東京コンサルティングファーム
メキシコダイレクター
片瀬 陽平
今回はこれからの時代の管理部門について執筆しようと思います。
管理部門(ここでは主に経理について話します。)も時代と共に変わってきています。30年前は各種帳票を手作業で分類・管理し、売上帳、仕入帳、現金出納帳などの帳簿についても手作業で、それぞれ作成していました。
この時代の経理の目的は、手作業での集計のために正確な数字を作ることをその主目的としていました。
経理部門において、月次での正確な数字を作ることが求められ、決算で税理士にそれらの数字を提出し、税理士はそれらの数字を組み上げて決算書と申告書を作成する。優秀な税理士は有利規定を利用し、節税を達成し、もてはやされた時代が確かに30年前には存在しました。
あれから30年が経過し、経理部門においてもその目的が大きく変わりました。巷には会計ソフト、申告ソフトが溢れ、誰が作っても同じ規定が適用され(申告ソフトが自動で有利規定を選択適用するため)、同じ数字が出来上がる。高いお金を払って税理士が作らなくても、企業の経理部門だけで申告書まで余裕で作れてしまう。そんな時代がやってきています。
話は少しそれますが、節税についても現在の節税は30年前とは少し考え方が違います。
【計算式】
税金=課税標準×税率
税金計算はこの式で計算するために、節税を達成するためには、課税標準額を少なくするか、税率を下げるかしかその目的を達成することはできません。
30年前には税理士が有利規定を利用し、課税標準額を可能な限り下げることにより、節税を達成していましたが、現在は申告ソフトが勝手に有利規定を利用して課税標準額を計算するために、課税標準を少なくする節税はできなくなってしまったのです。
それではどの様に節税を行うのかと言うと、税率をいじって海外を含めたグループ全体の税金を最も少なくする様に調整するのです。(移転価格税制やタックスヘイブン税制はこれを制御する税制)。税率の安い国に管理部門を切り離してくっつけて、管理部門の外注という形を作って、業務委託Feeを支払い、利益を軽税率国へ移転するのです。この様な節税も経理部門の業務の一つになってきています。
正確な数字を作る事は当たり前であり、それ以外のものが今の経理部に求められるようになってきています。
それでは30年前ではなく、今の経理部門に求められる機能とは一体何でしょうか?
それは、「過去を基に未来を作り上げる事」です。
上記の通り会計ソフト等が発達した現在では、正確な数字を作ることは当たり前です、言い換えれば過去を正確に認識することは当たり前ということです。
そして、過去を正確に認識するためには、下記の3つのポイントがあります。
【過去を認識するための3つのポイント】
①詳細に
②体系的に
③即時に
①の詳細にとは、部門別、地域別、商品別、顧客別、営業マン別というようにセグメント別の利益を把握することを指します。
②の体系的にとは、個別決算、連結決算、本支店決算により、全てのグループの利益を取りこみグループ全体の成績を把握することを指します。
③即時にとは、決算の早期化を達成し、即時に正確な数字を把握することを指します。
ただし、これは現在の“経理の目的”ではなくあくまでも目的を達成する手段であるので、これらの業務は経理部門の付加価値にはなりません。経営の判断に資する情報ではなく、これは実際に発生した事実をきちんと整理整頓したに過ぎないのです。
そして、これらを基に未来を作り上げて行くことが今の経理部門に求められていることとなります(目的)。
未来を作り上げていくのは財務部門と思われるかもしれませんが、その部分を財務部門に取られると経理部門は付加価値業務を行うことはできなくなりますので、私は経理部門の範疇にしたいと考えています。
ただ、経理とは一般的に数字を処理することを指しますので、経理と言う言葉の中に付加価値を含ませることは、なんとも難しいのかもしれませんが。
これと比較し、財務とはキャッシュの最大化をその意義とします。
経営事象の中でキャッシュに貢献するものは以下の4つの事象です。
【キャッシュにインパクトを与える事象】
①利益
②資金繰り
③投資
④税金
この中で一番大切な利益の部分を更に落とし込んでみてみましょう。
【利益の計算式】
利益=収益-費用
つまり将来の利益を最大化するためには、収益の最大化及び費用の最小化を達成する以外に道はないのです。上記の節税と同様にこう考えると利益の最大化も、税金の最小化も考え方はいたってシンプルであると分かってもらえると思います。
ポイントはたった3点、「収益の最大化」、「費用の最小化」、そして「組織力の強化」です。これを常に頭に入れることが必要です。
【収益の最大化について】
収益の最大化は、すなわち顧客の視点、売上の増加につながることに落とし込んで考えなければなりません。
具体例)
・顧客ニーズの最適化
