ミャンマーにおける設立の基本形態とその違い

税務

いつもお世話になっております。
東京コンサルティングファーム ミャンマー拠点の西野由花です。

 

ミャンマーに事業拠点を設立する場合には、ミャンマー会社法に基づき、申請手続を行う必要があります。

今回は2018年8月1日に施行された会社法(The Myanmar Companies Law, 2017)に基づいて、ミャンマーでどのような設立形態があるのか、そしてその違いについてお話ししたいと思います。

 

ミャンマーでは、1988年に市場経済化を導入して以降、民間企業の設立が認められるようになりました。ミャンマー会社法における株式会社(Limited Company)は、すべての株主(社員)が間接有限責任を負う形態で責任範囲は株式の引受価額に限定され、非公開会社と公開会社に分けられます。

公開会社は株式上場を前提にした株式会社で、株式の募集は証券取引所を通じて行い、資本調達は公衆から株主を募る必要があります。ミャンマーの会社法上、会社の必須条件として最低1名の株主が必要であると規定されています。

これに対して非公開会社は、株式譲渡制限があり、公募による資金調達が禁止される会社形態を指します。非公開会社も、公開会社と同様に最低1名の株主が必要であると規定されています。(4条)

 

目次

■ 会社登記の形態

会社法上、以下の種類の会社形態の登記が規定されております。

会社形態 会社法

条文番号

特徴
非公開株式会社 2(a)(i) 株主は有限責任(株主は50名以下)。

現地法人の場合に、一般的に用いられる形態。

公開株式会社 2(a)(ii) 株主は、有限責任(株主数は制限なし)。
有限責任保証会社 2(b) 社員数は任意で、株式資本を有する必要がなし。社員の責任は保証金の限度で限定されている。
無限責任会社 2(c) 株主数の制限なし。

株主の責任は制限されていない。

事業団体 3(a) 非営利目的の事業に限る。

事業から発生する全ての責任に対して、個人責任を負う。

海外法人

(Overseas Corporation)

3(b) 海外支店、駐在員事務所の場合に用いられる形態。
会社法もしくはその他の法により会社として登記をする権利を持つ法人 3(c) 特記事項なし
連邦大臣が随時定める団体 3(d) 特記事項なし

 

上記の通り、各種会社登記形態が規定されておりますが、一般的に用いられるものは非公開株式会社(Company Limited by Shares)か海外企業(Overseas Corporation)となります。

 

 

【非公開会社と公開会社比較】

  非公開会社 公開会社
発起人人数

発起人の最低持株数

記載なし 記載なし
株主数 最低1名 最低1名
取締役 1名以上

(ミャンマー国内に通常居住)

3名以上

(うち1名はミャンマー国内に通常居住するミャンマー国民であること)

会計監査人 年次総会において

次期年次総会までを任期とする監査人を選任する必要がある

株主名簿の作成 必要

 

■その他の進出形態

100%外国資本で現地法人を設立する他、合弁会社やパートナーシップを結んだ上で設立を行う場合など、海外で設立する際によく検討される形態については以下の通りとなっています。

 

[合弁会社]

合弁会社は外国企業とミャンマー民間企業及びミャンマー国営企業が出資者になり新会社を設立する会社形態です。会社法上、外国企業が直接又は間接的に35%以上の株を保有する場合は外国会社として規定されます。(1条)一方でミャンマー企業と外国企業の出資に関する上限制約については明文規定がないため、両者間で合意があれば外国企業が100%近くまで保有することが可能です。

合弁会社は新たな法人格を獲得して、外資比率が35%以上の場合は居住外国法人として区分されます。なお、合弁に当たって相手企業が民間企業の場合は、ミャンマー会社法に基づき、国営企業の場合は特別会社法に基づいて設立されることになります。

 

[駐在員事務所]

駐在員事務所は、主として情報収集等の限られた「非営業活動」を行うことを目的として登記される事務所ですが、ミャンマーでは、会社法上駐在員事務所という区分が存在しない為、実態は駐在員事務所(Liaison Office)であっても登記上は支店として区分されます。

