フィリピンにおける閉鎖手続き-Part1

法務

こんにちは、フィリピン駐在員の大橋です。

                   

今回から全4回にわたって、フィリピンにおける閉鎖手続きについてお話しします。

 

フィリピンへ進出済み又は予定の皆さんは、当然これから積極的にフィリピンビジネスを拡大する方向性で考えており、撤退し閉鎖を行う可能性まで検討している方は稀でしょう。

しかし、国に関わらず、企業にも寿命があり、海外ビジネスが順調に成功する企業ばかりではありません。

中には、日本企業の海外子会社の平均寿命も10年も満たないという説も聞きます。

海外ビジネスを任せられた駐在員の皆様も、拠点の責任者としてワーストシナリオを想定し、頭の隅に入れておいて頂きたいと思います。

 

そこで今回は、閉鎖の概要と手続きの流れをまとめていきます。

 

1.概要

近年、フィリピンへの投資活性化に伴い、日系企業のフィリピン進出案件は増えている一方で、各年の進出件数自体は2016年時点で約1,440社と留まっているのは、進出する企業もあれば、同様に撤退する企業が多いとも言えます。

 

閉鎖手続きのケースとしては、主に2通りのケースが考えられます。

1つ目は、フィリピンへの進出後、想定外に売上が伸びず、賃金上昇を含む費用増加で利益が圧迫し、構造的な赤字体質となり撤退するケースです。

 

2つ目は、近年ではフィリピンでのビジネス拡大を見込んで、市場調査や輸出製品の品質管理を目的とした駐在員事務所から、株式会社として営業活動を開始するケースです。

この場合は、駐在員事務所から現地法人への転換は出来ませんので、

駐在員事務所の閉鎖手続きをし、同時に現地法人を設立する必要があります。

なお、駐在員事務所から支店への格上げは可能です。

 

以下、参考までに外務省からの統計による進出件数の推移となります。

2012年1,214社2013年1,260社、2014年1,521社、2015年1,448社、2016年1,440社

 

2.全体のスケジュール

閉鎖のご相談に来られる多くの方が、まず驚かれるのが、閉鎖に要する期間です。

閉鎖手続きにおいては、通常2年~3年、場合によっては4・5年ほどの期間を要します。

 

その主な理由としては、閉鎖プロセスの中で、3年分の税務申告について税務調査を受けなければならず、かつ設立時に法人登記を行うSECでの清算に必要な書類「Tax Clearance」の発行が必要なのですが、この税務調査開始から完了までの待ち時間が非常に長いということが原因となっております。

 

下記が、一般的な閉鎖手続きの流れとなります。

 

従業員への解雇手続き

LGUにおける手続き

SSS等の社会保険機関への手続き

BIRにおける手続き

SECにおける手続き

 

以上、閉鎖手続きが想定されるケースと閉鎖スケジュール概要となります。

 

次回からもう少し具体的な内容へ踏み込んでいきたいと思います。

 

最後に、昨年9月より弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。

上記のようなフィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。

 

中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、

是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。

 

今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

大橋 聖也

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