こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの鯖戸 梨央です。
【マタニティリーブに関する最新情報】
前回は、従業員が受け取れる出産給付金についてご紹介しました。
(1)共和国法11210号で定められた従業員が受け取れる総額
= (2)SSSが支給する額 + (3)SSSの支給する分と従業員が受け取れる分の差額
今回のトピックは、上記の(2)SSSが支給する出産給付金と
(3)SSSの支給する出産給付金と従業員に支給される出産給付金の差額についてです。
< (2) SSSが支給する出産給付金-計算例>
こちらの計算式は法律の中では詳細に発表されておらず、SSS公式ウェブサイトを参考に、社内の人事ご担当者の方に計算していただく必要がございます。基本的には以下の計算式です。
これまでの保険料の1日当たりの平均額※1 × 105日(一般の出産の場合)※2
- ※1 一日当たりの平均保険料(average daily salary credit)の計算方法が、(1)のFull payの数え方と違い若干複雑です。
- 単純に直近〇ヵ月間の平均保険料から導き出すのではありません。「出産対応期間」の前の「12か月間」の中で、最も保険料が高かった「6か月間」の平均をとります。
出産対応期間とは、1年を四半期(1~3月、4~6月、7~9月、10~12月)で分けたときに、出産する月を含む四半期と、そのひとつ前の四半期のことを言います。
例えば、出産月が2021年11月だとすれば、出産対応期間は2021年7月から2021年12月です。
出産対応期間前の12か月は2020年7月から2021年の6月ですので、この中で最も保険料が高かった6か月をピックアップし、その合計を180日で割ります。
上記の出産対応期間、および出産対応期間前の12か月を表した図が以下の表です。
2020年 | 2021年 | ||||||||||||||||
第三四半期 | 第四四半期 | 第一四半期 | 第二四半期 | 第三四半期 | 第四四半期 | ||||||||||||
7月 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
出産対応期間前の12か月間 | 出産対応期間 | ||||||||||||||||
この12か月間で保険料が最も高かった6か月をピックアップし合計を180日で割る=1日当たりの平均保険料 | =出産する月を含む四半期と、そのひとつ前の四半期 |
下記の計算例は、SSSのウェブサイトから引用しております。
【例】2020年7月から2021年6月の過去1年間で掛け金拠出の大きかった6か月の給与額が月額15,000PHPと仮定します。
6か月分の給与は15,000PHP×6か月=90,000PHPとなります。平均標準報酬日額が、90,000PHP÷180日=500PHPです。
該当する従業員の平均日給が500PHPとすると、500×105日=52,500PHP 分の手当を支給するということです。
(旧ルールでは、マタニティリーブの期間は60日間なので、SSSの負担する額は、平均標準報酬日額×60日、すなわち500PHP×60日=30,000PHP となる。)
- ※2 一日当たりの保険料を、何日間分でかけるか、というのは、以下の通りです。
・(帝王切開を含む)一般の出産の場合:×105日
・ひとり親の場合:×120日
・流産の場合:×60日
施行規則では上記のいずれかとされております。
そのため(あまりないケースではありますが)例えば実際の休暇が105日以下だった場合でも、105日分でかけて、SSSからの保険料を計算します。
また、上記にてご案内したSSSウェブサイトでは、この日数が旧法に基づく60日間または78日間とされておりますが、ここは105日間で計算していただいて問題ございません。
< (3) SSSの支給する出産給付金と従業員に支給される出産給付金との差額>
SSS(社会保険機構)による出産給付金が、従業員の平均給与(1)に満たない場合、雇用主がその差額分を負担することが新たに規定されました。
同時に、こちらは非課税扱いであることも定められております。
もしも、雇用主が差額分を従業員に支払わない場合は、共和国法第11210号に違反したことになり、
20,000PHP以上200,000PHP以下の罰金もしくは・及び6年以上12年以下の懲役刑が科されます。
従業員10人以下の小売業又はサービス業や、総資産3,000,000PHP未満の中小零細企業については免除規定がありますが、
免除規定を受けるには労働雇用省(DOLE)へ毎年、免除申請を提出する必要があります。
よって企業が従業員に支払う差額分は、個人所得税の源泉徴収対象外となりますので、ご留意ください。
以上、SSSが支給する出産給付金とSSSの支給する出産給付金と従業員に支給される出産給付金の差額についてでした。
出産給付金において、企業側がどれほど負担する必要があるのか、見直すきっかけになれば幸いです。
今週もどうぞよろしくお願い致します。
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