中の企業様は、弊社にご相談下さい。
最後に、弊社海外拠点の全ブログ掲載HPがリニューアルいたしました。
【ブログ対応国】
フィリピン インド バングラデシュ 中国 タイ ベトナム カンボジア
ミャンマー インドネシア シンガポール
マレーシア トルコ メキシコ ブラジル
今週もどうぞよろしくお願い致します。
Tokyo Consulting Firm
ASEAN Regional Manager
大橋 聖也 (Seiya Ohashi)