ミャンマーにおける労働関係法~工場法~

労務

いつもお世話になっております。
東京コンサルティングファーム ミャンマー拠点の西野由花です。

今回は労働基準に関連する法に関して、ご紹介いたします。

 

ミャンマーには、日本の労働基準法のように労働基準に関して定める法律として、工場法(The Factories Act , 1951)、油田(労働、福祉)法(Oilfields (Labor and Welfare)Act , 1951)、店舗及び商業施設法(Shops and Establishments Law,2016)があります。

労働者を雇用する企業は、まずは自社がどの法律の適用となるのかを見極めた上で、これらの法律のいずれかに従って労働基準を規定しなければなりません。

 

遵守すべき法律は、業種や雇用する労働者の人数に応じて、それぞれ以下のように区分されています。

  労働者数 事業要件
工場法 ※5人以上 「工場」の定義に当てはまるもの及び、その他工場法に規定されているもの(後述)
油田法 1人以上 油田施設
店舗及び商業施設法 1人以上 店舗、商業施設又は公共娯楽施設と関連して雇用されている労働者及び産業施設

(工場法に該当しない全事業)

※動力を用いない施設の場合は、10 人以上

 

なお、油田法は油田施設において適用されますので、工場法における「工場」の定義に当てはまらないすべての企業は、例えば建設業や弊社のようなコンサルティング会社なども全て「店舗及び商業施設法」の適用となります。

 

今回は上記の「工場法」、「店舗及び商業施設法」のうち、工場法に関して解説致します。

場法は、工場で勤務する労働者の安全、保険、福祉、労働時間等について規定しています。この工場における「工場」の定義として以下の通り規定されています。(工場法2条(m))

  1. 従業員が5人以上働いていてかつ、動力を用いて稼動しているもしくは動力の一部が製造工程として稼働している又は通常稼働していた区域を含む建物
  2. 従業員が10人以上働いていてさらに動力を用いない製造工程が稼動している区域を含む建物

これらの定義に当てはまる工場と工場の労働者、さらに以下に関連する労働者においても適用の範囲内となっています。

  1. 20 人以上が働いている倉庫もしくは貯蔵所
  2. 動力が使用されている港、波止場、埠頭、もしくはそれらに関連し利用がされている倉庫
  3. 港、波止場もしくは埠頭における荷物の積み降ろしもしくは給油作業
  4. 自動車の修理もしくは塗装のための作業場、プレス工場、石油工場

 

また、「労働者」とは、賃金の有無に関係なく製造の工程に付随もしくは関連する業務や、製造に使われる機会や建物の清掃のために雇用される人を示します。

さらにそれに加え、製造工程の稼動していない場所の監督者や警備員、運転手、清掃人、料理人、郵便配達人、庭師及びその他の一般労働者も含まれます(工場法2条(l)、工場法改正法3 条(f))。

 

工場法には、労働基準の他に、該当する工場の労働者の健康、安全を確保するために、職場の清潔、照明、通気、飲料水、衛生施設、廃棄物処理、有害ダスト、臭気の除去、危険な機械設備からの防護、作業区域の明示、昇降機械に関する安全、爆発・出火の回避などの規定が盛り込まれています。

福利厚生については、労働者のための清掃、シャワー施設、食事や休憩用のスペース、育児中の女性従業員のための託児所の確保などに関する規定があり、女性や児童、若年労働者に関する保護規定も工場法に規定されています。児童、若年者の就労について、14歳未満の児童は工場での就労が禁止されている他、14歳以上16歳未満の労働者については、一定の条件下で1日4時間を上限に就労が認められています。(工場法75条、79条)

また、妊婦の女性に関しては夜間に働かせることが禁止されるほか、賃金の変更をすることなく負担の軽い仕事を与えることと工場法36条に規定されており、保育所の設置も工場法50条で定められています。

その他、会社法47条ではすべての工場は救急箱など応急処置用の備品を設置し、就業時間内にはいつでも利用可能な状態にしておくことが求められています。さらに、雇用している従業員が100名追加されるごとに数を一つ増やすことが必要です。

また、250名以上の従業員を雇用する場合は医務室(a first-aid room or dispensary)の設置が義務付けられている他、医師または看護師の監督下に置かなければならないとされています。さらに、雇用者は労働・雇用・社会保険省が認める職場の安全や健康に関する研修への参加義務もあります。(工場法改正法43条(a))

工場において18歳以上の労働者の労働時間は1週間44時間以内でなければいけません。ただし、連続操業工業など技術的な理由などで必要とされる場合は48時間まで労働することができます。(工場法59条)なお、1日の就業時間は8時間以内とされています。(工場法62条)

また、工場法63、64条により、労働者の労働時間と休憩時間の合計は10時間を超えないことと規定されているほか、休憩抜きで5時間を超えることは認められておらず、30分の休憩が必要です。残業について平日は1日3時間以内、土曜日は1日5時間以内の計20時間以内との通達が発表されています。

 

工場における休日は日曜日が法定休日と定められており、日曜日に出勤を依頼する場合は日曜日の前後3日以内に代休を付与し、労働者の同意を得たうえで当局に対して3日以内に通知をする必要があります。労働者が休日なく連続10日間以上働くことは認められていません。(工場法60条)なお、上記代休を付与しない場合、休日出勤した月、もしくは当月の翌々月までの間に代休を付与しなければなりません。(工場法61条)

 

いかがでしょうか。

 

ミャンマーでは安い人件費と豊富な労働力を求めて多くの工場や製造業が進出しています。

ミャンマーにおける労働関係の法律は「工場法」だけ見れば良い、「店舗および商業施設法」だけ見ればよい。というものではなく様々な法律を見ていく必要がありますが、基本的な業務時間や禁止されている行為に関して知るためにも、

まずは自社が工場法か店舗及び商業施設法かを判断し各種法律を見ていきましょう。

 

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Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

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