こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。
フィリピンマニラは雨季も終わったようで、からっと晴れた暑い日が続いております。日本の季節が秋であることを考えると、気候の違いには本当に感ずるところがございます。
さて、今週のお話をさせて頂く前に、先週の資本金要件の補足をさせて頂きます。
先週、資本金のところで「将来において物やサービスの輸出もしくは総売上の60%以上を占める海外収益が見込める企業は輸出企業とみなされ、20万USドルの最低払込資本金の要件は適応されない。この海外収益が見込める企業とは、輸出型企業として、売上の60%以上を外国に輸出する製造業者……」と述べましたが、実務上はフィリピンで製造したシステム等を日本を含めた海外に輸出するIT企業様もこの輸出企業に含まれています。
ですので、フィリピン国外への輸出が60%以上の企業様は最低資本金が20万USドルではなくフィリピン会社法の最低資本金である5,000ペソ(約1万円)になります。この資本金要件のギャップには驚きます。ただ、実務上は資本金5,000ペソでは少なすぎるので、PEZA登録やBOI登録を考えている企業様であれば100万ペソ(約200万円)、PEZAやBOIへの登録を考えていない企業様であれば20万ペソ(約40万円)くらいからが実務上の最低資本金になるようです。
それでは先週の続きで、今週は現地法人の役員と定款についてお話させて頂きます。
[現地法人の役員]
会社役員の決定は通常会社法の規定に基づき決定しますが、フィリピンでは、規制業種(ネガティブリスト)に該当する場合に、アンチダミー法が追加で適用されるため規制内容が複雑になります。
●取締役(最低5名)
取締役は最低一株以上の株式の引受が必要となります。最低人数は5名以上必要であり、かつフィリピンの居住者が過半数を占めていなければなりません。さらに、ネガティブリストに規定される規制業種に該当する場合には、アンチダミー法が追加で適用されます。この場合は、外国人の取締役の構成比率に占める割合は、ネガティブリストの上限出資比率を上回ることはできません。
(例)広告業(ネガティブリストによる外資出資比率上限 30%)
取締役5名の場合
○ 外国人 1名、フィリピン人 4名
× 外国人 2名、フィリピン人 3名
●代表取締役(社長)
代表取締役は、会社の代表権を有する者をいい、フィリピンでは社長と言うのが通常です。取締役の中から選任されますが、代表取締役は、フィリピンの居住者でなければなりません。
●財務役
財務役とは、会社の会計責任者をいい、1名以上の設置が義務付けられます。取締役との兼任が認められていることから(代表取締役との兼任は不可)、簡素な設計を行うためには、取締役と兼任をさせます。フィリピンに居住していることが要件となります。
●秘書役
秘書役は、フィリピン居住のフィリピン人を選任しなければなりません。会社設立よりも先にフィリピン人の秘書役を見つけることは困難な場合があるため、実務上は、コンサルティング会社に名義を借りるといった方法があります。しかし、実質的に会社と関係のない他者の名義を借りることになるため、自社で人材を探すほうが将来のリスクを減らすことができます。
【役員に関する規定】
(原則)
アンチダミー法(Anti-dummy law)とは
役員の構成に大きな影響を与えるアンチダミー法ですが、この法律の趣旨としては、外国企業に対する出資規制を名義貸し等によって免れることを規制するものとなります。 具体的には、外国企業の出資が制限されている業種に出資する場合、ネガティブリストに基づきフィリピン企業と外国企業との出資割合が定められていますが、フィリピン企業が出資するとみせかけ、実質は、外国企業が負担する場合などです。 しかし、出資者がフィリピン人の個人出資とするのか、又はフィリピンの内国企業なのかによっても事情は変わってきます。例えば、出資者が個人の場合において、外国企業がこの個人に貸付を行い、その資金でもって出資を行う場合には、取締の対象となる可能性が高くなります。しかし、出資がフィリピンの内国企業の場合は、取締の対象とならない可能性があります。 また、設立された会社の実質的な支配を行っているのは誰かということもポイントとなります。例えば、外国規制がある業種にフィリピン人出資者過半数の出資により設立したにも関わらず、実際の支配、運営は外国企業によって行っているといった場合にもアンチダミー法の規制対象となるリスクがあります。 基本的な考え方としては、出資者は実質資金を提供しなければならず、規制業種においては、出資及び役員がフィリピン人の過半数になります。よって、実質的にもフィリピン人の主導により、会社を運営しなければならないということになります。 |
[定款]
定款には、以下の内容を記載する必要があります。記載内容には、法定されているものが多く含まれるため、弁護士や会計事務所の有するフォーマットをベースに作成します。
・事業目的(事業内容となるもの)
・主たる所在地(登記場所となる)
・存続期間(50年以下で設定する)
・発起人
・取締役
・授権資本金額
・払込資本金額
・財務役の任命
[付属定款]
付属定款には、以下のような取締役会の招集方法など会社の様々な規定を盛り込むことができます。後にトラブルにならないように詳細な規定を最初に作っておくことが大切となります。
・取締役会
・会社役員
・会計年度(暦年が一般的)
[定款へ記載する事業目的]
フィリピンにおいては外資規制があり、日本の企業が参入できない業種もあるため、事前に現地の弁護士事務所及びコンサルティング会社に相談することをお勧めします。
ネガティブリストに該当する場合には、外国企業の出資規制があります。設立の際には、フィリピン人の一定割合の出資が必要となり、役員のフィリピン人と外国人の比率をこの出資割合に合わせなければなりません。
定款へ記載する事業目的の設定は、投資の形態、会社の機関設計に大きな影響を与えるため、綿密な調査と慎重な判断が必要になるでしょう。
②必要書類の準備
通常は、弁護士事務所及びコンサルティング会社に設立手続を委託するケースがほとんどであり、この場合には、日本の親会社は以下の書類を用意する必要があります。
【登記登録及び営業許可取得の必要書類】
書類 | 備考 |
賃貸契約書 | 現地登記住所のオフィスの賃貸契約書 |
【銀行口座開設の必要書類】
書類 | 備考 |
取締役決議書 | 公証の必要 |
委任状 | 開設を弁護士事務所等に依頼する場合必要、要公証 |
※銀行によって必要な書類は変わります。
③書類の認証
日本側で必要な書類一式を準備し、英語翻訳をした上で、日本の公証役場で認証を受けます。その後、外務省で公認確認を行った上で、フィリピン大使館で認証を受けるというのが日本側で行う一般的な手続になります。
来週はこの続きで、フィリピン現地側の手続きについてお話させて頂きます。
今週もどうぞ宜しくお願い致します。
以上