皆さん、こんにちは!東京コンサルティングファーム カンボジア拠点の霜田 晋です。
カンボジアの2026年の最低賃金がようやく確定しました。月額210ドル。前年の208ドルからわずか2ドルの引き上げです。
「人件費の安さ」を理由にカンボジアを検討していた方からすると、正直物足りない数字かもしれません。ですが同じタイミングで公表されたジェトロの調査を見ると、少し違う景色が見えてきます。
数字で見る、いまのカンボジア
2024年の実質GDP成長率は6.0%。前年の5.0%から加速し、主力の縫製品を中心に輸出は15.7%増加しました。
外国人観光客数は670万人(前年比22.9%増)と、コロナ前の最多記録だった2019年を上回っています。
2025年以降の見通しは機関によって幅があります。世界銀行は5%台後半の堅調な成長を見込む一方、米国の追加関税の影響を踏まえ、4%台まで減速するとみる民間シンクタンクの分析もあります。
投資元国としては中国の存在感が引き続き大きく、2025年はむしろ投資が加速したとジェトロが報告しています。
| 指標 | 数値 |
| 最低賃金(2026年) | 月額210ドル(前年208ドル) |
| 実質GDP成長率(2024年) | 6.0%(前年5.0%) |
| 輸出(2024年) | 15.7%増(縫製品が中心) |
| 外国人観光客数(2024年) | 670万人(前年比22.9%増) |
| 不良債権比率(2024年末) | 銀行7.9%/マイクロファイナンス9.0% |
「拡大意欲」の中身を見ると、意外な強みが見えてくる
ジェトロが2025年8〜9月に実施した「海外進出日系企業実態調査」(アジア・オセアニア編)に、面白いデータがあります。
今後1〜2年の事業展開について「拡大」と答えた企業の割合は、全体としては非製造業のほうが製造業より高い傾向にあります。ところがカンボジアでは、この関係が逆転しており、製造業の拡大意欲が非製造業を上回っています。同じ傾向が見られたのは、インドや台湾、中国などごく一部の国・地域だけです。
実際、自動車部品の分野ではデンソーがタイからカンボジアへ主力製品の生産移管を進め、マレーシアやインド向けの輸出拠点として活用する動きが出ています。
理由として挙げられているのは、人件費の安さだけでなく、次のような点です。
- タイのサプライチェーンを活用しやすい地理的な位置
- チームワークを重視し、細かな作業に粘り強く向き合うカンボジア人労働者の特性
「人件費が唯一の魅力」という段階から、次のフェーズに移りつつあるように見えます。
楽観だけでは語れない部分も
一方で気になる数字もあります。2024年末時点の不良債権比率は、銀行で7.9%、マイクロファイナンスで9.0%と、いずれも過去最高水準です。建設・不動産セクターの低迷が長引いており、金融面のリスクとして頭に入れておく必要があります。
またタイとの国境問題を背景に、120万人を超える出稼ぎ労働者が帰国を求められており、今後の労働市場の需給にも変化が出てくる可能性があります。
まとめ
「人件費が安いからカンボジア」という単純な理由だけで進出を判断できる時代は、終わりつつあります。
一方で、サプライチェーン上の立地や労働者の資質、政府の投資誘致姿勢など、数字だけでは見えにくい強みが評価され始めているのも事実です。進出を検討される際は、最新の一次データにあたりながら、業種ごとの実態を見極めることが欠かせません。
出典
- ジェトロ「カンボジアの2026年最低賃金、月額210ドルに決定」(2025年10月)
- ジェトロ「カンボジアの貿易投資年報」
- ジェトロ「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(2025年11月)
- ジェトロ「カンボジア進出日系企業、自動車部品製造や社会課題解決型ビジネスに可能性」(2025年6月)
- ジェトロ「カンボジア、2025年は中国からの投資が加速」(2026年3月)
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霜田 晋