IT企業様のフィリピン進出について②

法務

こんにちは、フィリピン駐在員の田辺です。

今週と来週はIT企業様のフィリピン進出・現地法人設立に関し、日本側手続きについてお話させて頂きます。前提として、フィリピン進出に際して優遇税制を受ける場合、支店という進出形態では優遇税制を受けられず、現地法人を設立する必要があります。

■日本側手続
現地法人を設立することを決定した場合、設立の準備に入ります。まずやることは、会社名や株主構成、資本金、会社役員など、現地法人情報を決定することです。

【日本側手続】

①現地法人情報の決定
[フィリピン現地法人の会社名]
既にSECに登録されている社名または類似の社名は使用することができないため、候補の社名を三つ用意します。事前にSECに商号の予約を行いますが、この商号の予約の有効期限は30日間となっているため、有効期限が切れる前にSECに登記登録を行う必要があります。

[フィリピン現地法人の登記住所]
SECに登記登録を行う際に、登記住所を確定させておく必要があります。オフィス等を探すことよりも会社の設立を優先させる場合は、弁護士事務所やコンサルティング会社に登記住所の名義を借りて、設立の手続を進めることができます。また、事業許可証(Mayor’s permit)申請の際に賃貸契約書が必要となります。

[株主及び発起人]
フィリピン会社法23条により、発起人(及び取締役)が最低1株以上引受けなければなりません。なお、会社の設立プロセス及び機関設計は、シンプルにするために、実務上は、発起人、取締役、株主が兼ねるケースがほとんどです。
発起人とは、会社の登記手続を遂行し、会社定款に署名をする者をいいますが、人数や居住性ついて細かく規定されており、以下の要件を満たさなければなりません。

【発起人】

会社設立後の取締役についても発起人と同様に規制されており、最低一株以上保有しなければなりません。そのため、実務上においては発起人がそのまま取締役となるケースが一般的です。外資規制がある業種に進出する場合にフィリピン企業との合弁会社を設立する場合は特段問題ありませんが、独資で会社設立する場合にはどうやって集めれば良いでしょうか。
実務上、人材の採用、会計事務所等の名義貸しサービスの利用などが考えられます。
現状として、フィリピン居住者であるかどうかは登記申請時にそれほど厳格なチェックは行われていません。外国人の場合にはパスポート番号、居住者の場合は税務コードを必要書類に記載するのみとなっています。どのタイミングで居住者である必要があるか(設立申請時点で居住者でなければならないか等)についての明文規定も存在していませんが、将来的に取締まりが強化されるリスクに備えて、当然遵守していく必要があるでしょう。

[資本金]
資本金には、授権資本金、引受資本及び払込資本の3つの種類があります。授権資本金は、取締役会の権限で新株を発行することができる限度額をいい、引受資本は、実際に株式の引受契約が締結された資本の金額であり、授権資本金額の25%となります。また、払込資本は、引受契約のうち実際に払込(現物出資等を含む)がなされた金額をいいます。財務諸表上の資本金の額はこの払込資本の金額であり、引受資本金の25%となります。

資本金額の決定に際しては、将来的にどのくらいの増資が必要になるかを考慮する必要があります。授権資本金の額までは、取締役会の決議のみで増資が可能となりますが、授権資本金を大きくすると払込資本金の額も大きくなるため、バランスを考慮しなければなりません。

外資100%企業の場合の株主、資本金の設定例(払込資本金200,000ドル 1株額面1ドル)

外資の出資比率を40%超に設定するためには、最低払込資本金が20万USドル(約1,600万円)必要になります。先端技術を有するか、または直接50名以上を雇用する場合はこれが10万USドル(約800万円)へ軽減されます。
将来において物やサービスの輸出もしくは総売上の60%以上を占める海外収益が見込める企業は、1991年外国投資法に基づき、輸出企業(Export enterprises)とみなされ、20万USドルの最低払込資本金の要件は適応されません。この海外収益が見込める企業とは、輸出型企業として、売上の60%以上を外国に輸出する製造業者、加工業者、サービス業者(観光業を含む)、またはフィリピン国内で製品を購入し、その60%以上を輸出する会社を指します。

来週はこの続きで現地法人の役員、定款についてお話させて頂きます。
今週もどうぞ宜しくお願い致します。

以上

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