こんにちは。東京コンサルティングファーム ブラジル駐在員の金内です。
今週はブラジル税務について記載いたします。
サッカーワールドカップ、リオ・オリンピックも終わり、世界規模な明るい話題に乏しい最近のブラジルですが、少しずつブラジルへの投資が戻ってきているような感覚があります。現地法人を開設する直接投資とまではいかずも、既存取引の拡大や新規取引の開始など、徐々にといったところでしょうか。ブラジルのマーケットに進出する方法としては、ゼロから法人を開設する方法もありますが、M&Aによって進出するという方法も引き続き魅力的です。企業買収によって取得するシェア率や顧客リストも、非常に重要な企業の価値です。M&Aを行う場合にも、税務上のリスクは伴います。買収取引以前の買収対象企業の活動に対して、税務当局が科した罰金及び処罰についても買収側が責任を負うことになるなど、特段の注意が必要となる項目も多くあります。例えば、納税義務を怠っていた場合やコンプライアンス違反をしていたことが買収後に発覚した場合、買収側が税金及び罰金を負担することになります。そのため、ブラジル企業の株式取得の場合には、主要な税務上の偶発債務をよく見極めて評価分析を行い、買収側の全体的投資判断においてそれらの債務のコストを考慮するなどの対応が必要となります。
税務論点の1つに、繰越欠損金の継続があります。ブラジルでは、繰越欠損金は繰越期限の制限がないため、各年度の課税対象所得の30%を限度として利用することができます。しかし、M&A が実施された場合には被買収企業の所有権が移転することになり、繰越欠損金が継続して繰越せるかが問題となります。ブラジル税法では、「所有者の変更」と「企業活動の変更」の2つの事由がともに発生した場合、被買収企業の税務上の損失を繰越して、将来の課税所得との相殺に利用する対応は認められていません。所有者の変更については発生致しますが、「企業活動の変更」を買収直後に行う企業は殆どないと思われます。しかし、マーケットの変化などから、変更を余儀なくされることもあるかもしれません。どの程度の変更が当該「企業活動の変更」に適用されるかという点も含め、ブラジル企業を対象としたM&Aを行う際は、留意が必要です。
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