こんにちは。カンボジア駐在員の澤柳です。本日はカンボジア投資における壁についてお話したいと思います。
カンボジアへの投資を決める企業の多くは、安価な労働力やカンボジア人の国民性に魅力を感じています。カンボジア経済に対しても楽観的な見方が多いでしょう。
米国商工会議所とシンガポールの米国商工会議所が共同で行った調査報告によると、ASEANに拠点を持つアメリカ企業の代表取締役のうち、約75%がカンボジアでの事業利益は2013年に上昇すると回答しています。また、カンボジアに居住性を持つアメリカ人の生活に対する満足度は、ASEAN地域の中で最も高い数字を出しているようです。
しかし、上記調査の注目すべき結果は、別のところにあります。カンボジアに拠点がない企業に対して、カンボジアに拠点を置きたいと思うか、という質問に、非常に多くの企業が「No」という回答をしているのです。その理由の81%は、汚職です。
Transparency International(T.I.)の代表Preap Kol 氏は、8月22日のカンボジアデイリーという現地新聞にて、以下のように語っています。
「カンボジアによって投資を中止した企業は、2つのグループに分けることができる。1つは賄賂を全く払わない企業、もう1つは賄賂がある環境でどのようにすればよいかわからない企業である。」
また、T.I.のBribe Payer Index によると、中国企業が他のどの国よりもカンボジアに対して賄賂を払っているという調査報告も出ています。
1998年から2011年までのカンボジアに対する各国の直接投資累計金額を見ると、圧倒的な金額差でNo.1は中国であり、次いで韓国となっています。プノンペンの街中を歩いてみると、至る所で中国語、韓国語の文字を目にするでしょう。カンボジアでは、このように中国、そして韓国の投資家たちの力が強いのです。
この国の経済成長は急務の課題であり、外資を誘致したいという気持ちが政府の中で大きいのは事実ではありますが、一方では、汚職が外資誘致の壁となり、実際に投資家の多様性が失われてしまっています。しかし、カンボジアにとって重要なのは、投資家の多様性、そして良質な競争による経済成長だと私は考えます。
日本やアメリカの企業のような、社会的責任と法令遵守を徹底する企業がカンボジアに入ってくることで、カンボジアの汚職は必ず淘汰されていくでしょう。それは他国の事例を見ても明らかです。しかし、完全に汚職がゼロになるまでには時間がかかります。その間に、我々日系企業側がとるべき行動は、単なる利益追求にフォーカスした投資ではないはずです。