皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム カンボジア拠点の霜田 晋です。
2026年9月30日、フン・マネット首相がSNSで2027年の縫製・履物業の最低賃金を公表しました。毎年大きく上がるという印象を持たれがちなカンボジアの最低賃金ですが、今回の上げ幅は限定的でした。本記事では、決定内容と背景、実務上の留意点を整理します。
2027年最低賃金の現状と背景
2027年の縫製・履物業の最低賃金は月額212ドルです。現行の210ドルから2ドル、率にして約0.95%の引き上げで、2027年1月1日から適用されます。
- 発表日:2026年9月30日(フン・マネット首相がSNSで公表)
- 対象:縫製・繊維・履物・旅行用品の分野で働く約110万人、1,800超の工場・支店
- 実質的な支給水準:各種手当等を含めた目安は月231.5〜242.5ドル
交渉の過程では、労働組合側が当初250.66ドルを求め、のちに225ドルへ歩み寄りました。一方、使用者側は210ドルの据え置きを主張しており、最終的な212ドルは使用者側の主張に近い水準での決着と言えます。
小幅にとどまった背景
2026年に続く2年連続の小幅改定となった背景には、景気の逆風があります。世界銀行は2026年のカンボジアの経済成長率見通しを3.5%へ引き下げました。主力の縫製・履物産業は輸出環境の不透明感や受注の変動にさらされており、大幅な賃上げに慎重な空気が強まっていたと考えられます。
過去には高い伸び率の年が続いたため、「カンボジアの人件費は毎年大きく上がる」というイメージが定着しています。しかし、直近の動きはそのイメージとはやや異なるものです。
留意したいリスク
実質購買力の低下リスク
ASEAN+3マクロ経済調査事務局(AMRO)は、2026年のカンボジアのインフレ率を5.1%と予測しています。名目の最低賃金が0.95%しか上がらない場合、物価上昇率を下回り、労働者の実質的な購買力が低下するおそれがあります。
労務面での波及
賃金水準への不満が高まれば、労使交渉の緊張や離職率の上昇、ストライキなどにつながる可能性も否定できません。人件費の上昇が小幅だからといって、労務リスクが低下するとは限らない点に注意が必要です。
想定されるFAQ
Q1.縫製・履物業以外にもこの最低賃金は適用されますか?
今回の最低賃金は、縫製・繊維・履物・旅行用品の分野が対象です。その他の業種については一律には適用されないため、個別に確認が必要です。
Q2.来年以降も小幅な改定が続きますか?
断定はできません。景気動向や物価、労使交渉の状況によって変わるため、毎年の発表内容を確認しながら見通しを更新することをおすすめします。
Q3.人件費の見積もりはどのように行えばよいですか?
最低賃金そのものではなく、各種手当等を含めた総額(目安として月231.5〜242.5ドル)で試算することを推奨します。
まとめ
2027年の最低賃金は212ドルと、上げ幅は約0.95%にとどまりました。ただし、インフレ率が高水準で推移すれば労働者の実質購買力は低下し、労務リスクが残ります。人件費は手当を含めた総額で捉え、毎年の動向を継続的に確認することが重要です。
出典
- The Star「Cambodia raises monthly minimum wage for garment workers to US$212 for 2027」(2026年9月30日)
- Fibre2Fashion「Cambodia's $212 wage: Who wins, who loses and fight behind the figure」(2026年10月6日)
- Xinhua「World Bank cuts Cambodia's 2026 growth forecast to 3.5 pct」(2026年10月6日)
- Xinhua/AMRO報道(2026年7月27日)
- ASEAN Briefing「Cambodia's 2026 Minimum Wage Increase」(2025年10月13日)
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