皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループ、ミャンマー拠点の近藤貴政です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「ミャンマー人を日本に送る選択肢」についてお伝えします。
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目次
ミャンマー人を日本に送る選択肢
2024年2月の徴兵法Conscription Lawによる徴兵がいよいよ4月の連休明けに迫り、ミャンマー人の従業員の多くが国外出国を希望して退職するような動きが加速しています。
一方、日本も慢性的な労働力不足が継続しており、外国人をはたらかせる方向で国の制度も整備されてきています。
今回は、日本企業として従業員を日本に送るとした場合にどのような選択肢があるか、簡単にまとめてお伝えします。
就労資格種類 | 目的 | 要件 | 変更の制限 | 滞在期間 | COE申請期間 |
技能実習 | 技能習得の援助 | $2,800 | 転職不可 | 一般に3年 | 3か月程度 |
特定技能 | 技能保有者確保 | $1,500、試験合格 | 要試験合格 | 5年まで | 6か月程度 |
就労ビザ | 技能保持者就労 | 企業による雇用 | 制限なし | 制限なし | 2か月程度 |
留学ビザ | 余暇アルバイト | 資格外活動許可 | 週28時間まで | 留学期間中 | 2か月程度 |
1.就労資格
日本でミャンマー人が就労する方法は、留学生の場合を含め、以下の4つに区分できます:
・技能実習生ビザ(Technical Intern Training Visa)での実習
・特定技能外国人(Specified Skilled Worker: SSW)での就労
・就労ビザ(Working Viza)での一般雇用
・留学ビザ(Student Visa)でのアルバイト
うち、いわゆる「送り出し機関」と言われる海外雇用斡旋業者Overseas Employment Agencyによる手続きが必要となるのが、技能実習生および特定技能外国人としての就労です。特に技能実習生については、送り出し機関の手数料がUSD2,800までと比較的高額で、受入国の日本側でも監理団体の監督下に置かれる必要があるとされています。
2.条件
それぞれの就労に関する条件は以下のようにまとめられます:
・技能実習生の場合:存在している技能実習の範囲でのみ活動が可能。送り出し機関を通じて手続きする。日本語などの要件は軽微で、在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility: COE)の取得は比較的容易。1年を超えない期間で定められた技能実習を受ける必要があり、原則として途中で変更することはできない。
・特定技能外国人の場合:12種類の業務区分の中でのみに活動範囲が限定される。送り出し機関を通じて手続きする。「相当程度の知識または経験」を有していることを示すため、試験を受け合格する必要がある。日本語の水準はN3レベル程度必要。最長5年まで延長可能。同一の業務区分でのみ転職が可能だが、別途試験を受ければ他の業務区分への転向も可能。
・就労ビザ:一般に秀でた技能や知識を有すると認められる場合のみ認められる。大学卒業以上の学歴が必要。納税額が確保されていれば家族の帯同も可能。ビザの延長の制限などによる期間制限はなし。
親会社・子会社間や本店・支店間で、勤続1年以上であることを条件に従業員を異動させる「企業内転勤」のスキームであれば、技能・知識面での要件は大幅に低減される。
・留学ビザ:日本語学校、専門学校、大学等への入学資格を得て学生として渡航したうえで、資格外活動許可を取得してアルバイトとして就労する場合。
週に28時間までの就労が可能(夏休みなど長期休暇期間中は一日8時間まで可能)。
3.手続き、時間と費用
技能や日本語の習得にかかる時間を度外視して、単純に日本への渡航・就労までに必要となる手続きの期間と費用を考えると、以下のようにまとめられます:
・技能実習生の場合:送り出し機関を通じて手続きし、一定の研修を受けたうえでCOE申請に入る。期間は3か月ほどで、費用はUSD2,800まで。
・特定技能外国人の場合:送り出し機関を通じて手続きし、一定の訓練コースと試験合格を条件にCOE申請に入る。期間は6か月ほどで、費用はUSD1,500まで。
・就労ビザ:会社を見つけて就職を決める必要があり、そこまでの期間は未知数となる。すでに内定を得た場合、または企業内転勤の場合で、COE申請は2か月ほど。
・留学ビザ:日本語学校への留学などに関しては学費が別途かかるが、送り出し機関を通じて手続きする場合は2か月ほどでCOEが取れる。ただし機関内の研修や授業は別途期間を要する場合が多い。COEの申請自体は3か月ほどで、費用はUSD500 ~ USD2,000と様々。
4.日本滞在可能期間と将来
ミャンマー人の多くが自国に帰らず国外に滞在したいと考えている今、どの滞在方法を選ぶにせよ、その滞在可能期間とその後のことは考える必要があります。
・技能実習生の場合:延長等が申請されれば長くて3年の滞在が許可される。期間中、他の仕事に転職することはできず、また期間満了後は帰国する必要がある。
・特定技能外国人の場合:延長等行えば長くて5年の滞在が許可される。期間中は原則他の仕事はできないが、同じ技能範疇の中での転職は可能とされる。さらに、他の特定技能の試験を受け、転向するのであればそれは可能。
大学卒業などの身分であれば、別途就職先を見つけて就労ビザに切り替えることも可能。
・就労ビザ:延長等に制限はなく、雇用が続く限り滞在も可能となる。雇用就労後は別の雇用がなければ滞在は難しくなる。
・留学ビザ:学生の身分が終了すれば資格外活動もできなくなり就労・滞在共に不可能になる。大学卒業などの身分であれば、別途就職先を見つけて就労ビザに切り替えが可能。
5.日本側の負担
直接的に給与を支払う費用だけでなく、一定の負担が日本側の受け入れ期間となる企業にも発生します。
・技能実習生の場合:送り出し機関への手数料や渡航費用、監理団体の組合費、技能実習評価試験の費用等、合計して1年目にはJPY1,000,000程、2年目以降はJPY500,000程度が費用として掛かります。
また、住宅等の生活補助も、一般的には負担が必要です。
・特定技能外国人の場合:送り出し機関への手数料や渡航費用、義務的支援委託費用、在留資格関連費用等で、合計して1年目にはJPY1,000,000程度、2年目以降はJPY400,000程度が費用として掛かります。
住居等の生活補助も、一般的には負担が必要です。
・就労ビザ:個人との取り決めで各費用の負担は変わりますが、渡航や手続きに関して、特段の負担はありません。
・留学ビザ:アルバイトとしての採用に関して、手続きの特段の負担はありません。
なお、人材紹介の枠組みで雇用を開始するケースでは、上記に加えて別途人材紹介手数料が発生します。
6.ミャンマー人の特殊事情
上記条件のほか、ミャンマーでは直近の外貨不足に伴い、海外で働くミャンマー国民に個人所得税を課すというルールができています(2023年10月~)。
これにより、日本では月額JPY2,000(月収JPY200,000以下の場合はJPY1,000)を、四半期ごとまたは半年に一度、ミャンマー大使館で納税する必要があります。
こちらは日本での所得税納税とは別途かかるもので、ミャンマー人の反発は強いですが、納税しなければパスポートの更新が難しくなるなど制限がかけられるため、原則必要と考えた方がいいでしょう。
また、直近2024年2月からの徴兵法(Conscription Law)の適用が、国外で働くミャンマー人にも行われるというニュースが出ていますが、こちらがどの程度強制されるかは不明です。
企業としては、できる限りの保護を与えたい部分がありますが、両国の規則のため一定の制限がかけられてしまうことが否めません。
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近藤 貴政
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