試用期間中の解雇に関する判例2

労務

 

<概要>

N氏は、A社に2013年8月に入社をし、試用期間の3ヶ月間を経て、正社員雇用される予定であったが、会社側から、職務を遂行するレベルの知識、能力がないことを理由に、試用期間中に解雇通知を受け取り、解雇された。これに不服を感じ、N氏は、労働裁判所に、訴えを起こし、不当な解雇であるという主張を行い、裁判で戦うこととなった。ちなみに、N氏が採用されるポジションは、エンジニア部門のマネージャーであり、給与は12,000RM/月であった。

 

<従業員側の主張>
この解雇に対して、会社側は、私自身の能力が足りないということが大きな理由であるが、それに対して、会社側からの改善の機会が与えられていないことは、会社側が義務を怠ったと言える。その機会が与えられたのであれば、私がしっかりと職務を遂行できたかがはっきりとわかるはずである。よって、今回の解雇は不当解雇であり、会社側に補償を要求する。

 

<会社側の主張>
N氏が職務を遂行する能力がないと判断したのは、下記の点を踏まえてのものである。

就業規則に、試用期間後、勤務内容をレビューした上で、会社側は、正規社員での採用を行うのかどうかの判断を下す権利を有するという文言が入っている。
上司及び部門長双方による評価面談を行い、より客観性をもたせた評価をしている。
評価面談の中で、知識、職務内容の理解、スキルについて評価が1点(最高5点)であり、その他の項目も含め、総合で28点(満点65点)しか取れていないことは十分に職務を遂行する能力がないという証明となる。

 

評価結果に対する、N氏からの反論は受けておらず、会社側はそれによって、N氏がその評価結果に納得したと判断した。
また、会社側は就業規則に定められている通り、解雇の1ヶ月前には解雇通知を出し、解雇した月の給与及びその1ヶ月先の給与を支払うという就業規則に基づき、支払いを行なっている。

これらの証拠から、会社側はN氏を不当に解雇したつもりはない。

 

<判決>
裁判所は、会社が提示した証拠や意見に基づき、N氏が不当に解雇されたという証拠もないため、N氏の訴えを棄却し、会社側の意見を尊重した。

 

<裁判所の見解>

彼女のいう通り、彼女の働きに不満があるのであれば、何らかの改善の機会等を会社側は提供しなければならない。ただし、N氏のような上級役職での採用となった場合、これらのことは容易に認識できるはずである。また、会社が主張している評価面談については、もし不服であれば、N氏はその不服を会社側に伝えることもできる役職にあったと考えられる。それをしなかったということは、N氏がその評価を受け入れたとみなすことができ、会社側の言っている主張は正しいと考える。

 

<ポイント>
正当な理由がなければ、たとえ試用期間中であっても解雇することはできません。正当な理由とは、やはり。「警告書を発行し、改善が見られない場合、解雇に踏み切る」と言った流れが一般的であると思います。今回の判例は、上級役職に向けてのものでありましたが、労働裁判所も上の役職になればなるほど、比較的企業側の立場で物事見てくれます。こんな木のポイントは、会社がしっかりと就業規則で書かれていることを守り、評価面談も一人だけではなく、もう一人入れることにより、より透明性のある評価を下したということであると思います。ただ、下級役職になればなるほど、不当解雇は、裁判所も労働者側に立って、進めようとする傾向が強いですので、より慎重な対応が求められます。

 

 

東京コンサルティングファーム
谷口 翔悟

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