・新規企画
・クレーム率の低減
・顧客満足度調査
・海外市場調査
・紹介営業導入
これらをいかに達成していくかを考えることが収益の最大化には必要です。
【費用の最小化について】
次に費用の最小化は、すなわちプロセスの視点、費用の削減につながることに落とし込んで考えなければなりません。
具体例)
・システムの導入(ERP,SFA)
・品質の向上
・新技術、新製品の開発
・リードタイムの短縮
・5Sの励行
これらをいかに達成して行くかを考えることが費用の最小化には必要です。
【組織力の強化】
そしてこれらを達成するために必要なことが、組織・人の視点、つまり組織力の強化が必要になるのです。
具体例)
・意識改革
・人材確保
・リーダーシップ研修
・ナレッジマネジメント
・グローバル人事評価
・モチベーション指導
※これらの考え方はバランスト・スコアカードの応用ですので、興味があればバランスト・スコアカードを調べてみてください。より深く理解ができるものと思います。
これらの顧客、プロセス、組織・人の視点を総合的に勘案して、現在当社に足りていなもの(改善しなければいけないもの)がどこにあるのかを考えなければなりません。ボトルネックとなっている項目をしっかりと改善してあげることによって、最終的な目的である利益の最大化、キャッシュの最大化につながるのです。
そして、利益の最大化、キャッシュの最大化につなげる具体的なツールが中期事業計画となります。上記のボトルネックを改善し、正常な経営活動の中での中期事業計画を作成します。一般的なCFOは中期事業計画の数値の達成に注力し、CEOが中期事業計画の作成に注力しますが、CFOの本来の業務は、私は未来を作って行くことにあると思っています。
CEOは、営業、見積り、注文、契約、製造、納品、請求、回収、投資、採用、改善、育成、削減、その他もろもろ、⇒また営業に戻る。
という経営活動の全てを担っています。CFOが上記の方法により中期事業計画を作成すれば、それはこのCEOの行う経営活動を数値化したものと同義であり、それをCEOと共に達成して行くことが、CFOの本来の業務であると私は考えています。
そしてこの経営活動を数値化した中期事業計画を単年度に落としこんだものが単年度の予算となるのです。このように予算を作成する方式を「ローリング方式」といいます。ローリング方式により予算を作成し、その通りに経営活動を行っていくことがCFOに求められているのです。
そしてこれからの会計事務所には、このCFO業務をしっかりと達成することができることが求められます。
みなさんのお使いになっている会計事務所は、数字の報告だけではありませんか?
本来の会計事務所が行わなければならないことは、数字の利用です。我々は数字を利用して未来を作らなければなりません。
また、定量的な計画だけでは、従業員が何のために働いているかの意義が持てなくなるために、定性的な目標も取り入れた中期事業計画を作成して、従業員に働く意義を与えてあげることも重要になります。優秀な人材ほど、自身が働く意義を大切にしますので。
特にメキシコでは、その活動内容がブラックボックス化し、内情がみえづらいことも多々あります。上記の予算作りから会計事務所に携わらせれば、予算達成の報告についても会計事務所の業務の範疇になりますので、ブラックボックス化することが無くなります。
現状の会計事務所の中には、上記考え方による中期事業計画の作成及びそれに伴う予算の達成コンサルを行っているところも少しありますが、その全てがこの業務をプラスアルファのコンサルとして行っています。
私の考えは違います。今後これらの業務はプラスアルファではなく、スタンダードの会計事務所のサービスになります。私はこの事業計画の作成を含む会計税務サービスをスタンダードのサービスとして提供していこうと思っています。
興味がある方は作成した戦略書を基にお話をさせていただくことも可能でございますので、是非お気軽に下記フォームより、お問い合わせください。
※メキシコのご質問等でも結構ですので、どしどしお寄せ下さい。
【弊社お問い合わせフォーム】
【お知らせ】
私、片瀬がセミナー講師を務めさせていただきますので、是非、足を運んで頂ければと思います。
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時間:18:30~21:00 開場 18:30
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費用:2,000円
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「メキシコ進出セミナー」(東京、8/11)
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