実際には日系企業の進出形態として駐在員事務所が多く設立されており、昨今ではヤンゴンだけでなく、首都ネピドーに駐在員事務所を開設するケースが増えています。これは、政府機関がネピドーに集結しているためであり、刻一刻と変わる政府情報を早期に入手し、他社に先駆けた事業運営を行うことを目的とする企業の狙いがあります。

 

[パートナーシップ]

パートナーシップ(Partnership)は、2~20名までの無限責任社員で構成される企業形態です。無限責任社員は、共同して全債務の返済義務を負うことになります。パートナーシップが組成される事例としては、天然ガス・石油・鉱物資源の開発をミャンマー国営企業と行う場合が一般的です。

しかし、現在パートナーシップ法は存在していますが、内資企業・外資企業を問わずDICA(Directorate of Investment and Company Administration:投資企業管理局)によるパートナーシップの登録が行われておらず、また投資法の投資許可もなされない模様です。

 

[ローカル企業との提携]

提携とは、ローカル企業とのプロジェクト活動を行うため契約によって成立する形態です。

法人を新たに設立せずに、現地企業との間で委託加工契約(CMP)を締結する方法や、自ら工場を設立して、その新設された法人との間でCMPを締結する方法も利用されています。CMPはミャンマーの代表的産業である靴製造や縫製の分野で多く利用されています。外国企業がミャンマーで土地を所有することはできないため、ミャンマー企業が土地や工場等を出資し、外国企業は原材料や消耗品の他、製造設備、機械等をリースや販売形式で出資する形態です。外国企業との委託契約によって製品を製造し、すべての完成品を輸出します。

メリットとしては、原材料の輸入免税を受けることができることが挙げられます。また、以前は委託加工賃に対して10%の所得税が課税されていましたが、2012年4月以降0%に変更され、その代わりに通常の法人所得税が課されることになりました。

 

【設立形態まとめ】

設立形態 特長
100%外国資本における企業 ①  会社法に基づく設立に加えて投資法に基づくMICの許可又は是認を取得する方法

②  経済特区法に基づき設立する方法

③  会社法に基づき設立する方法 がある。

経済特区法に基づき設立する場合は法律に基づき指定された経済特区内に法人を設立する必要がある。投資分野や投資金額によっては①に基づき設立しなければならない。

合弁企業 ・外国人または外国企業とミャンマー国民または企業(民間若しくは国営)との合弁。

・出資比率は当事者の合意に基づき自由に定めることができる。

(ただし投資法によりミャンマー会社との合弁が必須の業種において原則外国資本の出資比率上限は80%。)

・合弁相手が民間企業の場合は会社法、合弁相手が国営企業の場合は特別会社法に基づき設立される。

・外国側の出資比率が35%以内であれば外国人が株主に含まれていてもミャンマー会社として取り扱われる。

パートナーシップによる事業 ・外国企業がパートナーシップ法に基づきパートナーシップ契約を締結し、企業形態を取らずに行う合弁事業。

・パートナーは無限責任を負う。

・天然ガス・石油・鉱物資源の開発でミャンマー国営企業と生産分与契約を結ぶケースが代表例

海外法人(支店)・駐在員事務所 ・法人格は外国企業(親会社)

・会社法上、海外法人についての定義などが規定されているが、投資法上は明記されていない。

・海外法人、駐在員事務所を設置する場合においても、現地法人の設立と同様に会社法に基づき設立の申請手続を行う。

・本邦・親会社では駐在員事務所としての進出であっても、ミャンマー会社法上は金融機関等一部の例外を除き「海外法人」として登記されるケースが一般的。

ローカル企業との提携 委託加工貿易の形態として、ローカル企業に製造設備・機械を貸与または販売し、原料の供給や製品を輸出する形態が一般的。

 

いかがでしょうか。

弊社では設立前の市場調査や事業計画策定から設立、設立後の会計税務への対応の他にも、

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Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

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