ミャンマーにおける労働関係法~店舗及び商業施設法~

労務

 

いつもお世話になっております。

東京コンサルティングファーム ミャンマー拠点の西野由花です。

 

以前お話しましたように、ミャンマーにおける労働法のうち、基本的な企業の労働時間や休憩などについて規定されている法律には前回ご紹介した「工場法」ともう一つ「店舗及び商業施設法」がございます。

 

今回はこの「店舗及び商業施設法」についてご紹介いたします。

 

店舗及び商業施設法は1951年に成立し、2016年に改訂がされました。商店、事業所で働く労働者の労働時間、休暇の適正化を目的として定められています。基本的には工場法に居て「工場」と規定される企業以外は全てこの店舗及び商業施設法が対象となりますので、建設業やIT企業であっても通常この法律が適用となります。

なお、「店舗(Shop)」とは、現金や分割払い、もしくは信用取引で商品や品物の卸売業もしくは小売業のために全体やその一部が利用されている営業所として定義されています。これらの説明には理容室、美容室などの美容系サービス、鍛冶場、テレビや携帯電話修理、書籍製本、印刷、質屋、洗濯屋、靴修理、写真屋、梱包、裁縫店や商業施設、電子機器修理も含まれています。(店舗及び商業施設法2 条(a))

但し、売買取引事業、公共娯楽施設、工場及び産業施設、手工業は除外されます。

一方、「商業施設(Commercial establishment)」とは、広告業、委託代理業、販売業の事業が営まれている施設と定義されます。これには工場もしくはそのほかの機械・技術に関する事務部門や保険会社、株式会社、民間銀行や仲買人、広告業、民間の人材紹介会社、民間の教育機関、民間の医療サービスの他、ホテル等宿泊施設、旅行代理業、通行料徴収業も含まれています。(店舗及び商業施設法2 条(b))但し、店舗及び、公共娯楽施設は除外されます。

 

それに加えて、「施設(Establishment)」の定義として、商業施設及び公共の娯楽施設に加え、労働・雇用・社会保障省が店舗及び商業施設法において「施設」として認められるという通知を出したその他施設も含まれています。

 

店舗及び商業施設法では同法の適用対象である企業の労働時間や賃金、職場での安全確保に加え健康を守る権利や児童、若年者の就労について規程がされています。

 

全ての店舗及びにおける営業時間について、店舗及び商業施設法では原則として午後11 時から午前5 時までを閉店とすることが求められています。ただし、顧客が店舗において売買をしている、もしくは店舗のサービス提供を待っている場合は30分の延長を行い、午後11時30分まで店舗を開店させることができます。(店舗及び商業施設法7 条(a))

一方、商業施設を含む施設においては映画、娯楽、無料のショーを含んだ公共娯楽施設を除き午後1時から午前5時の間まで閉店をすることが求められます。(店舗及び商業施設法8 条(a))

ただし、空港や港、高速道路やバスターミナル、ホテルなどの宿泊施設、病院や薬局などに関する医療施設、電気や水道などの公共サービスを提供している営業所に加え、大統領が通知で免除されると定めた店舗及び施設は事前に管轄機関から許可を得ることで、24 時間の営業が可能となっています。(店舗及び商業施設法9条、10条)

 

労働時間に関して、店舗及び商業施設法では、雇用者は最低1週間に1日の休日を従業員に与える義務があり、その休日において従業員の賃金から控除をしてはいけない。と規定されています。(店舗及び商業施設法15条)

1日の就業時間においては店舗及び商業施設法11条により、本人の希望なく1日8時間以上、かつ、1週間48時間以上働くことは禁止されています。(店舗及び商業施設法11条(a))

時間外労働に関しては1週間で12時間を超えてしまうことは法律で禁止されていますが、特別な事情がある場合は1週間で16時間までの時間外労働が認められています。また、上記事項に加えて、深夜12時を超える残業を課すことは禁止されています。(店舗及び商業施設法11条)

店舗及び商業施設法における休憩時間は、労働者が1日に4時間以上働く場合には、最低30 分以上の休憩時間を設けることと規定しています。(店舗及び商業施設法12条(a))

例外として、管理人や警備員として雇用した労働者に関しては、休憩時間を設ける必要はないとされています。

さらに、店舗及び施設で働く従業員の時間外労働を含む就業時間と休憩時間の合計は1日11時間以内と規定されています。(店舗及び商業施設法12条)

また、14歳未満の児童は工場法と同様に店舗、施設での就労が禁止されている他、14歳以上16歳未満の労働者についても、医師の推薦状を得た上で、一定の条件の下1日4時間、休憩を含めて5時間を上限に就労が認められています。(店舗及び商業施設法13条、14条)

一定の条件下とは、店舗及び商業施設法14条によれば残業を行わせないこと、午後6時~午前6時の間には就労させないこと、すでにどこかの店舗及び商業施設で働いている場合は同時に他の店舗や商業施設での労働は認められないこと。などがあります。

また、同法14条では18歳に達した人は指定された危険な仕事または危険な職場で働くことを要求または許可されないこと。16歳以上18歳未満で関連する職業訓練を完了しかつ職業上の安全と健康に関する指示を知り、順守している労働者は、登録された医療従事者によって認定された場合、安全かつ当人の成長と意欲に影響を与えない事業において働くことを許可されることがあると規定されています。

 

賃金の支払いについては店舗及び商業施設法16 条より店舗及び各施設は翌月の7 日までに賃金を支払うことと規定されています。

 

 

[工場法・店舗及び商業施設法の比較]

 

工場法、店舗及び商業施設法で規定されている主な労働基準は以下の通りです。

いかがでしょうか。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

 

Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員

西野由花(Nishino Yuka)


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西野由花(Nishino Yuka)

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