皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム カンボジア拠点の霜田 晋です。

カンボジアは米ドルが広く流通する「ドルの国」として知られてきました。しかし近年は、中央銀行が主導する決済システム「バコン(Bakong)」の普及により、決済の姿が大きく変わりつつあります。本記事では、その実像と進出企業への影響を整理します。

バコン(Bakong)とは

バコンは、カンボジア国立銀行(NBC)が2020年10月に導入した決済システムです。日本のブロックチェーン企業ソラミツの協力を得て開発されました。2022年には統一QRコード「KHQR」が導入され、銀行や決済事業者の垣根を越えて、1つのQRコードで支払いができるようになりました。

数字で見るバコンの普及

  • 2024年の取引額はGDPの約3倍
  • リエル建て決済が全体の約半分を占める

米ドル中心だった決済のなかで、自国通貨リエルの利用が広がっている点は注目に値します。現金の授受を前提としない日常の支払い習慣が、着実に根付き始めています。

越境決済への広がり

バコンの広がりは国内にとどまりません。2026年6月2日には、インドのUPIとKHQRの連携が始まりました。これにより、インドからの旅行者や送金需要を取り込む基盤が整い、越境決済の利便性が高まっています。

カンボジア進出企業への影響

toC事業の参入障壁の低下

QRコード決済が普及することで、店舗側は高額な決済端末を用意せずにキャッシュレス対応が可能になります。小売・飲食・サービスなど、toC事業の参入障壁は下がっていると言えます。

会計・税務の透明性向上

取引が電子的に記録されることで、売上の把握が容易になり、会計・税務面の透明性が高まります。その一方で、記録が残るからこそ、帳簿との整合性など適正な処理がこれまで以上に求められます。

金融包摂の課題

JICAの2026年2月の報告書によると、カンボジアの銀行口座保有率は周辺国より低い水準です。アプリ決済が広がる一方で、口座を持たない層への金融包摂はなお課題として残っています。

まとめ

「ドルの国」という従来のイメージだけでは、今のカンボジアの決済事情は捉えきれません。バコンの普及はtoC事業の機会を広げる一方、会計・税務の透明性という側面でも企業に影響を与えます。進出を検討する際は、決済環境の変化も踏まえた事業計画づくりが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1.カンボジアではもう米ドルは使われないのですか?

いいえ。米ドルは引き続き広く流通していますが、バコンではリエル建て決済が全体の約半分を占めるなど、自国通貨の存在感が高まっています。

Q2.日本企業が店舗でバコン決済を導入するには?

KHQRに対応した銀行や決済事業者を通じて導入するのが一般的です。具体的な手続きや条件は事業者ごとに異なるため、事前に確認が必要です。

Q3.キャッシュレス化は税務に影響しますか?

取引の電子記録が増えるため、売上計上の透明性が高まります。帳簿や申告内容との整合性を保つ体制を整えておくことが大切です。

出典

  • 日本経済新聞「デジタル通貨でドルから自立、国の若さ強みに カンボジア中銀のチア・セレイ総裁」(2025年9月26日)
  • JICA「カンボジア国 金融政策のための経済分析・調査・運営能力強化プロジェクト 事業完了報告書」(2026年2月)
  • Business Standard「UPI expands international presence to Cambodia through KHQR linkage」(2026年6月2日)
  • OpenGov Asia「India and Cambodia Launch UPI–KHQR Cross-Border QR Payment Link」(2026年6月4日)

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霜田 晋