【ニュースレター】大改正!雇用関連7法と就業規則

 

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
東京コンサルティングファームの佐々木で御座います。
本日は改正が検討されているマレーシアの1955年雇用法についてご紹介します。

 

2019年4月24日、マレーシアの人的資源省が労働関係の7法を改正・強化する方向で検討しているとのニュースが飛び込んできました。今回改正が検討されているのは1955年制定の「雇用法」、同1959年の「労働組合法」になります。しかし具体的な改正内容につきましては、明らかになるまでにまだ時間がかかりそうです。

 

その中、M. クラセガラン人的資源相は2019年7月22日、「1955年雇用法」改正案を10月の国会に提出すると発表し、労働時間短縮など労働条件改善に向けた7項目が盛り込まれる見通しだと明らかにしました。こちらもまだ具体的な改正内容については明らかになっておりませんが、大まかに以下の内容が検討されております。

 

【改正内容・検討事項】
①労働時間短縮
②福利厚生の保障
③強制労働問題の解決
④国際労働基準の遵守

この中で、より明確になっているのは「労働時間の短縮」になります。現在、週48時間になっている労働時間でありますが、今回の審議で週48時間より短縮される可能性が高く、10月にはその結論が出るということで注目したいところです。

 

このように労働時間以外にも検討事項が多くあり、現在と比べ、内容が大きく変わることが予想されます。従いまして、今回は「1955年雇用法」はどういう法律なのかを改めてご紹介させて頂ければと存じます。

 

「1955年雇用法」は日本の労働基準法に類似しています。労働基準法は会社が労働環境等について従業員に対して補償すべき最低基準を規定するものです。例えば、労働時間や有給休暇などの規定について、それ以上の基準を下回るルールを作ってはならず、違反した場合には罰則が与えられるものとなり、マレーシアの「1955年雇用法」も制定した目的は日本と同様であります。

 

日本の労働基準法とマレーシアの「1955年雇用法」の違いは法律の「適用範囲」にあります。以下、その差異についてまとめたいと思います。

・日本の労働基準法の適用範囲
原則:従業員を1名以上使用している事業所
例外:同居の親族のみ使用する事業所

家事使用人
国家公務員・地方公務員

 

・マレーシアの「1955年雇用法」の適用範囲
原則は以下の場合に適用されます。
①賃金が一定額以下の労働者(月額RM2,000以下の労働者)
②肉体労働者

 

例外として、東マレーシアでは雇用法に代わり、以下の法規範が適用されます。
①サバ州労働条例(Sabah Labour Ordinance 1950)
②サラワク州労働条例(Sarawak Labour Ordinance 1952)

 

従いまして、上記に該当しない労働者は労働条件を規定する雇用法が適用されないこととなります。しかし、会社側が好き勝手に労働条件を決定できるわけではありません。上記に該当しない労働者の場合の労働条件は、雇用契約によって定めることになります。つまり、日本のような最低の労働基準を国が定めるのではなく、労働者と使用者の合意に委ねられている現状にあります。

 

また、上記に該当する労働者はいわゆるブルーワーカーと呼ばれる労働者で低賃金の肉体労働者が主となります。このようにマレーシアの「1955年雇用法」は賃金の低い労働者を保護するための法律だと考えられ、もし、会社側が本法に違反するような賃金で雇用しようしても、労働者側が合意をすることはなく、実質的に本法の基準は全労働者に対して、本法の効果があると言えるでしょう。

 

最後になりますが、「1955年雇用法」を主としてその他雇用に関連する法律の改正が検討されているため、会社側も雇用契約書や就業規則の見直しを検討しなければならない状況を迎える可能性があります。

 

そのため、末筆になりますが、弊社でも就業規則のレビューをサポートさせて頂いておりますので、ぜひお問い合わせ頂ければと存じます。
最後までご覧いただきまして誠にありがとうございます。

 

 

東京コンサルティングファーム
佐々木 海翔

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