皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム カンボジア拠点の霜田 晋です。

カンボジアといえば「人件費の安さ」。実際、2027年の縫製・履物業の最低賃金は現行210ドルから212ドル、上げ幅はわずか0.95%とする報道があります。ところがコスト表の別の行を見ると、動きの大きい項目があります。燃料です。

数字で見る燃料コスト

  • 小売価格(2026年10月6日時点):ガソリン1リットル5,150リエル(約1.27ドル)で中東紛争前より33.7%高、軽油は5,650リエル(約1.39ドル)で46.7%高(商業省データ、Xinhua、2026年10月10日)。
  • 10月11日からの適用価格ではガソリン5,350リエルと続伸、軽油は5,550リエルへ小幅低下(商業省、2026年10月11日)。
  • 1〜9月の燃料(軽油・ガソリン・燃焼ガス)輸入額は28.2億ドルで前年同期比53.8%増。内訳は軽油14.7億ドル(48%増)、ガソリン10.4億ドル(76%増)(商業省、Xinhua、2026年10月10日)。
  • 世界銀行は2026年の成長率見通しを3.5%(2025年は5.3%)に引き下げ。2027年4%、2028年5%への回復を見込む(2026年10月6日)。

人件費の陰に隠れやすいコスト

最低賃金は発表された瞬間に数字が出るため、予算に織り込みやすい項目です。一方、燃料は物流費、通勤手当、自家発電、原材料の運賃などに分散して現れるため、気づいたときには利益率を削っている、という形になりがちです。輸入額の増加には価格だけでなく、生産・物流・電力需要の拡大も寄与しているとの専門家の指摘があり、数量ではなく金額ベースの統計である点には注意が要ります。なお、政府は燃料・電力向けに約5億ドルの補助を投入したと報じられており、これが縮小した場合の影響は、現時点の情報では見通しにくいところです。

明るい材料もあります。縫製・繊維・履物・旅行用品の輸出は1〜8月に7.2%増の117.6億ドルと堅調です。ただし世銀は、エネルギー価格の安定と観光の回復が2027年の持ち直しの前提だとしており、楽観一色で計画を組むのは避けたほうがよさそうです。

想定されるFAQ

Q1.カンボジアの人件費は、まだ安いと考えてよいですか?

最低賃金の上げ幅は小さい見通しですが、総コストで見ると状況は変わりつつあります。人件費だけでなく、燃料・電力・物流を含めた総額で比較する視点が必要と見られます。

Q2.燃料高を理由に、進出を見送るべきでしょうか?

一概には言えません。物流比率の高い業種ほど影響を受けやすい一方、人件費比率の高い業種では相対的に軽微な場合もあります。燃料価格を複数パターンで置いた感度分析をしたうえでの判断が現実的です。

Q3.燃料価格は今後どうなりますか?

中東情勢次第で、予測は困難です。これは仮説ですが、価格が高止まりする前提と、補助が縮小する前提の両方を試算しておくと、計画の安全度が上がります。

まとめ

「人件費が安い国」という看板だけでコストを見積もると、実態とずれる可能性があります。明日から、事業計画のコスト表に「燃料・電力・物流」の行を独立させ、価格が1割動いたら利益率がどう変わるかを一度試算してみてください。人件費の数字より先に、こちらが効いてくる局面もありそうです。

出典

  • The Star(Bernama)「World Bank cuts Cambodia's 2026 growth forecast to 3.5% amid tourism slump, high fuel costs」(2026年10月7日、世界銀行発表は10月6日)
  • Cambodianess/Xinhua「Cambodia's Oil, Gas import Costs Jump Nearly 54 pct in First Nine Months」(商業省データ、2026年10月10日)
  • The Star(Bernama/Xinhua)「Petrol prices continue to climb in Cambodia as diesel pressures ease slightly」(商業省、2026年10月11日)
  • Le Petit Journal Cambodge「La Banque mondiale prévoit un ralentissement de la croissance économique du Cambodge pour 2026」(2026年10月9日)
  • The Star「Cambodia raises monthly minimum wage for garment workers to US$212 for 2027」(2026年9月30日)

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