非公開株式会社の基礎要件から登記手続きまで

税務

いつもお世話になっております。

東京コンサルティングファーム ミャンマー拠点の西野由花です。

 

ミャンマーに進出を検討される際には、ミャンマー会社法に基づき「非公開株式会社(現地法人)」、もしくは「海外法人(支店)」として登記することとなります。

今回はそのうち非公開株式会社の基礎要件と登記手続きについてご紹介いたします。

 

外資企業の現地法人、地場企業、合弁会社などは、そのほとんどが非公開株式会社の形態を採用しています。ただし、証券取引所などに上場する場合には、公開株式会社(Public Company Limited by Shares)であることが求められるため、上場を目指す会社や株主が50名を超える会社などは、公開株式会社の形態をとることになります。

以下において、条項などは会社法の物を記載しております。

 

目次

【基礎要件】

 

会社登記を行うにあたり、会社法より基礎要件として以下の事項が求められます(4条a)。

  • 商号を有すること(i)
  • 定款を有すること(ii)
  • 1株以上の株式が発行されていること(iii)
  • 1名以上の株主がいること(iv)
  • 1名以上の居住者である取締役(v) (※1)
  • 公開会社の場合、3名以上の取締役、かつ、1名以上のミャンマー人で居住者である取締役(vi)
  • 登記住所をミャンマー国内に有すること

(※1)居住者(ordinarily resident)の要件は、「ミャンマー法規に基づく永住者」、もしくは「各12カ月において183日以上ミャンマー国内に滞在する者」と定義されております(1条(c)(xix))。

 

【会社登記手続の方法】

 

新会社法となりこれまで求められていた営業許可制度が廃止され、政府への登録のみが必要となりました。
優遇措置を利用しない会社の場合は、この手続からスタートすることになります。

法人登記証明(Certificate of Incorporation)は、投資企業管理局(DICA)によって認可・発行されます。
会社登記手続は、企業登記管理局(Directorate of Investment and Company Administration)の管理するオンライン登記システム(MyCO)を通じて申請や登記料の支払いを行います。

この手続は、現地法人だけでなく支店や駐在員事務所であっても行う必要があります。

 

法人登記申請に必要な書類は、それぞれ以下の通りです。現地法人と支店・駐在員事務所とで必要な書類が異なります。

現地法人の場合には、以下の書類を用意する必要があります。

  • FormA(申請フォーム)…事業形態によって異なります。また、申請の際にフォームに応じて150,000~2,500,000チャットの手数料が発生します。
  • 取締役就任予定者のパスポートコピー(外国籍の場合)またはN.R.Cのコピー(ミャンマー国籍の場合)
  • (独自の定款を利用する場合)定款…ミャンマー語および英語での作成が必要です
  • 設立時取締役および設立時秘書役の任命に関する承諾書…申請には使用しませんが保管義務があります
  • 既存会社からの推薦状…既存会社と類似する会社名を使用する場合

※定款について:現在、DICAでは会社定款のサンプルを公表しており、モデル定款としてこの定款を登記時の企業定款として登録することが可能です。

 

この定款には事業内容の記載などもなく、応用が利く内容となっているため、特別に定款に記載したい内容がない場合、こちらの定款を使用し登記する企業も多くあります。なお、モデル定款を多少なりとも修正した場合は、独自定款として扱われます。

なお、非公開株式会社の会社登記は、MyCO上の申請フォームであるForm A-1 (Application for incorporation as a private company limited by shares)を用いて申請を行うことになります。

申請フォーム上、必要となる情報及び資料は、以下の通りです。

 

①商号

会社名は、「英語表記のみ」もしくは「英語表記およびミャンマー語表記」のどちらかとなります。また、会社名の末尾に有限責任という意味を表する「Limited」もしくは「Ltd.」を付す必要があります(13条(a))。なお、「National Government」、「State」、「Central Bank」、「Union Government」、「President」、「Ministry」、「Municipal」などの政府系機関であることを示唆するような名称は、大臣による書面での事前同意が無い限り商号に含めることはできません。また、「Municipal」などの地方政府との関係を示唆するような名称も、大臣による書面での事前同意が無い限り商号に含めることはできません(25条(c))。

また、既存の登記された会社と同一の名称、または混乱や誤解を招く恐れのある類似する名称は、使用してはならないとされています。

 

②外資企業の該当の有無

登記を行う会社が外資企業(foreign company)に該当するかどうかも申請に含める必要があります。こちらの判断は、外資企業の定義である持分比率の35%超を直接的または間接的に海外法人か外国人が保有するかどうかで判断することになります(1条(c)(xiv))。

 

③申請者情報

会社登記の申請手続きを行う者の氏名、国籍、パスポートもしくはN.R.C(National Registration Card)の番号、住所、emailアドレスが必要となります。こちらの申請手続きは登記される会社の取締役や株主である必要はないため、手続代行を行うエージェントなどでも問題ありません。

 

④取締役情報

登記される会社の設立時取締役について、氏名、国籍、ID番号(ミャンマー人の場合NRC番号、外国人の場合パスポート番号)、職業、性別、生年月日、居住住所、電話番号が必要となります。上記情報の入力の他に、NRCコピーまたはパスポートコピーをオンライン上にアップロードする必要があります。

 

尚、取締役の資格要件として、

  • (定款により一定の株式を保有すること求められている場合)保有していない取締役は選任後2ヶ月以内もしくは定款に記載された期間以内での株式の保有
  • 18 歳以上の自然人であること
  • 健全な精神状態であること
  • 会社法やその他の法律によって取締役として不適格であるとされている者ではないこと
  • 復権していない破産者ではないこと

などが会社法により規定されています。(会社法175条)

 

⑤秘書役情報

秘書がいる場合には秘書役の氏名、国籍、ID番号(ミャンマー人の場合NRC番号、外国人の場合パスポート番号)、性別、生年月日、居住住所が必要となります。

秘書役の設置は任意となっています。尚、秘書役の資格要件は会社法第179条に規定されています。

 

⑥登記住所

 

⑦事業活動の拠点

登記住所は必須となり、登記住所の他に事業活動の拠点となる住所があれば、任意で別途登録することが可能となっています。

 

⑧資本金情報

総株式数、資本金の通貨(MMKもしくはUSD)、最終持株会社の情報(※)の他、株主の登記番号や設立国(個人の場合はパスポート番号や生年月日など)、保有株式数、払い込み金額などの記載が必要です。

※最終持株会社とは、他の会社の子会社でない持株会社と定義されています。

 

登記申請を行うことによって、MyCO上でステータスがRegisteredとなれば登記は完了です。

 

いかがでしょうか。

弊社では設立前の市場調査や事業計画策定から設立、設立後の会計税務への対応の他にも、

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Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

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